村娘生活26日目23
村娘生活26日目ーーー。
本日はお日柄も良く、雲ひとつ無い晴天。
一緒についてこようとする、保護者のゲンを振り切り、リーシャ、イマル、サクヤは、3人で村の外にいた。
「どうしてゲンさんが一緒では駄目だったのですか?」
リーシャは大歓迎だったのだが、特に、サクヤが嫌がった。
「やだよ!保護者同伴だなんて……なんか、恥ずかしいし……」
「こればっかりは男心やから、リーシャはんには分からんやろなー」
「そうゆうものなのですね」
男心は、女の私には分からないと、素直に納得する。
「魔物の数も大分減ったし、落ち着いてるし、山菜採りなら俺一人でも大丈夫やろ」
実際、村での山菜採りも、戦える人の数は一人、多くて2人だけ。
山菜採りを行う場所は村からそんなに離れていないのもあって、魔物との遭遇の確率は低い。
リーシャも、この村に来て何度か山菜採りに行ったが、1度も魔物と出くわした事は無かった。
「だからって、1人で村の外に出たらあかんで!確率は低いゆーても、出くわす事やてあるんやからな!」
「そうだよ!駄目だからね!」
口酸っぱく忠告するイマルに、サクヤも加わった。
「はい。分かっています」
素直に頷く。
「ほい。着いたで」
「行きましょう、サクヤ」
「わっ」
いつもの場所に到着すると、リーシャはサクヤの手を引いて、一緒に歩いた。
「っ!は、恥ずかしいよお姉ちゃん!」
「?どうしてでしょうか?」
「お!男心!」
8歳の年頃の男の子の気持ちがリーシャに分かるはずも無く、サクヤは顔を真っ赤にして、叫んだ。
パッと手を離す。
「これも……男心……。分かりました」
意味は分かっていないが、本人が嫌がっているので、無理強いは良くない。
リーシャはしゅんっと項垂れた。
「そ、そんなに落ち込むなんて狡いよ!分かったよ!繋いでいいよ」
「いいんですか?」
サクヤの言葉に、パァっと明るく顔を上げると、リーシャは嬉しそうにサクヤの手を握り直し、上機嫌で歩き出した。
周りを警戒しながら傍で見守るイマルに、2人で一緒に山菜を集めるリーシャとサクヤ。
「……お姉ちゃん、それ、食べれないやつだよ」
「わ!すみません……教えて下さってありがとうございます、サクヤ」
まだまだ山菜を覚え切れていないリーシャ。
「サクヤ、凄いですね。山菜も覚えているんですね」
「そりゃあまぁ……料理で使うし……お姉ちゃんって、この村に来る前はどうやって生活してたの?料理した事無いんだよね?」
料理初心者と言っていたが、それなら今までどうしていたのかが不思議になって、サクヤは尋ねた。
「はい」
「お母さんが全部作ってくれてたの?」
「いえ。料理人が作ってくれていました」
城での生活の時も、冒険の最中も、専用のコックが一緒に同行していたので、自分自身が料理に携わった事は1度も無い。
「料理人?!お姉ちゃんって、本当は凄いお金持ち……には、見えない……けど、お金持ちなの?」
「いいえ。所持金は今の所殆どありませんよ」
城から出た時も、所持金として渡されたのは、ほんの少しだけ。
「でも、この村の人達は皆さん親切なので、本当に助かっています」
使っていないからと、無料で家を提供してくれ、使っていないからと、食器や、服、生活用品をくれ、今も、困っていないか?と、食料を届けてくれたり、様子を見に来てくれる。
「1番私を助けてくれたのは、イマルですよ」
「!別に……特に対した事はしてへんけど」
急に話を振られると、イマルは照れたように、顔を背けた。
「分かる!イマル兄ちゃん、優しいよね!」
サクヤもリーシャに強く同調する。
「はい。困っていたら、手を差し伸べてくれて」
「心配だからってちょくちょく顔見に来てくれるし」
「格好良いですし、一緒にいて楽しいですし」
「強いし、頼り甲斐があるし」
「もう止めてくれへんかな?!」
止まらない賛辞の言葉に、イマルは大きな声で待ったをかけた。
「結構摘んだね」
一杯になった籠を見て、サクヤは一息ついた。
「せやな。こんだけいっぱいあったら、ゲンさんも喜ぶわ」
そう言うと、イマルはサクヤの頭を撫でた。
「さて、そろそろ戻ろかーーて、隠れろ!」
イマルはそう言うと、リーシャの手を引き、サクヤを担いで、すぐ近くの茂みに身を隠した。
「いって…何、兄ちゃー」
「魔物や」
「え…!」
弾みでどこかにぶつけた頭を押さえながら言うサクヤの言葉を遮り言ったイマルの言葉に、息を飲む。
「別にそんな対して強い魔物やあらへん。ここで隠れとき。パパっと退治してくるわ」
そう言われて覗いた先には、リスの姿をクマくらいの大きさに巨大化した、鋭い牙と目付きの魔物。
「す、すっごい強そうだよ!」
大きさがサクヤの3倍はありそうで、思わず、サクヤはイマルの袖を引っ張り、引き止めた。