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初心者リーシャに対し、簡単に簡潔に料理の説明や、注文の仕方を説明するイマル。
「なっーー!」
そんな2人を発見したウエイトレス姿のカリンは、ガシャーンっと、持っていたガラスコップを落とした。
「な、な、な!何よ!何であんたがここに来てんのよ!」
リーシャに向かい、大きな声で叫ぶカリン。
「ここはあんたみたいな余所者が来るとこじゃないの!帰ってよ!!」
感情のままに言いたい事を叫ぶカリンに、店内は何の騒ぎだ?と、騒然とした。
「…えっ…と…」
リーシャは、どうすれば場が上手く収まるのかを考え、頭を巡らせた。
(私が帰れば良いのでしょうか?そうすれば、少なくともこれ以上の騒ぎにはならないでしょうし……)
そんな事を考えながらイマルを見ると、イマルは、笑っていた。
「あーあ。やってもーたな」
「ーーーカリン!!!!!!!!!」
「ひっ!」
怒号の声が店内に響き、その声に、呼ばれたカリンが一気に萎縮する。
「お客様に向かって何て口の利き方だー!!!」
背景に炎が見える程、怒り狂うジェラード。
「ち!違う!違うのパパ!これには訳があるの!あの女が!イマルをたぶらかしてるからーー!」
「黙れ!!!何がたぶらかしているだ!!イマル君は自分からリーシャさんとここに来て、仲睦まじく過ごしているんだぞ!どこをどう見たらたぶらかしている様に見える!?どこからどう見ても相思相愛じゃないかー!!」
「ジェラードはん!余計な事まで言わんといて下さい!!」
好き勝手推測混じりの事を言われ、思わずイマルは止めた。
「っぅ!そ、それにそれに!あの女は余所者だもん!きっと村の人達だって!あんな余所者の女、邪魔だと思ってーー!!」
「馬鹿もんがーーー!!!!!」
「ひっ!」
今度は、リーシャのすぐ隣にいるゲンが、カリンに向かい鬼の形相で怒鳴りつけた。
「何が邪魔もんだぁ?!リーシャはこの村に馴染もうと、必死に頑張ってくれてるじゃねーか!!!そんなリーシャを悪く言う奴は、このワシが許さねぇぞ!!!!」
怒り狂うジェラード、ゲンの2人に詰められ、涙を流しながら震えるカリン。
他の客達はそんなやり取りを特に気に止める事も無く、「お、やれやれー」や、「また怒られてんのかー」「おーい。勝手に酒のおかわり貰うぞー」等、好き勝手に言いたい放題、行動している。
「で、リーシャはん何食べる?」
そんな3人を放置し、イマルもリーシャに向かい、鼻歌交じりに再度メニュー表を差し出した。
「あー美味しかったな」
酒場を出ると、辺りはもう真っ暗。
基本街灯は無く、ぽつぽつとある家の明かりと、夜空に浮かぶ星明かりのみ。
「送るわ」
イマルはそう言うと、リーシャの家に向かって歩き出した。
結局あの後、カリンはこんこんとジェラードとゲンに怒られ、泣きながらリーシャに謝罪した。
ジェラードには、リーシャへの謝罪と、イマルの肉のお礼で、とても美味しい料理をご馳走になった。
「……どうして、私をお店に連れて来たのですか?」
イマルは、カリンの性格を理解していた。
イマルの事だから、私をお店に連れて行けば、騒動が起きるであろう事は理解していたはずだ。現に、リーシャを誘った時、彼は悪戯っぽい顔を浮かべていた。
「んー?だってな、なんか悔しいやんか」
「悔しい?ですか?」
意味が分からず、リーシャは聞き返した。
「やられっぱなしなんて癪やろ。嫌な事してくる奴は、やり返してたらえーねん」
「…やり、返す…」
「そ。めっちゃめっちゃ怒られたらえーねん。ま、どーせまた懲りもせずに、暫くしたらまた同じ事しよるやろーけど」
カリンはどうやら、村では有名なトラブルメーカーらしく、何度も問題を起こしては、ジェラードやゲン、マルシェにも怒られたりしているようだ。
「怒ってくれる相手がいるなんて、カリンは恵まれてるんやから、ガンガン怒って貰わんとな」
「……イマルは、私には無い意見をお持ちで、とても興味深いです」
聖女として過ごしていた私は、お城で、蝶よ花よと、大切に大切に育てられて来た。
でも、そんな私を疎ましく思う人達も、勿論、いて、表立って攻撃される事は無いけれど、誰もいない時はずっと無視をされたり、私にだけ、冷めた食事を用意したり、聞こえるように、陰口を叩かれたりーーー。
(私は何も反応しなかった)
王様や王子様、執事に一言口添えすれば、あの人達には罰が与えられ、私の目の前からいなくなり、煩わしい行為から解放されるにも関わらず、誰にも助けを求めず、ただただ、やり過ごした。
(……私は、聖女だったからーー)
聖女は、皆の見本になるべき存在で、国を救うべき、強く、健気で、心優しい存在でいなくてはいけない。




