表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

勝手にサービス

作者: 雉白書屋

 深夜。とある牛丼屋。


「はい、牛丼の並でお待ちのお客様、お待たせしましたぁー」


「んー、はぁ……」


「え、ど、どうかされましたか? 何か……」


 カウンター席に座るその客の男に大きくため息をつかれ、店員の男は出したばかりの牛丼をカウンターの内側から覗き込むように見下ろした。何か不備があったのかと思ったのだ。しかし、髪の毛など不純物はない。出す前に確認したから当然だ。量だって適正である。視線を牛丼から男へ移すと、その男は言った。


「いつもの店員さんならサービスしてくれるのになぁ……」


「えっ」


「サービスをねぇ……してくれるんだけどねぇ……」


「へぇー、そうなんですね」


「うん……」


「……じゃあ、ごゆっくりどうぞ」


「はぁぁぁぁぁぁ……はぁぁぁぁぁぁぁぁーあ」


「えっ、な、なんですか」


「んー……」


「あの……」


「……してくれないんですね」


「え、サービスですか? まぁ、はい……え、あの、なにか?」


「いや別に……」


「いや、今『ケチだな』って顔しませんでしたか?」


「いやいやいやそんなわけないですよ」


「そうですか……まあ、いいんですけど、それじゃあごゆっくり、いや、何すかその顔。やっぱりしてるでしょ『ケチだなこいつ』って顔」


「いや、これは『言いがかりつけてくる店員だなぁ』って顔」


「えぇ……まあ、それはちょっとすみませんでしたけど……と、その顔はなんですか」


「これが『ケチな店員だな』の顔」


「してるじゃないですか……最初の顔もそれと同じって、今度は何ですか……そのブサイクな犬みたいな顔は」


「『サービスして欲しいなぁ』の顔」


「しませんよ! 甘え顔だったんですか!? そもそもサービスってその店員、何してたんですか。つゆ多めぐらいならしてもいいですけども、肉増量ですか、トッピング無料ですか。ほんとはねぇ、駄目なんですよ。親切のつもりでも他のお客さんに知られたら不公平感が出るし、こうしてサービスを当たり前に要求してきたり、そもそも店の、何すかその顔は……」


「うるせぇし、ねみー! の顔」


「でしょうね! 欠伸してたし! もう帰ってくださいよ!」


「おいおいさすがにそれはおかしいだろう。クレームをつけたわけでもないしさぁ」


「まあ、そうですけど……すみません」


「じゃあ」


「じゃあじゃないですよ。駄目ですよ。まあ、幸い他のお客さんはいないですし、玉ねぎ増量くらいならいいですよ」


「んー、彼はそんなもんじゃなかったけどな」


「え、じゃあ、何を」


「無料」


「む、無料!? 牛丼、全額!?」


「うん。トッピングも好きなだけ」


「トッピングまで!? そんな勝手に、もはや横領みたいなもんじゃないですか……」


「まあ、それは知らないけどしてくれたよ? あとお土産もくれた」


「お土産もサービスで!? ……というか全部、嘘でしょ! いくら言われてもサービスはしませんからね!」


「してくれたってば。こっちがサービスしたらさ……」


「えぇ? あなたもどこか店で、でもそれはグルというか両方の店に損害をって何してるんですか! 駄目ですよ! ちょ、なに、やめてくださいよ! あ、あ」


 男はカウンターを乗り越え、店員の傍によると、肩にそっと触れ、胸からお腹へと撫でるように手を下へ下へ、自身もしゃがみ、そして――

 ※以下サービスシーン自主規制。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ