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また、怖い考察が聞こえてきそうなので、イマルは早目に止めた。
「私、嘘、下手ですか?」
「めっちゃ」
聖女としての時間は何だったのでしょうか?聖女の時は、きちんと、振る舞えていたつもりなのですけど……それとも、私が気付いていないだけで、皆さんには、私が弱い事は筒抜けだったのでしょうか?
いえ、でもノルゼスは、私が強いと思っていましたよね。
私の涙を見てあれだけ狼狽えるのだから。
「俺は体調が悪くても、今回みたいな程度なら、誰にも気付かれた事あらへんで。リーシャはんが初」
「……」
確かに。イマルに嘘をつかれても、私は信じてしまいそう。でもそれは、私が、イマルを信じているから。
「イマルは、人を貶める様な嘘をつく人では有りません」
「ーー急に話が重なるな……別にそこまで真剣に話してたつもりは無かってんけど……」
初めて体調不良を見抜かれたと軽く報告したかっただけだったのだが、真剣に返答され過ぎて、イマルは困ったように汗をかいた。
「美味しかったわ。サクヤはんにまたお礼言わなあかんな」
「私まで頂いてしまって…」
「あんな量、俺1人で食べ切れへん。サクヤはんも、一緒に食べって意味で、多めに作ったんやと思うで?」
最初、イマルの分だけ器によそったのだが、何で?一緒に食べよーや。と言われ、断ったものの、誘惑に負けてしまいました。サクヤの作るご飯は美味しいです!
「ゲホッゴホッ」
「!大丈夫ですか?」
「ん。大丈夫やで」
表面上、平気そうに装っているが、顔色は悪く、呼吸も乱れ、眼球もーー(以下省略)
「失礼しますね」
「!」
リーシャは、そっとイマルのおでこに触れた。
(やっぱり熱い……38度くらいあるのでは?)
「イマル、一緒に寝ましょう!」
「は?」
サクヤから指令された使命は、後1つ!イマルをゆっくり休ませること!
「寝室は2階ですか?ご一緒しますね!」
「…………もう……ええわ」
色々と言いたい事はあったが、しんどさもあって、イマルは一旦、全てを飲み込んだ。
2階、イマル寝室。
青を基調とした部屋は、綺麗に整頓されていて、ベッドだけが、リーシャが来るまで休んでいたからか、少し乱れていた。
「ゆっくり休みましょうね」
「……リーシャはん、いつまでおんの?」
「イマルが寝るまで傍にいるつもりですが」
ゆっくり寝たのを確認するまでが使命。
「いや、もう帰ってええで。てか、頼むから帰って欲しい」
「え…。わ、私……30分置きに健康確認なんてしません、よ?」
「リーシャはんが今まできつめの看病受けて来たんは分かったけど、それは最早嫌がらせやからな」
所々発する、リーシャなりの看病の解釈を聞き、重病人でも無い、ただの風邪に対する対応では無いと直球で返した。
「私、今まで、看病された事はあっても、した事は無くて」
「でしょうね」
「その、私が今までされて来た看病は嫌なのですが、イマルの為に、何か出来たらと思って……でも、私ではまだ、何も力になれなくて……」
しゅん。と、兎が耳を垂らしたように、落ち込む。
「……それはわざとやってんのか?」
「わざと?何をでしょう?」
明らかに断りにくくさせているのだが、当の本人にその自覚は無い。
「あぁあ!もー!寝たらえーんやろ!寝たら!もう寝るわ!」
半分以上、渋々だが、イマルはベッドに入った。
(あかん……余計疲れた)
何故病人が気を使って看病させてあげなくてはならないのか、意味不明だ。
(もうはよ寝よ……てか、寝たフリしよ)
そう思い、イマルは瞼を閉じた。
「イマル?寝ましたか?」
リーシャは、ベッドの端に腰掛けると、優しくイマルの手を握った。
「っ、リーシャはん?何してんの?」
寝たフリをしようとしたのに、急に触れられて、思わず、声が出る。
「病気になったら、じいちゃんが眠るまで手を握ってくれるんだ。っと、サクヤが言っていたので」
(サクヤはんーーー!!!)
サクヤ的には、自分が受けた事のある看病を説明しただけで、同じ事をしろと言ったつもりはないのだが、リーシャには上手く伝わらなかったようだ。
「あのなぁ、リーシャはん」
「はい。どうされましたか?」
一緒に寝ましょう。や、手を握ったり。そもそも、寝室まで足を踏み入れたりーーー誤解されかねない行為だが、リーシャ自身は、純粋に、ただ看病をしようとしているのが、普段のリーシャの行いからも伺える。
「ーーいや、もうええわ」
何度目になるのか、また、イマルは色々と言いたい事を飲み込んだ。疲労感や体のダルさもあるが、丁寧に説明する事自体が、面倒臭くなった。
「リーシャはん……俺以外に看病の特訓、せんといてな」
「?はい。分かりました」
何か間違いが起きないよう、きちんと釘を刺すだけに留めた。




