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大会帰りのカードゲーマー異世界に行く  作者: 白馬 鏡
ターン1 敗北とはじめまして
13/32

Phase.12 慣れない言葉の嵐

「ただいま〜っと」


 気楽な声を漏らしつつ俺は村内へと帰還する。


「コータ!」


 俺の名前を大声で呼ぶアルマが、砦の見張り部屋から駆け寄ってくる。


「大丈夫!?怪我無い」


 慌てた様子ながらアルマは俺の体の至る所に視線を運び状態を確認してくる。そんな心配そうなアルマに俺は「大丈夫だよ」と声をかける。

 その声を聞いたアルマは「良かった〜」とホッと胸を撫で下ろす。


「そうだ!あの魔物たちは?」


「魔物?ああ、それならこの通りに」


 アルマの質問に俺は腰のデッキケースから数枚カードを見せる。それらのカードは今回の戦闘で入手したモンスターの素材カード。ほとんどがゴブリンのものだが、2枚はオーガとトレントから入手したもの。


「これがさっき話してたカード?」


「その中にさっきの魔物たちの情報が入ってる。一枚借りるね」


 アルマに渡したカードの中から一枚を取り出し、「発動!」と口にする。

 呼びかけに反応したカードは光り輝き一振りの斧へ変化する。


「こんな感じにカードに刻まれている情報を実体化させることができる」


 手に持った斧をくるくる回しながらアルマの前で実践する。


「へぇ〜あたしにも出来るかな?」


「どうだろう?アルマのステータスは……」


「ステータスって?」


 首を傾げるアルマがこちらを見てくる。


 まずい!?ミスったか?


 アルマのその反応に俺は不味いことを言ってしまったのではと内心に動揺が走る。

 まぁ、でも定番と言えば定番か。アニメや漫画でもステータス画面を表示できるのは飛ばされた現代の人間のみなのはよく見る話だ。そう考えつつ俺は、


「とりあえず試してみれば……」


 とアルマに提案する。


「うん!やってみる!」


 そう意気込むアルマに俺は持っている斧をカードに戻し、それを彼女に渡した。


「よし!…… …… え〜と、なんて言うんだっけ?」


「カードを前にかざして発動」


「こ、こう?」


さきほどの戦いを見ていたからだろう。見様見真似でアルマは渡されたカードを誰も居ないほうへ突き出す。確認してくる彼女に俺はうんうんと頷く。


「行くよ!発動!」


 …… …… …… ……


 アルマの呼びかけにカードは反応を見せない。


「あれ?もう一回。発動!」


 …… …… …… ……


 アルマがもう一度その言葉を口にするもカードが光り輝くことは無かった。

「……ダメみたい」とアルマは両手を横に頭を振るう。そう残念がっている彼女からカードを返してもらった。

 反応しなかったカードを手に俺は幾つかの可能性を考える。

 素材カードだったからか?いや、そうじゃないな。だったら適正の問題か?

 恐らくアルマのステータスに召喚士は無い。だから召喚できなかったのか?う〜ん、他人のステータスが閲覧できれば良いんだけどな〜

 アルマがカードの発動を試みている間、彼女のステータスが確認できないか試してみたけど出来なかった。

 この世界の人たちにそもそもステータスが設定されているのか?ただ個人でも閲覧できないのか?……ん?待てよ

 思考の中にある疑問点が留まる。


 ……試してみる価値はあるか


 俺はその疑問を確認するためにアルマにあるお願いをする。


「あのさ、アルマ……」


 頼み事を口にしようとした時、こちらへ近いてくる足音に気がつく。

  足音のほうを見ると村の中央から多くの村民がこちらへ走ってきていた。


 なんだ?なんだ?


 近いてくる村民たちは俺たちの……いや、俺の目の前でその足を止めた。

 多くの村民の眼差しが俺へ注がれる。

 俺の目と村民たちの眼差しが見つめ合う数秒。彼らから口が開かれる。


「あんちゃん……。スゲェなー!」


「ああ、あんなデケェ魔物どもを一瞬で倒しちまうなんて!」


「あなたのおかげで村は救われたわ!ありがとう」


 村民たちは揃って俺への感謝の言葉を口にしていった。


「え、ああ、どうも」

 

 慣れない彼らの行動に俺はどう反応していいか?終始戸惑うばかりだった。

 彼らからのお礼の言葉の嵐は暫く続くが、見かねたアルマが俺の手を引っ張っる。


「みんなストップ!感謝を伝えるのも良いけどコータは戦いの後で疲れてるんだから休ませてあげないと」


 村民たちにそう説明するアルマは引っ張った俺の腕をがっしり掴んでいる。


「そいつはすまねぇ」


「はじめての光景で僕らも興奮していたよ」


「そうね。ごめんなさい」


「そうそう。それじゃあ皆んな解散!朝の仕事に就いて」


 アルマの言葉に村民たちは皆村の中央へと離れて行く。

 その光景を前にホッと安堵するも俺の体は掴まれた腕のほうへ引っ張られて行く。


「ちょ、ちょっとアルマ!?」


「ほらほらコータは休みに行くよー。レッツゴー!」


 陽気な気分で歩き進んでいくアルマの隣で、さっきまでの緊張感から開放された俺は急な速度に追いつけないような戸惑った足取りで進むのであった。

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