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イマルは、リーシャの手に巻かれている包帯に視線を向けると、その手を取った。
「!イマル?」
急に触れられ、ドギマギする。
「綺麗に処置して貰ってるな。誰にやってもろたん?」
「ゲ、ゲンさんです」
「ああ。ゲンさん、自分もよー怪我してたから、得意なんか」
昔、ゲンさんは村1番の凄腕の魔物ハンターと呼ばれていた。
「…っ…」
イマルは涼しい顔をして、リーシャの手を取り、包帯の巻かれている箇所を見ているが、触れられているリーシャは、耳まで真っ赤に染まる。
(な、何でしょう…普通に触られてるだけなのに、何でこんなに心臓がバクバクと音がなっているのでしょう…!)
今まで恋愛経験の無いリーシャは、全く免疫が無かった。
(駄目です…!好きって言ったら駄目なんです!だから、違う事を考えましょう…えっと、えっと…)
「……ごめんな、サクヤはんが怪我させて」
「!」
考えを巡らせていると、悲しそうなイマルの顔が見えて、リーシャは慌てて首を横に振った。
「大丈夫ですよ。ただのかすり傷ですから。ゲンさんも治療して下さいました」
同じ様に、ゲンにも謝られた事を、リーシャは思い出した。
「ふふ。2人とも、サクヤが大好きなんですね」
「……大好きって……そんなこっ恥ずかしい事、よー言えますな」
「!違いますよ!私が、イマルの事が大好きって言った訳じゃないですよ?!これは、イマルとジンさんが、サクヤを大好きだと伝えたくて……!」
「分かってるわ!頼むから落ち着いてくれ!」
好きのワードを出す事自体がアウトなのかもしれないと焦るリーシャを、イマルは急いで止めた。
焦るリーシャの態度からは、執拗い女は嫌われるから、もう好きって言うな!が、響いてるのが分かる。
分かる分、焦って否定されると、逆に、本当は大好きなんだけど、嫌われたく無いから、身の潔白を証明します!と全身から言われてる様で、こっちが照れる。
「ーー何イチャついてるの、兄ちゃん達」
「わ!ビックリした。おったんかいな!」
魔法の特訓をしていたサクヤが気が付いたら側まで来ていて、イマルが驚きの声を上げた。
「いるよ。僕の家だもん」
「お疲れ様ですサクヤ。お茶入れて来ますね」
ここ数日ゲン宅に入り浸っているからか、手馴れたように、リーシャはお茶を入れに席を立った。
やかんに入ったお茶をコップに移すだけの簡単な作業なら、リーシャでも出来る。
「あ、あのさ…イマル兄ちゃんとお姉ちゃんって、付き合っーー」
「付き合ってへんで。サクヤはんまでそんなん言わんといてーな」
もじもじし、少し照れながら尋ねるサクヤに対し、イマルは全てを言い終わる前に、答えを告げた。
「なんだ…そーなんだ」
「何でちょっとガッカリしてんねん」
肩を落とすサクヤに対し、首を傾げる。
「え?!いや、別に、そんな事無いよ!」
「サクヤ、お茶入れて来ましたよー」
「イマル、お前も折角来たんやったら、ワシの相手でもせぇ」
お茶を組みに行っていたリーシャと一緒に来たゲンは、斧を片手に、イマルに声をかけた。
ゲンは若い頃魔物相手に狩りを行っていた第一人者で、一線を退いてからも、戦闘の鍛錬は欠かさずに行っている。
「絶対嫌や」
「そー言うな。年寄りの相手すんのも若いもんの仕事や」
即答で否定するも、ゲンはそのままイマルの首根っこを掴んで、庭に引きづり出した。
ゲンの誘いを断りきれなかったイマルは、銃剣を取り出し、嫌々ながら、ゲンの斧を受けた。
「わー凄いですね」
リーシャは、そんな2人の戦いを縁側で眺め、隣にいるサクヤに、感想を述べた。
「うん……2人とも、村で凄い、強くて、皆から、頼りにされてるんだ」
そう告げるサクヤの表情は、どこか悲しげに見えた。
「サクヤも十分凄いですよ」
「……僕なんて……魔力は持ってるけど、魔法を上手く使えないし……」
「何言ってるんですか!あんなに美味しい野菜スープを作れるんですから、充分凄い事ですよ!野菜の切り方も上手で、味付けも抜群です!それに、教えた方も凄く上手で、サクヤのお陰で、私も少し、包丁の使い方が上手くなった気がしますし、それにーー」
卑屈な発言をするサクヤに対し、リーシャは意気揚々と、サクヤの野菜スープに対する褒め言葉を次から次へと口にした。
「……ふふ。僕の野菜スープ、そんなに美味しかった?」
リーシャの褒め言葉をぽかんと聞いていたサクヤだが、やがて、耐え切れずに笑みを浮かべた。
「はい!あんなに美味しい野菜スープを作れるなんて、サクヤは天才ですね!」
「……うん。僕、料理作るの、大好きなんだ」




