66
「お姉ちゃんが行くなら、僕も行く!」
リーシャに次いで、手を挙げて立候補するサクヤ。
「おやおや。リーシャとサクヤに任せて、お前は行かない。と。ほー。良いご身分だなぁー」
村長はニヤニヤと笑い、挑発するような台詞を吐いた。
心優しく、面倒見の良いイマルが断る筈が無いと、息子の事を良く理解している。
「あーー!もーー!!行くわ!行けばええんやろ!このクソ親父!!」
「うむうむ。大丈夫だ。ルド君が魔物の数を大幅に減らしてくれたみたいだから、安心して思う存分釣りを楽しめるぞ笑♪」
ただ、何があるか分からないご時世、用心のためにも、他の村の人達を行かせる事は無いから、お前達が行くしか無いんだけどな笑♪と、副音声が聞こえる。
「ほんまに1回マジでどついたろか…!」
話が終わると、当たりはもう薄暗い。帰宅したのが遅かった事も有り、レナルドは今日は村長の家でお世話になる事になった。
「空き家はいっぱいあるし、明日案内する言うとったわ」
「……へぇ」
自分に関する事なのに何故か他人事のように空返事をするレナルド。
「ほなな」
「…さようなら」
「……失礼します」
イマル、サクヤ、リーシャは、お別れの言葉を告げ、村長の家を去った。
「ルド兄ちゃんって、どんな人なの?」
帰り道。サクヤを家まで送り届ける最中、サクヤは、ノルゼスと同じ、元・仲間だと説明されたレナルドの事について、リーシャに尋ねた。
「どん……な……と、言われましても……」
「また会話した事無いんか」
「有りません」
何ならノルゼスより少ない。彼の事で知っている事と言えば、この国1番の稀代の魔法使いとゆう事。
「……随分熱烈な歓迎は受けてたけどな」
出会い当初、レナルドは一目散に、リーシャを抱き締めた。
「何故なのでしょう…?私、何かしてしまったのでしょうか…?」
久々の再開に感動し、抱き締められる心当たりが本当に無い。顔見知り程度のクラスメイトにいきなり同窓会で抱き締められた。くらいの衝撃しかない。
「向こうはお姉ちゃんに会えて、本当に嬉しそうだったね」
傍から見ていたサクヤの目には、レナルドは本当に、リーシャが無事でいてくれた事に安堵し、出会えた事を喜んでいるように見えた。2人の温度差は激しかったが。
「ルドはんとは、ほんまに何も無いの?」
「何も。とは?一緒に冒険はしていましたけど……」
向こうは前線ど真ん中。かたや私は、皆様に守られて世話されて過ごしていたので、ほぼ接点が無い。唯一、彼の事で印象に残っているのはーー
「ただ……」
彼だけは、私の事を聖女では無く、リーシャと呼び続けてくれていた。
「私に自分の名前を、思い出させてくれていた人です」
「……ふーん」
リーシャの答えに、イマルは無表情で素っ気なく返した。




