Phase.21 相容れぬ者
「理由を聞いてもいいですか?」
アポロさんの言う信用・信頼できないという言葉に俺は理解しながらも明確な理由を伺う。
「理由ですか……。色々と思うところはありますが、一つ挙げるとすればここ数日の魔物の様子ですかね」
「魔物の様子?」
「昨日に二度、今朝に一度、ここのところの魔物の襲撃は活発になっています」
「え、!?」
「どうかされましたか?」
「いや、昨日の朝はいざ知らず。昨日の昼過ぎに朝の襲撃も知ってるんですか?」
「ええ、メイドはなんでも知っていますので」
アポロさんがこれまでの戦闘を知っていることに俺は驚きを隠せないでいた。
「誤魔化さないで下さい。メイドってだけでそこまでの情報を知れるんですか?ここにはス、……通信機器のようなもの無いみたいですし……」
「信用していない相手にお答えする義理はございません。逆に私はあなたが魔物をおびき寄せ自作自演をしているように見えます」
「どういうことですか?」
アポロさんの言葉に俺の声は思わず怒りをおびる。
「あなたは村に来たばかりで信用は薄い。しかしおびき寄せた魔物を倒すことでその信頼を得ようとしている」
「違う!俺はそんなことはしてない」
「どうでしょうか?連日発生している魔物の襲撃。さらに三日前、六日前、七日前も同様に魔物の襲撃が発生している」
「俺がこの世界に来たのは一昨日のことだ。昨日より前の襲撃を知るわけが無い」
「そうですね。ですがその言葉を誰が信じるでしょうか?」
「は、?」
「あなたはここへ来る前のことを証明できるのですか?」
「証明……?」
「出来ないでしょう。それにあなたの職業は召喚士。先に私が言った自作自演のほうが信ぴょう性はあります」
追い詰められる状況に俺は言葉を詰まらせる。
「どうして俺の職業を知ってる?」
「初めてお会いした際、少し覗かせていただきました」
「脅すつもりか?」
「生憎と告口をする口は持ち合わせておりません。ただあまりこの村に長居すれば私同様に疑問を持ち始める人も現れるでしょう」
アポロさんの言葉に終始頭を悩ませる中、書斎の扉が勢いよく開かれる。
「コータ!いる」
書斎の扉を開けたのはモク爺の畑の手伝いに出ていたはずのアルマだった。
「どうかされましたか?お嬢様」
アルマの言葉に対し、俺より先にアポロさんが反応する。
「アポロ!え〜と二人はどうして……」
「お掃除にお伺いした際、コータさんがこちらにいらしたので」
俺に向けていた淡白な顔色とは一転、アルマに対しアポロさんは優しく微笑みかける。
「そうなんだ。それよりコータ!」
「なに?」
額に汗を残すアルマのその切迫詰まった顔色に俺は一つ予感していた。
「助けて!また魔物が現れたの。それも今度はオーガよりも大きなヤツ」
予想通りのアルマのセリフに俺は一瞬視線をアポロさんへ動かす。
「私どもでは魔物には太刀打ち出来ません。コータさんどうかよろしくお願いします」
アルマの手前、優しげな表情を浮かべるアポロさん。しかしその奥はより疑いの目を強めるようなものに見える。
「分かったアルマ。行こう!」
部屋を飛び出すアルマの跡を俺は走りだす
走る中、ステータス画面を確認すると時間はまだ昼前だった。
アポロさんの言う通り魔物の襲撃頻度は日に日に増加していってる。けど俺が原因な訳無い。いや、でも、……
「何してるのコータ!早く!」
いつのまにか駆ける足が遅くなっていた俺に先行するアルマが声をあげる。
今は考えても埒が明かない。とりあえずその魔物を倒さないと
俺は頭を左右に振り一時的に迷い拭うと、村の門までの距離を一気に駆け抜けるのだった。