Phase.16 楽しく辛いは短く
「クソたれがー」
勢いよく振り放った大斧がトレントの胴体を二つに切り裂く。
大きな音を立てて崩れ落ちるそれを前に俺は大斧を支えに息切れを整えようと呼吸を繰り返す。
つ、疲れた〜
デッキのカードを使うこと無く一人で二体のトレントを相手したのはさすがにキツい。
一度、安心して休むために俺はトレントの死体を直ぐにドロップカードに変換し、村へと戻る。
砦を抜け身の安全が確保できたことを確認した後、俺はステータス画面を立ち上げた。
【レベル15】【体力七〇〇/二五〇〇】
トレントとの戦闘でレベルは上がらずか……。体力も約1/4まで減った。
俺は持っている一枚のカードに視線を移す。
【ひび割れたオーガの大斧】
オーガ種が所持している大斧。植物系のモンスターに対して強い威力を発揮する。が、ひび割れの状態だとその効力は半減される。
このカードのお陰でなんとかなったけど三体ならまだもし四体もいたらカードを使う羽目になっただろう。
その後も数時間以内にモンスターが現れたら満足のいかない手札で相手する他ない。
「とりあえず明日まではもう来ないでくれ」
気づけば辺りはオレンジの光が照らしていた。
俺は砦の見張り番に一言挨拶を済ませ後、アルマと合流する約束をしてある村の広場まで歩き出す。
「あ、コータ!」
広場に着くと既にいたアルマがこちらへ向け大きく手を振っている。
夕方だっての元気いっぱいなアルマに関心しつつ俺は彼女の下まで歩き進める。
「畑の手伝いお疲れ様アルマ」
「頑張ってきたよー。コータは何してたの?」
「ん?え〜と、まぁ、散歩かな」
「散歩?」
「うん。来たばかりだからどんなものがあるのか?色々見て周りたくて」
「そっか。それじゃ帰ろう!今日の夜はなにかな〜」
広場で落ち合った俺とアルマは屋敷までの帰り道を歩き出す。帰り道を歩く中、アルマは俺に、俺はアルマに、何か面白いことはあったか?と聞き合う。
楽しい時間はあっという間で、気づけば屋敷の食堂に着いていた。
夕飯に出てきたのは二切れのパンと野菜炒めと豆のスープだった。
朝と似たようなメニューに疑問を抱きつつも俺はアルマたちと同じようにそれを口へ運ぶ。が、今朝同様それらか味は感じられなかった。
気になってアルマたちのほうをふと見るも彼女たちはそれに違和感を持っていない。いや、それが当たり前と言うように食べ進めている。
この村の食文化はそこまで発達していないのか?でも広場で食べた野菜や魚はどれも美味しかった。
多分だけど俺の料理に何かあるのかも?そう疑念を持ちつつ俺は出されたそれらを完食する。