ロマンチスト
「・・・お前は科学者が『ロマンチスト』だって言うのか?」
「ああ、その通りさ」
「俺の中のイメージとしては、『ロマンチスト』っていうのは、詩人のような芸術家に使うものであって、科学者というのは『ロマンチスト』というより、『現実主義者』だと思うんだが・・・」
「その認識は甘いと言わざるを得ないな。いいかい?ロマンチストには二種類あるのだよ。そして君が言っているのは、『空想的ロマンチスト』のことだ。そして科学者は『現実的ロマンチスト』なのだよ」
「意味が分からないんだが・・・」
「ふむ―――では分かりやすく説明しよう。例えば、君が空を飛び回りたいと思ったとしよう。
―――君が詩人ならば、空を飛びまわったらどんな気持ちがするだろう、どんなことが出来るだろう、と考えるだろう。これは『空想的ロマンチスト』だ
―――君が科学者ならば、どうして人間は空を飛ぶことが出来ないのか、どうしたら空を飛ぶことが出来るようになるのか、を航空力学や物理学の観点から考えようとするだろう。これが『現実的ロマンチスト』という訳だ」
「なるほど・・・それでお前が最初に言っていたセリフに戻る訳か」
「ああ、これが『科学者はロマンチストである』と私が言いきる理由さ。もっとも、勘違いしないでほしいんだが、私は『空想的ロマンチスト』を貶める気はさらさらない。『空想的ロマンチスト』の人々は、詩や小説・絵画などの芸術的分野で力を発揮することで、私達の心を豊かにしてくれるからな。
―――ただ、文明の発展という観点からみると、科学者といった『現実的ロマンチスト』の人々の貢献が非常に大きいという訳さ」
「お前の言いたいことはよく分かった。
・・・ただ、男女二人が喫茶店でする話題としては、ロマンが無さ過ぎると思わないか?」
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