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「……冒険って、そんな緩い感じで良いんだ」
サクヤの中の冒険のイメージーー険しい旅、支える仲間、手強い強敵ーーが、リーシャ達の冒険談により、強い以外の項目がことごとく崩れ去っている。
「いえ、普通なら駄目なのでしょうけど…」
何せ彼はこの国1番の大魔法使い。誰も彼に魔法で敵わないから、替えが存在しない。
(思えばあの時から、彼は自由な存在でしたね)
例え王族であろうと、彼は態度を変えないし、敬語も使わない。どんな時も、自由に行動する。
(……だから私のことも、ずっと、リーシャと呼んでいたのでしょうか)
誰もが聖女と呼ぶ中で、唯一名前で呼んでくれていた人。
「あ、ねぇ、あれじゃない?」
サクヤは、庭にある大きな2つの木に吊るされたハンモックを指さした。
近付くと、スヤスヤと無防備に眠りにつくレナルドが、気持ち良さそうにハンモックに揺られていた。
「何ですかこれ…!とても素敵です!」
「え?何よりもそっちなんだ?」
引っ越し初日だと言うのに、作業を放ったらかし、約束を放ったらかし、呑気に昼寝をしている件よりもまずは、外で風に当たり、揺られながら眠れるハンモックにリーシャは興味を示した。
「ん…。うるせぇなぁ…」
リーシャ達の話し声で目が覚めたのか、レナルドはゆっくりと起き上がりーー力尽きて、もう一度背中からハンモックに倒れた。
「だ、大丈夫?!」
「ほんまに眠たいんやな」
もう一度そのまま眠りにつこうとするレナルド。
「ルド、そろそろ起きて下さい」
「あぁ?だからうるせぇってーー」
目を開け、瞳にリーシャが映ると、言葉が詰まり、次の瞬間、大きな風が舞い上がったと思えば、レナルドの足は地面に着地していた。
「リーシャ、良く来てくれた」
ギュッとリーシャの手を握り締める。
「引っ越しの作業は進んでいますか?」
「引っ越しーー作業?」
「ルドはん、村長はんからも説明あったと思うけど、渡す家は元は空き家やから、家ん中は埃塗れで、掃除は自分でやってくれって言われたやろ?後は、持ってきた荷物の整理とか、足りひんもんの補充とか」
「あ?んなもん知らねーよ」
「ルド?」
レナルドの高圧的な態度に怯え、リーシャの背中に隠れるサクヤを見て、リーシャは名前を呼び、圧で注意した。
「…してねーよ。掃除なんかした事ねーし。荷物は無い」
「……掃除した事無いゆーんは、何となく想像してからまだえーとして、荷物1個も無いんか?リーシャはんですらちょっとはあったのに?!」
そう言えば、大きめのボストンバッグを1つ持って来ましたね。城からこの村に来るまでの間に必要な寝袋とか衣類を数着、城の者にお願いして、用意して貰って。
「大切な事聞くわーーお金は?」
私は所持金ほぼ持っていませんでしたからね。寝袋とかのお金も差し引かれましたし。
イマルは私の時に驚いた事を、ルドに確認していっていますね。
「金はあるぜ」
「ほんま良かったわ……よし、とりあえず店閉まる前に必要そうなもん買いに行こか」
……こうして他人目線で見てみると、本当に私はイマルにお世話になりっぱなしなんですね……。
生活能力皆無の城出身者2人の面倒を見させてしまっている事に、リーシャは今更ながら申し訳無い気持ちでいっぱいになった。
傍若無人な態度を取りっぱなしのルドと、2人っきりで買い物に行かせるのは不安だったので、私も一緒に行くと声をかけたのですが、イマルには涼しい顔で『何で?パパっと終わらせたいから、足の早い男2人で行くわ』と言い切られた。
「大丈夫でしょうか…」
「イマル兄ちゃんの事?」
残ったリーシャとサクヤは、とりあえず、家の掃除を始めた。手始めに、埃から落とす。
「イマル兄ちゃん、人付き合い僕と違って120%上手だから、大丈夫じゃないかな」
「それはーーそうですね。私よりも120%上手です」
村で一緒に過ごして来て思ったのは、イマルは村の誰とでも仲が良い。村長は例外ですけど…。
「仲良くなれるかは知らないけど、何言われても受け流してる思うよ」
「……それは、失礼な事を言っている前提の話ですよね」
イマルだけで無く、村の店の人達にも失礼な事を言っていそうで怖い。私が傍にいれば、止める事が出来るのに…。
「だからじゃない?」
「え?」
「ずっとお姉ちゃんが付きっきりになる訳にも行かないし、上手く説明出来るイマル兄ちゃんが一緒に行って、自己紹介かねてるんだよ」
「…そう…なんですね」
本当に優しい人だと、心から思う。優しくて、一緒にいて楽しくて、尊敬出来て、一緒に過ごせば過ごす程、好きになる。
「おーい。帰ったでー」
「おい!あの万年反抗期って言葉の意味は何だ?!」
そうこう話していると、思ってるよりも早く、2人が戻って来た。残念ながら、イマルのコミュ力を持ってしても、仲良くはなれなかったようだ。
「折角向こうが挨拶してくれてるのに、『何故俺が名乗らないといけない?馴れ合うつもりは無い』みたいな中二病炸裂みたい事言うからやろ」
どうやら想像していた通り、がっつり、やらかしてくれてるらしい。




