Phase.25 隠し事しなきゃいけないのってどうにかなりませんか?
魔人のかけらに誘われるまま俺はアルマの部屋のドアノブに手を伸ばすも、触れる直前またあの言葉が脳裏を過ぎる。
アルマの部屋から離れた俺はその足で自室へと飛び込む。
「あぶね〜……」
扉を背に座り込みながら安堵の息を落とす。
あのままアルマの部屋へ入って目的の物があったとしても誰もいないあの状況じゃ俺が仕込んだ物だと広まるだけ。かと言って素直にアルマに聞いて見せてくれるのか?
いや見せないだろうな。そもそも村民に関わらず他人の俺にも打ち明けない悩みを抱えていると考えられる。
誰にもバレずかつ部屋の何処かにある見たこと無い物を探す方法は……ん、いけるか?
ふと思いついた案を頼りに俺はステータス画面を立ち上げる。
ステータス画面に表示されている現在ドロー可能枚数は三枚。
俺は先の戦闘の時からある仮説を立てていた。
俺はその仮説を信じ、ステータス画面からデッキメニューを開く。デッキのカードの一覧から俺は二枚のカードをタップする。
操作を終えると腰のデッキケースから指定した二枚のカードが手元に展開されるのと同時にドロー可能枚数が三から一に減少した。
「やっぱり……か」
手元のカードとステータス画面を交互に確認した俺は自身の仮説が正しいことを認識する。
俺が見立てた仮説は戦闘の際にドローできるカードとステータス画面に表示されている可能枚数は別ものだということだ。
基本的に戦闘でしか使用できないカードを戦闘外でも使用できるが枚数は制限される。なんか、
「前例があって修正がかかったようなシステムに見えるな〜。まぁ、いいや、召喚!潜漠機兵リモーダ。そしてリモーダに対し【インビンジブルコート】を重ねて発動!」
そんな知りもしないただの思ったことをぼやきつつ俺はそれぞれのカードを発動させる。
光り輝くカードから足元に一体の機械仕掛け蛇が現れる。機械仕掛けの蛇こと潜漠機兵リモーダは追加で発動されたオーラを纏うとその姿が薄くまるで透明なものとなる。
……本当に俺以外見えないよな〜?
元いた世界のゲームルールにおいてインビンジブルコートは相手モンスターから攻撃に選択されないようにする効果だ。
こっちの世界じゃ名前の通りモンスターは消えたように見えるけど……
一応、これしか方法ないしな
そう納得し扉の僅かな隙間からリモーダを解き放つ。
ステータス画面からリモーダの視点を確認できるが、リモーダは俺がやって欲しいことが分かっているかのように一直線にアルマの部屋向かう。
部屋の前に辿り着くとリモーダはスルスルと隙間から部屋の中へ侵入する。
アルマの部屋に特に目立った物は無かった。間取りも俺がいる客室と大差ないし、違う点があるとすれば勉強机が一台置かれていた。
魔人のかけらを持っていけないから虱潰しに探すしかないか。リモーダに通信を送り、部屋の中の物を順に物色し始める。
椅子の下、棚の中、勉強机の引き出し、ベッドの下、窓際、探させるも目的の物は見つからなかった。
やっぱり間違えてか?それとも誤作動か?頭を抱え考えていると、リモーダから通信が送られて来た。
リモーダの視点を確認するとベッドにある枕のしたに禍々しい黒石を見つけた。
……マジかー
ステータス画面に映るその石に俺は思わず叫びそうになるのをグッと堪える。
持ち出して調べたいところだけど今俺がこれ関連の物を持っていれば言い逃れができない状況にある。
どうにかしてアルマが持ち出す瞬間を捕らえられればいいんだけど……