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魔法が暴走して、人を傷付けてしまってから、外に出る事が怖くなって、億劫になって、家で過ごす事が多くなった。
じいちゃんは優しいから、僕の気持ちを組んでくれて、無理強いしないでいてくれて、でも、凄く申し訳無くてーーー何もしないで家で待っているのが嫌で、料理を作って待っていたら、じいちゃんは凄く喜んでくれた。
「美味しいって言って食べてくれるの、凄い嬉しいよ!」
「……はい。私も、頑張りますね」
年相応に笑いながら会話をするサクヤを見たのは初めてで、リーシャは嬉しくなって、微笑んだ。
「もーほんま勘弁やでゲンさん」
ゲンの相手を終え、汗を拭いながら、イマルはその場にへたり混んだ。
「若いくせに何を言うか」
「そんなん関係あらへん。俺はサクヤはんに会いにここに来てんのに!」
「兄ちゃんもじいちゃんも、お疲れ様」
サクヤは、家から持って来たタオルを、ゲンに手渡した。
「じいちゃんの勇姿、見てくれたか?!サクヤ!」
「孫のポイント集めに俺を使うなや!」
体を動かしたいのも本音だが、孫のサクヤに良い所を見せたい!のが、1番の目的だろう。
「うん、じいちゃん、格好良かったよ」
「!!!そうか!!!」
サクヤの答えに、目をキラキラさせ、満足気に頷くゲン。
「ったく」
「ふふ。お疲れ様でした、イマル」
そう言って、リーシャも、イマルにタオルを手渡した。
「せや。リーシャはん、明日の山菜集め、行けるんか?」
前回の山菜集めの約束のリベンジだが、リーシャの手の怪我を気にして、イマルはタオルで汗を拭いながら、リーシャに確認した。
「はい。問題ありませんよ」
初期の段階で迅速に手当てを丁寧にしてくれた事もあって、痛みはもう無いし、水膨れも綺麗に治りかけている。
「ほな行こか」
「……イマル兄ちゃん達、山菜採りに行くの?」
2人の会話を聞いていたサクヤが、横から声をかけた。
「はい。私1人では外に出れないので、イマルにお願いして、連れて行って貰っているんです」
村でも定期的に、山菜採りに出掛ける集まりがあり、基本それに参加しているが、時折こうして、イマルが一緒に行ってくれるので、とても助かっている。
「まーついでやけどな」
基本自給自足のイマルは、山菜採りにも行くので、そのついでにと、リーシャにも声をかける事があった。
「……2人で行くの?」
「?そーやで。何や?興味でもあんのか?」
サクヤがこうして聞いてくるのは珍しい事のようで、イマルは尋ね返した。
「……僕も、行きたい……」
「!」
「サクヤ!!ほ、本当か?!家から出るのか?!」
イマルも、ゲンも、サクヤの言葉に、驚きの表情を浮かべ、ゲンは勢いのまま、サクヤに詰め寄った。
「う、うん……イマル兄ちゃんと、リーシャ姉ちゃんの2人で行くんだよね?僕も、一緒に……行けたらなって……その、迷惑かけちゃうかもだけどーー」
「全然迷惑とちゃうで。ほな、一緒に行こか」
「サクヤも一緒に来てくれるのですか?嬉しいです!一緒に行きましょう!」
2つ返事で快く快諾するイマルとリーシャに、サクヤは嬉しそうに微笑んだ。
「ーっぅ!サクヤ!サクヤがーー外にーー!そうか!そうか!」
涙をいっぱい目に溜め、溢れた涙がポロポロと頬を伝い、号泣しながら、ゲンはサクヤを強く抱き締めた。
「く、苦しいよじいちゃん」
「ゲンさん、サクヤはん窒息してまうで」
イマルの忠告もそこそこに、ゲンは暫くサクヤを抱き締めながら泣き、イマルもリーシャも、笑顔でその光景を見つめていた。
その帰り道。
夕刻も近付いてきたので、イマルはリーシャを家まで送る為、一緒に、来た道を戻る。
まだ暗くなっていないので大丈夫と断ったが、ええ。と一言、押し切られてしまった。
「……あんがとーな」
「?いえ、お礼を言うのはこちらの方です。いつも家まで送って頂き、ありがとうございます」
現在、家まで送って頂いている立場にも関わらず、急に感謝の言葉を伝えられ、リーシャは戸惑いつつも、感謝を伝えた。
「ちゃうちゃう。サクヤはんの事や」
「サクヤ?」
サクヤに関する事。と言われても、お礼を言われる事が思い浮かばず、リーシャは首を傾げた。
「サクヤはんが外に出るって言ったんもやけど、あんなに楽しそうにしとったんも、久々に見たわ」
家に閉じこもり、いつも、悲しそうに俯いていた。
「私は何もしてませんよ?寧ろ、サクヤに料理を教えて貰っていたのは私ですし……」




