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村娘生活2日目3




 村娘生活2日目ーーー。




「んっ…眩し…」

 カーテンの付いていない家で、朝日が直に入り込み、リーシャは眩しさで、目を覚ました。


 昨晩は床に寝袋を引き、そのまま眠りについた。

 じーーーっと、ファスナーを引き、寝袋から出て、んー。と、背筋を伸ばす。



「誰も起こしに来ない……!」


 お城でも冒険に出ていた時も、必ずメイドが起こしに来て、目を覚ましていたので、誰も自分を起こしに来ない事に、リーシャは深く感動した。


 鼻歌交じりで蛇口を捻り、昨日、イマルが持って来てくれたコップに水を入れ、飲む。


「美味しい…!」


 川から流れる水を引いていると聞いていたが、綺麗な水は、味も美味しい。

 ごくごくと一気に飲み干す。



「さて、今日は何をしましょう…」


 リーシャの持って来た荷物はとても少なく、大き目のボストンバッグが1つだけ。

 中身を開け、綺麗な水晶を取り出すと、近くの小棚の上に置いた。



「…うん。素敵」

 リーシャは満足そうに、人生で初めて、自分の手で飾ったインテリアとなった水晶を眺めた。






「リーシャはーん!大丈夫?生きてるかー?」

 ドンドンっと、玄関をノックする音と、イマルの声が聞こえる。



「はい。お陰様で、生きております」

 扉を開け、イマルを出迎える。


「ホンマに心配になるわ」

 昨日の様子だけでも、生活レベルが皆無だと分かる。

 そのまま中に入ると、イマルは先程リーシャが飾った水晶に気付き、目を止めた。


「へぇー綺麗な水晶やなぁ」

 一言、感想を述べ、近付くと、まじまじと水晶を見た。


「……綺麗、ですか?」

「おお。めっちゃ綺麗やと思うで。こんな田舎の村には、こんな綺麗な水晶なんて無いし、良いとこ飾ってるやん」

 その、イマルにとっては、何気無く言ったに過ぎない賞賛の言葉に、リーシャは、とても嬉しそうに微笑んだ。





「ーーーで、これ、何?」


 リーシャが昨晩使用していた寝袋を指し、尋ねるイマル。


「寝袋です」

「見たら分かる!これで昨日寝たんか?!」

「とても暖かいのですよ。思ったより寝心地悪く無くて、とても良かったです」

「そら良かったなぁーーじゃなくて!何でやの?!ベットは?!あったやろ?!」


 詰め寄るイマルの言葉に、リーシャは、んー。と考える素振りをした後、口を開いた。


「2階にあったのですが、シーツの付け方が分からなくて…寝袋なら、中に入って寝るだけで良いと聞いたので」



「昨日折角洗濯しといたのにーー!付け方か!!」

 イマルは悔しそうに叫んだ。






 2階に上がり、シーツの付け方をレクチャーした後、2人は再度1階のリビングで、椅子に座った。



「リーシャはん、ほんまに大丈夫?!ちゃんと生活して行ける?!」

「初対面にも関わらず、大変お世話になり、本当になんとお礼を言ったら良いのか……」

「うん、それはそーや!お世話してる!でもそれは最早問題じゃない!それよりも心配が勝つわ!!」



 出会って1日で、掃除、洗濯、ベットメイキング!

 基本的な事を教え、手伝っているこの現状に、リーシャのこれからの生活が心配でしかない。


「まだまだ不慣れですが、少しずつ慣れていければと思っております」

「向上心は素敵やけどなぁ…大体、引っ越してくるゆーのに、自分の荷物はほぼ無いし…」


 城から出る際、殆ど、荷物を持たせてくれなかった。大切な思入れのある物は特に無かったので、問題は無かったけれど。


「私自身の物は、殆ど有りませんでしたから」

 身の回りにあったのは、高価な服や装飾品。それも全て城から頂いた物だし、私の物では無い。

「何それ。なんや、虐げられてでもいたんか……って」

 そこまで言って、イマルはある事に気付いた。


「リーシャはん、食事どないしてんの?」

 生活能力ゼロのリーシャが、食事の支度が出来るとは思えない。



「食事ですか?えっと、今日の朝、頂いたコップにお水を汲んで、飲む事が出来ました!」

「昨日から水しか飲んで無いんかい!!」



 何故か自信満々に胸を張って答えるリーシャに反して、イマルは頭を抱えた。






***


 辺境の村ヘーゼルの外ーー。




 トコトコと村の外を歩くリーシャとイマル。


「リーシャはん、村の外は危険やねんし、残っとって良かったんやで?」

 後ろから付いてくるリーシャに向かい、怪訝そうに尋ねる。


「私の為に食材を狩りに行って下さるのに、お1人で行かせるなんて出来ません」

「……一緒のが手間かかるんやけど……まぁもおええわ」



 歩いている足を止め、イマルはリーシャの頭を押さえて、一緒にしゃがませた。

 シーと、指で静かに。と合図を送る。


 目線の先には、猪の魔物の姿があった。


 イマルは慣れた手付きで、武器である銃剣を猪に向け、標準を合わせた。



 ーーーパンッッッ!!!と、乾いた音がし、銃口は見事に命中し、猪の魔物はその場に倒れた。



「調子ええなぁ。この魔物の肉、上手いんやで」

 そう言って、手馴れた様子で、肉を取り出す為の解体作業を行う。

 その様子を、リーシャはじー。と見つめた。



「……目、逸らさへんねんな」

 都会暮らしのか弱い女の子は、生き物の解体シーンはグロくて見られないと悲鳴を上げると思っていたイマルは、一切、目線を逸らさないリーシャに、少し驚いた。


「した事はありませんが、見慣れてはいますから」

「見慣れてる?なんや、実家は肉屋でもしてんのかいな」




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