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「どうですか?」
「…うん、普通に苦いよ。焦がし過ぎだし……それに、野菜、ちゃんと切った?なんか、塊があるけど」
丸ごと人参の黒焦げが、鍋に沈んでいる。
「はい、切りました」
「……よくそんなにはっきり言い切れるね」
真っ直ぐな顔で言い切られ、逆に感心する。
「お恥ずかしながら、この様に、料理は初心者でして、とても下手なのですが、今、まさに頑張っている最中でして」
リーシャは、ニコッと笑顔をサクヤに向けた。
「一緒に頑張りませんか?」
「一緒に…」
急なお誘いに、サクヤは戸惑い、返事が出来ず、俯くと、チラリと、火傷したリーシャの手を見た。
「僕と一緒にいたら……また、怪我しちゃうよ?怖くないの?」
「どうしてですか?サクヤは、わざとしたのでは無いですよね?なら、怖がる必要がありません」
魔力の暴走を止めれず、相手を怪我をさせてしまう。
その事を恐れ、距離を置こうとする彼を、私は、怖いとは思わない。
「今日から特訓ですね」
「え…えっ…と…」
否定しないのを肯定と捉えるリーシャに押され、サクヤは次の言葉を上手く出せず、ただ戸惑った。
「おお?!リーシャじゃねーか!」
そこへ、顔見知りのゲンがやって来て、声をかけられた。
「ゲンさん」
「じいちゃん」
「何やってんだお前等?」
どうやら、今いるこの場所はゲンの家らしく、出掛けていたゲンは、いるはずの無いリーシャの姿を見て、驚いた表情を浮かべた。
「サクヤがすまねぇな!リーシャ!」
話を聞き、リーシャが怪我した箇所を冷やす為の氷を持ってきながら、ゲンは申し訳なさそうに謝罪を口にした。
「かすり傷ですし、全然平気ですよ」
「いや、でもーー」
赤い腫れは、水脹れになっていて、痛みはあるが、我慢出来る。
「それよりも、今日からサクヤと特訓をする約束をしたんです」
「僕了承してないけど…」
庭先の縁側で座りながら、勝手に決定事項にされた約束に、サクヤは口を開いた。
「何?!サクヤと?!仲良くしてくれんのか?!」
「はい」
「くぅ!こんな出来の悪い孫と仲良くしてくれるなんてーー!サクヤをよろしく頼む!リーシャ!」
「じいちゃん!僕了承してないってば!」
本人である自分を置いてけぼりに話を進める2人に対し、サクヤは急いで否定したが、最早後の祭りだった。
「頑張りましょうね、サクヤ」
「…うぅ。じいちゃん、全然僕の話聞いてくれないんだもんな…」
実のおじいちゃん公認で、リーシャは野菜スープの特訓、サクヤは、魔法の特訓をする事が決まったーー。