Phase.18 安心するも
ゴブリンが一〇、トレントが四、あとドリルビートルが八。
オーガ並のでかぶつモンスターは居ないが、単純に数が多いな。
プテランの上から砦の前に集まるモンスターを確認しつつそれぞれの対処法を模索する。
まだ辺りが薄暗い。他のモンスターが隠れてる可能性も考えられる。それに村民たちのためにも日の出前には片付けたい。
少し様子見したが、モンスターがこちらに気づいてる素振りは無い。だったら上空からの奇襲で短期決戦と行かせてもらう。
「生憎と俺はだらだらと続く長期戦は好きじゃないんでね」
プテランとともに上空から急降下すると同時に俺は手札からさらなるモンスターを召喚する。
「こい!鎌機人リーパル」
俺の呼び声に光り輝くカードから両手に鎌を持つ人型機械が現れる。
リーパルは着地と同時に二体のゴブリンをその鎌で屠る。
「プテランお前も頼む!」
地上に降り立った後、プテランガーンも攻撃に参加するよう指示を送る。
リーパルとプテラン。二体の機人・機兵がモンスターに攻撃を仕掛けるも数の差に少し苦戦を強いられている状況だ。
俺は手札を確認し、この状況に適したカードを選択する。そして手札の中から一枚のカードを手にする。
「マジックカード“マルチタスク”を発動!」
【マルチタスク】
自軍フィールドの機械モンスターに複数回の能力使用および全ての敵モンスターへの攻撃権を与える。
発動によってカードが放たれる光の槍がリーパルとプテランガーンの体へ刺さる。
二体は刺さった光によって体全体にオーラを纏っているのが確認できた。しかし発動した俺自身がこの世界におけるこのカードの効果を理解出来ていない状況だった。
本来“マルチタスク”モンスターが持つ発動回数の限られた効果の再発動を可能にし、一ターンに一度限りの攻撃権を複数回に増やすというものだ。
この世界にターンの概念は無いように見える。そんな中でこのカードはどう働く?けれど俺が抱いていたそんな不安は一瞬にして消え去った。
数の差で倒すのに手間取っていたリーパルとプテランガーンとは異なり、現在は次々にと凄い速さで敵モンスターを処理していく。
優勢に見えるその光景を前に俺は握り拳を作りガッツポーズをしていた。
その後、数あったモンスターは屍となり増援も無く戦闘は終わった。屍の山からドロップカードを回収した俺は再びプテランの背に乗り砦を越え村内へと帰還する。
空を見ると朝が少し昇り始めており、村に光が差し込み出していた。
アルマや村民に勘づかれ無いよう俺は屋敷へ向け、プテランを急がせる。
屋敷の窓から自室へと潜り込みプテランを回収すると同時、
「コータ起きてる?朝だよ」
アルマからのノック音が部屋に響く。
俺は一呼吸置いてから「起きてるよ!」と返しつつ部屋の扉を開ける。
「おはよう!アルマ」
「お、おはよう」
「ん?どうしたの」
「いや、起きたばかりにしては汗が酷いから……。大丈夫?」
しまった!?呼吸整えることしか考えて無かった。汗?……うわぁ、酷いや。フンフン……臭いかな?
「大丈夫だよ。それとも汗臭う?」
「ううん、臭いは気にしてないよ。大丈夫なら良いんだけど。コータが気になるなら先にシャワー浴びて来なよ」
「そうだね。そうするよ」
「あたし先に食堂行ってるね」
「わかった。それじゃ後で」
アルマに促され俺は朝からシャワーを浴びに浴場へと歩き出す。
その後、浴場でシャワーを済ませた俺は脱衣所で着替えながら先の戦闘を確認するためにステータス画面を開く。
「ん?なんでだ!」
ステータス画面に記載されているある項目を目に俺はそれを疑った。
【デッキ枚数39/40】