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雨の日ーー53








村娘生活3ヶ月目ーーー。




祭りが終わり、ノルゼスが去り、村には、いつもの穏やかな日常が戻った。


「今日は雨ですね…」

自宅で窓を眺めながら、リーシャは呟いた。


ザーザー降りの雨の日は、外に出て何かを作業する事は難しくなるので、山菜集めや、狩りには行けない。庭で畑の作業をするのも、雨が降っているから水やりはしなくて良いし、手入れは億劫。


「何をしましょう」

家の掃除は、まだまだ苦手だが、ある程度の綺麗さは保てるようになった。洗濯は、この雨では出来ない。

「少し早いですが、お昼の支度でもしましょうか」

リーシャはそう言うと、キッチンに向かった。


基本的に生活能力皆無のリーシャだが、特に料理は苦手で、サクヤに時々教わっているものの、中々上達が見られない。

今日も不慣れな包丁さばきで、野菜や、お肉を切る。

「後はーー焼きましょう」

何とか丸焦げにならないように、火加減を見ることは出来るようになった。

味付けは変につけようとしてしまうと、分量が掴めないリーシャは、多く入れ過ぎてしまったり、薄味になったり、何とも言えない味(不味い)になったりと、ろくな結果にはならない。


1度、サクヤの前で味付けの為、醤油を丸ごと1本入れようとしたら、必死に止められた。

なので、基本、素材の味のみで召し上がる。



切った野菜をフライパンに移し、火をつける。

「♪上達しました。サクヤのおかげですね」

切り口も大きさもバラバラの乱雑な野菜達を、フライパンで焼く単純な作業に見えるが、ここまでの道のりも長く険しいもので、サクヤの指導のもと、努力の結果である。


苦手だが、料理をする事自体は嫌いでは無いので、リーシャは終始機嫌良く体を動かし、食材に火が通ると、お皿の上に、野菜炒め(味付け無し)を乗せた。


「完成しました」

自分の作った料理を目の前に、感激する。


(とても嬉しいです!黒焦げになっていないですし、火を使ってちゃんと料理が出来上がらせる事が出来たなんてーー!)


味はどうあれ、本人的には大変満足な品。


完成した料理をテーブルに運ぶと、リーシャも椅子に着席し、手を合わせた。

「頂きます」

挨拶をし、早速1口、口に運ぼうとした所で、扉を叩く音が聞こえた。




「リーシャはん!おるか?!」

「イマル?」


聞こえてきたのは、お馴染みのイマルの声だが、いつもと様子が違い、声色が焦っているように聞こえた。


「どうされましたか?」

急いで扉を開けると、雨でずぶ濡れになったイマルが、同じく、ずぶ濡れになったゲンに肩を貸しながら立っていた。


「怪我人や。すまんけど、治したってくれへんか?」

「ゲンさん!」

見ると、ゲンの足から、血が流れていて、リーシャは慌てて、2人を部屋に招き入れた。



ポウッと、回復の魔法を唱える。


「ほんま……こんな雨の中、無茶しようとするからや」

「面目無い」


話を聞くと、この雨の中、山菜を取りに1人で村を出たが、足を滑らせてしまい、怪我をしてしまったらしい。



たまたま、サクヤに用事のあったイマルが、サクヤの家を訪れると、雨の中出掛けてしまったゲンを心配したサクヤに、ゲンが1人で山菜を取りに行ってしまった事を教えられ、様子を見に行いくと、怪我をしたゲンを見付け、ここまで連れてきた。


「後でサクヤはんにもみっちり怒ってもらうからな」

「…ああ、分かった…」

イマルに強めに怒られ、孫にも後で怒られる未来が確定し、ゲンは小さく縮こまった。


確かに危険な事なので、今回はきちんと怒られて、反省された方が良いですね。と、リーシャも思い、ゲンを庇う事はしなかった。



「終わりました」

汗を拭い、魔法を止める。

怪我の程度は思ってる以上に酷く、治療が少しでも遅れていれば、歩けなくなっていたかもしれない。


「ごめんなさい。私の回復魔法では、これが限界です…」


きちんと完治した訳では無く、あくまで、症状を良くしただけ。それ程、酷い怪我で、基本的な回復魔法しか使えないリーシャには、これが限界だった。



「いや、大分良くなった。痛みが少し引いたし、感覚がある…!本当にありがとうな、リーシャ!」

完治させる事は出来なかったが、きちんと安静にしていれば、普通に歩く事も出来るようになる。


「いえ。お役に立てたのなら、幸いです」

「俺とリーシャはんに感謝しーや!」

「イマルにも勿論感謝してる!恩に着る!ありがとうなイマル!」


ゲンは深々と頭を下げ、2人にお礼を述べた。





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