Phase.19 プレイヤーブチギレのクソ仕様
「ほんとに大丈夫?」
「だいじょぶ。だいじょぶ。昨日の疲れが抜け切って無いだけだから」
「そう?それじゃあたし行くね。何かあったらアポロに言ってね」
「うん。分かった」
無味の朝食を摂り終えた俺は、一緒に村に出るはずのアルマに「体の不調」を伝え部屋で休むことした。
村へ向かうをアルマを部屋の前で見送った後、机と椅子代わりに使うためにベッドの上へ座り込む。
ステータス画面を立ち上げ、先ほど目にした項目を再度確認する。
【デッキ枚数39/40】
ステータス画面に記載されているデッキ枚数は変わらずその数を表示していた。
昨日、寝る前に目にした時は確かに【40/40】だった。それが今は一枚減った39枚になっている。
原因は恐らく今朝の戦闘……。
俺は腰のデッキケースからデッキを取り出し、残っているはずの39枚のカードを一枚一枚調べていく。
左から右に順にカードを見ていく。しかし……
「え!なんだ!何が無くなったんだ?」
一通りカードを確認したが無くなったカードを判別することは出来なかった。改めて数え直すもデッキのカードは39枚。間違いなく一枚足りない。
再度何が無くなったのか確かめるために俺はデッキのカード全てをベッドの上に並べた。
モンスターカード、マジックカード、二種類に綺麗に分けられたカード列を上から順に見直す。
「ウルガノン……、アルクル・コーン……、ラディン……」
特にこの世界に来て使用したカードは重点的に確認した。
「リーパル……、プテランガーン……」
モンスターカードは問題なし。となるとマジックカードか?
この世界に来て使ったマジックカードは……
「次元燃料は……ある。あとはマルチタスク。マルチタスク……、マルチタスク……、あれ?」
指でなぞりながらカードを確かめた結果、俺は無くなった一枚が何なのかようやく見つけた。
「マルチタスクが……無い!」
無くなったカードは、【マジックカード”マルチタスク】だった。
どうして無くなった?俺はカードが無くなった原因を考え出す。
「モンスターカードは無くなっていない。恐らくそれはここまでの戦闘において誰一人として攻撃力がゼロになっていないからだ。ならマジックカードは……」
昨日の戦闘と今朝の戦闘を頑張って思い出そうとし、その時の違いを考える。
違いは敵モンスターの数と種類、そして戦闘した時間か?
数は……昨日が十で、今朝が二十二。種類は……オーガとドリルビートルの有無。あとは……時間か。って思い出してもどっちも朝だったな。違いと言えば……日の出前か後か。う〜ん……
「わっかんね〜」
考えるも何が理由で無くなったのか分からず頭を掻き出す。
「原因、原因、原因……」
その言葉を口ずさみながら後ろへ倒れ、ベッドで寝転がる。
振り返る戦闘の記憶。そんな中ふとあることに気づく。
「あれ?そう言えば俺、発動したマジックカードのカテゴリーそれぞれ違くね?」
何かが分かった俺はベッドから体を起こし、散乱するカードの中から“次元燃料”を手に取る。
次元燃料の発動条件は自分フィールドの一体のモンスターを選択し、そのモンスターに重ねること。つまりRPGで言うところの装備の類だ。反対に“マルチタスク”ただ発動することができるノーマルマジック。そのため発動すれば効果対象が存在していなくても効果が処理される。要は使い捨て魔法だ
元いた世界でもゲームルール上、ノーマルマジックは発動後即座にトラッシュへ送られる。つまりこの世界においてノーマルマジックは本当に一度限りのカードってことになる。
「はぁ〜……なんだそのクソ仕様ー!」
驚愕の事実を前に俺は再びベッドへ倒れる。
まじで!?カードが消えるってそんなことある。普通。SSRだぞ!最高レアのカードだよ!そんな仕様分かってたあのタイミングで使わないってさ〜
はぁ〜、まぁ、強力過ぎて向こうでは禁止まで秒読みって言われてたしな〜。ん〜でもな〜
しかも……
「使った後はこんな真っ白なカードになるとは……」
マルチタスクだった真っ白なカードを掲げそう呟く。
真っ白なカードはイラストも効果文も分類さえも綺麗さっぱり消えていた。
「これからはもう少しカードの切り方を考えないとな〜」
重ねて発動が可能なカードはデッキに後6枚。マジックカードの総数は使用したマルチタスクを含めて17枚。となると残りのノーマルカードは10枚
「とりあえず素材カードを一枚代わりで入れとくか」
ステータス画面にエラーを示すかのように赤く表示されている【デッキ枚数39/40】を正すために、俺は回収している素材カードの一枚を組み込んでそのエラーを正常に戻した。