村娘生活4ヶ月目 レナルド67
村娘生活4ヶ月2日目ーーー。
朝の身支度や家事を済ませると、リーシャは早々と家を出て、サクヤの家に向かった。
(今日はサクヤが昨日釣った魚で料理を振舞ってくれる日です)
昨今、魚が手に入らなかった村で、久々に手に入った魚。
物心ついた時には魚が手に入らなくなっていた現8歳のサクヤも、魚を調理した事は無いが、ゲンに教わりつつ、本を参考に手料理を振舞ってくれるらしい。
手に入れたものの、高難易度の魚の調理など、リーシャには出来るはずも無く、サクヤの申し出はとても有難かった。
「お魚お魚。サクヤの作るお魚料理は、とても美味しいのでしょうね」
城で食べ慣れているが、城では食事を美味しいと思わなかった。でも、ここに来てからはご飯が楽しみになっている。
因みに、朝早くに急いでサクヤの家に向かっているのは、調理の仕方を見学したいからでもある。
料理が出来るようになるには、勉強あるのみ!
急ぎ足で向かっていると、角で人とぶつかりそうになり、慌てて立ち止まった。
「ごめんなさいーーって、ルド?」
「リーシャ」
角から出て来たのは、レナルドだった。
「おはようございますルド」
「ああ、おはようリーシャ」
いまいち距離感が掴めず、とりあえず、リーシャは丁寧に頭を下げ、挨拶した。レナルド本人は、そんなリーシャの気持ちはつゆ知らず、嬉しそうに挨拶を返した。
「今から新しい家に行かれるのですか?」
辺境の村ヘーゼルでは、空き家を移住者に無償で提供しており、リーシャもその恩家に預かった。
「ああ」
「…そうですか。頑張って下さいね」
何故私を追ってこの村に来たのかはまだ良く分かっていないが、城を辞めて来てしまったものはもう仕方ない。レナルドも、城を辞めてゆっくりと余生を過ごしたかったのかもしれない。
「………あの、ルドは、そのーー普通に暮らしていけるのですか?」
そのまま、レナルドと別れようと思ったのだが、ふと、気になってしまった事を尋ねた。
「普通に暮らす?」
「掃除とか、洗濯とか、料理とか…」
ノルゼスも城の関係者だったが、彼は城下町出身で、冒険中も、肉の解体や調理を進んでやっていた覚えがあるが、ルドは見たことが無い。私と一緒に、料理人が作った料理を食べていた覚えがあるし、何なら、肉の調達時も、魔物をオーバーキルし、肉塊一つ残さず消滅させ、ノルゼスに怒られていた気がする。
「そんなもの、メイドがするだろ」
(ーーそうですよね。ルドも私と同じで、生粋の城暮らしですものね)
城での生活は勿論、冒険中も執事やメイド、身の回りのお世話をする者が沢山いたので、自分でする必要が無かった。ただ、自分の役割をこなせば良いだけ。
「メイドなんていませんよ……ここはお城じゃないんですよ」
「いないのか!?マジかよ…」
私も世間知らずだと思いますが、ルドも大概ですね。
「当たり前ですよ。ルド、本当に大丈夫ですか?城に帰った方が良いのではないですか?」
どういった辞め方をしてきたのかは知りませんが、国一番の大魔法使いなのだから、戻りたいと言えば戻らせてくれそうな気がします。
「リーシャも一緒じゃなければ戻らない」
「ーーなら、自分で頑張るしか有りませんね」
かと言って、このまま放置するのも忍びない。けど、生活能力皆無の私が助けた所で、なんの足しにもならない。寧ろ2人で泥沼にハマって行く気がする。
「安心しろ。何とかなる」
(どこから来るんですかその自信は)
心配ではあるが、自分が手助けしたところでどうにもならない。今はサクヤとの約束(魚料理)も迫っている。私が、手を差し出したところで、何にもならない。それは分かっているーーー
「……お昼過ぎたら時間が有りますので、様子を見に行っても良いですか?」
---でも、このまま放っておくことは出来ず、リーシャはレナルドに尋ねた。
「!俺を…心配してくれてるのか?」
そりゃあ心配にもなりますよ。一応、私の関係者ですし……自分が手伝える事は少ないかもしれないけど、この村の先輩!として、色々教えてあげないと!
「泥沼にはまらないように頑張りましょうね」
「泥沼?」
生活能力皆無の私と、初心者ルドで出来る範囲は頑張りましょう!っと、午後からはレナルドの引っ越しの手伝いをする事をリーシャは決めた。
サクヤ宅。
「あ、お姉ちゃん。遅かったね」
サクヤはリーシャを見るなり、そう言った。
「遅かったですか?約束していた時間よりはまだ早いと思いますが…」
料理の見学をしたいからと、早めに家を出ていたので、レナルドと話をしていた時間を差し引いても、遅れてはいない。
「リーシャはんの事やから、魚を作ってるところが見たいゆーて、もっと早く来るんかと思ってたわ」
サクヤの家には、同じく約束をしていたイマルの姿もあった。
成程。二人には私の事はお見通しのようですね。
「そのつもりだったのですが、途中、ルドと会って、話していたら遅くなってしまったんです」




