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大会帰りのカードゲーマー異世界に行く  作者: 白馬 鏡
ターン1 敗北とはじめまして
15/32

Phase.14 寝起きと気づく読めない文字

「すっ〜、すっ〜、……ん?」


 瞼を開ける。閉じる。それを二・三度繰り返したのち。俺は目を覚ます。


「ふぅあ〜〜」


 起き上がり大きな欠伸を吐き出しては辺りを確認する。隣では可愛い寝顔しているアルマが横になっている。

 空はまだ明るい。太陽のような光も天上で輝いている。


 今何時だ?


 寝ぼけた顔で現在時刻を確認する俺は自身のステータス画面を開く。時間を知らせる太陽のマークは中間を過ぎたあたりだった。


 昼過ぎか……。だいたい二時間くらい寝てたのか


 ぐぅ〜


 今の俺と似たような気の抜けた音がお腹から響いてくる。


「アルマ!アルマ!」


 彼女の名前を呼びかけつつ俺は眠っているアルマの体を揺らす。


「アルマ起きて!もうお昼だよ」


「う、うんん〜……おはようございます」


 起き上がったアルマは凄い眠そうな顔で聞き取れるか曖昧な波々声で挨拶をする。

 これは少し待ったほうがいいかな。そう思いアルマがシャキとするまで待つことにした。


「お腹すいた!」


 待つこと数分。意識がはっきりしたのか?アルマの開口一番が草原に響きわたる。


「それじゃ食堂行く?」


「ううん。お昼は広場に行こう!」


 広場?屋敷の食堂では無く?


 歩き出すアルマを前に頭に疑問符を浮かべる。


「何してるのコータ?早く行くよー」


 アルマの呼びかけに俺は頭に浮かんでいた疑問を「まぁいいか」と拭い去り彼女の後を追いかける。


 アルマと談笑しながら歩くこと数分。俺らは村の広場へと戻ってきた。

 本日二度目の広場。今朝とは少し違い行き交う人が少なく見える中、酒場の窓の向こう側では昼飯を取る村民の姿がちらほら確認できる。


「アルマ。広場に来たけどどうするの?」


「お昼ご飯はいつも広場で食べるんだ〜!今日はどこにしようかな」


 口元に人差し指を添えるアルマは広場に並ぶ店や屋台に目を配る。


「コータは何か食べたいのある?」


「俺?そうだな〜」


 アルマの問いに俺も辺りに視線を移す。が……どこの店もなんて書いてあるのか?読めない。

 どこもかしこも看板にこの世界の文字で書いており、それを読めない俺は何が何なのか判断がつかないでいた。

 そんな中、唯一目に止まった屋台があった。その店は立て看板に店名と見たことあるような魚のマークが刻まれていた。


「あそこかな〜」


 店名がわからない俺はアルマにわかってもらえるようその店へ向け指をさす。


「ん?あ、メッさんの屋台!コータいいとこ選ぶね〜。よしじゃあ今日はそこにしよう」


 メッさんの屋台?

 村だからか?やっぱり見知った人が多いのか?アルマの交友関係にそう考えつつ俺は彼女のあとを追いその店へ。


「やっほー!メッさん元気してる」


「あら、アルマちゃん!いらっしゃい……と、そちらは?」


「彼はコータ!外から来たお客さん」


「外から……?あ、今朝魔物を退治してくれた子かい!村を助けてくれてありがとう」


「あ、いえ、自分に出来ることをしただけなので……」


 メッさんと呼ばれるTシャツにエプロン姿・茶色の短髪の女性の店主にそうお礼を言われ、戸惑い思わず謙遜した返事を口にする。

 この人、今朝の戦いの後に見てない。でも俺のことを知ってる。村民間のネットワークか。想像以上のスピードだな。となると多分もうほとんどの人が俺のことを耳にしているんだろう。


「それでアルマちゃん?今日はどうしたんだい」


「コータがメッさんのお店が気になったみたいで。今日のお昼はここにしようかな〜って」


「それは嬉しい!そしたら何にする?」


「コータ、どうする?」


「え、え〜と……」


 二人の視線が俺へ向けられる。

 その視線に耐えながら俺は読めないお店のメニュー欄に目を走らせるも


「ごめんアルマ。今更だけどなんて書いてあるのか読めない」


 と恥ずかしながらアルマにそう伝える。


「そうなの?じゃあしょうがない。このあたしが教えてあげよう」


 俺の言葉にアルマはびっくりした反応を見せたかと思えば、胸元に手を当て誇らしげな表情でそう口にする。

 何がそんなに嬉しいのやら?アルマの表情に何故その表情を?と疑問を浮かべつつ彼女から店のメニューを教えてもらった。


「これが鮭で、これが鯖、でこれが秋刀魚だよ」


「うちは魚を串焼きにして、塩胡椒のシンプルな味つけてで出してるんだ」


 文字の読めない俺にアルマとメッさんが丁寧に説明してくれる。

 魚料理の店であってたんだ。それも串焼きの屋台。

 メニューの中から悩み俺は、


「じゃあ、鮭をお願いします」


「コータ鮭にするの。そしたらあたしは鯖をお願いしまーす」


「あいよ。ちょっと待ってておくれ」


 俺らからの注文に料理の準備を始めるメッさん。

 焼き上げられる魚の匂いに期待を寄せつつ俺らは暫し待つのだった。

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