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「まーリーシャはんの気持ち次第やけど、俺は別に迷惑やと思って無いから、泣きたい時は泣いたら?逆に、変に強がられるほーが迷惑や」
「…強がる方が迷惑…」
「リーシャはん、結構顔に出るタイプやし、隠すんは無理やろ」
「嘘です!そんな筈ありません!」
今までの聖女としての経験で、初めて特技として生かせる、感情のコントロール!鉄壁の表情だと自負していたのに、全く正反対の評価を下され、納得がいかない。
「いやいや、村の皆に会う度に色々な心配されとったくせによー言うわ」
そう言われれば、確かに……イマルは勿論、サクヤやマルシェ。ジェラードにも、寝不足を心配されましたけど……。
他にも、村の子供達や、おばさん、おじさんetc……会うと、大丈夫?って声をかけられたりしましたけど、あれは、祭りの準備に間に合いそう?の大丈夫?では無くて、まさか、私の事だったのですか?!
「折角の私の特技が…」
「何の特技やねん。そんなん別に要らんやろ」
ガクリと肩を落とすリーシャに、イマルは呆れながらツッコミを入れた。
「……でも……そうですか……」
村の皆さんにご心配をおかけしてしまった事は、本当に申し訳無く思うし、唯一だと思っていた特技は失ってしまったけど……
「私、本当はそんなに強く無いってーーー皆さんには、バレてしまったんですね」
辛い時は悲しいし、泣きたくなるし、寝不足は疲れるし、クマは出来るし、フラフラする。
ずっと、強いままの、皆の希望であり続ける、聖女じゃない。
「おお…?」
物思いにふけるリーシャを相手に、イマルは一旦、言葉を飲み込んだ。
(多分、結構前から皆そんなん気付いてると思うねんけど、言わん方がええんかーーー?)
基本、明るく前向きだが、村に来た時から、時折見せる暗い表情を、ほぼ皆が知ってる。
そしてそれが、この村に来る以前にまつわる事だとも、ほぼ全員が気付いているのを、リーシャは知らない。
(リーシャはんが時々話す過去話、全く面白くなさそーやもんな……)
話す時の表情もだが、会話内容も、虐められた事があるだの、料理は全てコックが作っていただの、普通では無い内容な上、生活能力はほぼ皆無だし、極めつけは、あのくせのある冒険者ノルゼス。
明らかに凄腕の実力者で、そんな冒険者がリーシャに固執しているのは、一体、どんな生活を送って来たのかーー。
気にはなっているが、リーシャ本人は語りたくなさそうなので、皆、あえて突っ込んでは聞かないようにしている。
「どーせノルゼスはんに泣かされたんやろ?」
「イ、イマルは心を読めるのですかーー?」
鉄壁だと思っていた、弱さを見せない仮面が、実は村の人達には効果が無いと分かった上、原因まで分かってしまっていることに、真剣な表情で、リーシャはイマルに尋ねた。
「心なんて読まんでも分かるわ!」
「そ、そうなんですね」
ノルゼスに投げかけられた言葉は、本当に、悲しくて、大好きな場所、大好きな人達を貶すような言い方をされた事が、本当に、悔しかったーーー。
「……ノルゼスは、私が、元の場所に戻る事が、私の幸せだと思っているんです」
城での生活は、豪華な部屋に食事が有り、そして、彼の言う、私に相応しい地位の方々がいる。と。
そのどれもが、私は望んでいないのに。
見る人から見れば、私の憂いは、我儘な物に見えるでしょう。
衣食住が与えられ、身の回りのことを全てしてくれて、豪華なパーティが開かれる、煌びやかな世界。
ただ、そこに私の意思は必要無いだけ……。
「下手すれば村の誰よりもここでの生活をあんだけ楽しそうに過ごしてるリーシャはんを見て?」
少ない日数だが、村で過ごすリーシャを見たなら、どれ程楽しんで生活しているか、ひと目で分かる。
イマルは信じられ無いと思いつつ、ため息を吐いた。
「なんなん?ノルゼスはんはほんまに空気が読めんの?それとも、わざと読んで無いの?」
「さぁ…?」
「さぁって、一緒に旅してた仲間なんやろ?何となく分かるやろ」
冒険を一緒にしていたくらいなのだから、ノルゼスの人となりの1つでも分かりそうなもの。
「ノルゼスとはこの村に来るまで、世間話の1つもした事がありません」
「嘘やろ?!」
イマルの大きな声に、ビクッと反応し、リーシャはそのまま、静かに頷いた。
「必要事項は話した事はありますが…」
「……確かに、なんかよそよそしいな。とは思てたけど」
まさかここまでは思わなかったようで、自分の想像を遥かに超えたマイナスの関係性に、イマルは驚いた。




