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大会帰りのカードゲーマー異世界に行く  作者: 白馬 鏡
ターン1 敗北とはじめまして
31/32

Phase.30 勝ったところで意味は無い

 四散した光が舞うその中で立つ俺にヤツは目を見開く。その理由は俺に装いが先までと一変して姿が変わっているからだ。

 向こうからずっと着ていた洋服では無い。ティラノサウルスの顔の兜として頭に被り、パキケファロサウルスの頑丈な頭部をグローブに、そして全身を守るように機械仕掛けの鎧を纏っている。

 マジックカード【機械鎧】

 機兵モンスターを複数体選択し、それをプレイヤー自身に重ねることができ重ねた分を攻撃値とする。

 ゲームにおいては自身をモンスター扱いとするため破壊されればそのまま負けが確定する奥の手。

 この姿でヤツとどれくらい戦えるかは分からないけどアルマの為にもゼッテー勝つ!


「これはビックリ!姿が変わった。君、ただの召喚士じゃないみたいだね」


「そうかい。生憎とこっちの世界に来たばかりなんで他の召喚士がどんなのか知らなんでね」


「いや嬉しいよ。他の召喚士は接近戦だとあっという間だったから。だからさ……」


 ヤツが再び戦闘態勢に入る


「ちょっとは楽しませてよね」


 直後、ヤツは一瞬にして距離を詰めてくる。即座に放ってきたストレートを俺は素早くガードする。そしてすかさずヤツに拳を打ち放し返す。

 俺が放った拳はヤツの顔面に思いっきりヒットした。よろけ後ろに後退りするヤツにすかさず拳のラッシュを叩き込む。

 運動音痴のせいか。歪であるもののそのラッシュがヤツを襲う。


「はあああああぁぁぁぁぁ!」


 ラッシュのトドメに放ったアッパーカットがヤツを上空へと吹っ飛ばす。

 よし、いける!

 拳から感じる手応えにこの姿ならヤツに勝てることを認識する。けどその認識が油断を生む。

 空中に吹っ飛ばされたヤツはくるりと一回転し、自らが持つを羽を羽ばたかせ速度の乗った蹴りをかましてきた。

 ヤツの蹴りを上手くガード出来なかった俺は重たい衝撃とあとに続く痛みを感じながら後方へとぶっ飛ぶ。

 庭の草原を転がりうつ伏せに倒れる。


 しまった……。油断した……


 痛みで呼吸が荒くなるけど立たなくちゃいけない。俺は全身に力を入れゆっくりと立ち上がる。

 視界にヤツを映すとヤツは上空でその虫の羽を動かしていた。

 俺が立ち上がったのを確認するとヤツは飛来し、再び蹴りによる攻撃を繰り返してきた。

 空を飛ぶことのできない俺はただなすすべなくその攻撃を防ぐしか無かった。

 防御に徹するまま俺は残り二枚の手札を確かめる。


 ……ダメだ。この手札じゃ空中戦はできない。そもそもプテランを向こうでドローした時点でそれは確定している。だけどこのカードなら……


 上空を行き交いながら攻撃を仕掛けてくるヤツを目で追いタイミングを見定める。攻撃をし再び上空に上がるヤツそしてまたこちらへ突っ込んできた。


 …… …… …… 今だ!


 蹴りをかましてくるヤツに俺はカードをかざす。


「マジックカード“寿命寸前の電子音”発動!」


 発動した瞬間、俺を中心に特殊な機械音が響き渡る。中心に近かったヤツは大音量でそれを耳にし、ドサッと音立て地上に落下する。

 草原の上で耳を押さえのたうち回るヤツに俺は拳を振りかざし、


「はああああぁぁぁぁ!」


 再びラッシュを叩き込む。

 怒号を上げながら拳を叩き込み続ける。


「はああああぁぁぁぁ!」


 ダメージが大きいせいか?徐々に拳に込める力がラッシュの速度が落ちてくる。しかしこのままヤツを倒し切ると決めた俺は手札の最後の一枚のカードを発動する。


「マジックカード“孤虎烈風”!」


 最後の発動したそれは昼間戦った虎型モンスターから入手した能力上昇のカード。

 カードの効果で俺は再び全身の力が湧き上がって、叩き込むラッシュの重さと速度を上げる。


「はああああぁぁぁぁ!」


 そしてラッシュのトドメにヤツの顔面へ最大の一撃を叩き込む。

 気づけば、繰り返した攻撃の疲れで俺は肩で呼吸していた。見直せばヤツの顔はボコボコで涙で顔が濡れていた。歯は折れ、ガードに回していたであろう腕も変な方向に曲がっていたり欠けていたり、羽ももう飛ぶことさえ許さないほどにバリバリに破れていた。


「……俺の勝ちだ。おとなしくアルマにかけた呪いを解け」


 俺はそんなヤツの胸ぐらを容赦無く掴み上げ、呪いの解きかたを聞く。しかし返ってきた言葉は無責任なものだった。


「解き…かた、なんて…無い。あれ…は、あの方から……ち……から……オレを……倒しも……む……」


 呪いの解き方なんて無い。

 ヤツは途切れ途切れの声でそう言うと最後に勝ったようなニヒルな笑みを浮かべては、その体を紫色の光に溶けていった。


「…… …… ふざけんなよ」


 戦いを終え庭に残った俺は呪いに対して打つ手の無い状況に思わず吐き捨てるのだった。

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