表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/82

12









「行けるもんなら行ってみぃ」

「っ!酷い…!」

 呆れながら冷たく言い放つイマルに、カリンは目に涙を浮かべた。



「あの」

 そんな2人の間に、リーシャは小さく手を上げ、入った。


「私なら大丈夫ですので、イマルさえよろしければ、カリンを優先してあげて下さい」

「何でや?えーで?こんな事言うて、1人で村の外になんて絶対出ぇへんから」


 幼馴染だけあって、カリンの性格を熟知しているのか、イマルはハッキリと言い切った。

 隣ではその言葉に対して、再度文句をギャーギャー言うカリン。



「私なら、別の日でも大丈夫ですので」

「別の日なんか無いの!イマル以外の!ゲンさんとかと一緒に行けばいーでしょ?!何でイマルを巻き込むのよ!」

「ちょっと黙っときぃ!」


 カリンが口を挟むと何時までも収集がつかないので、とりあえず、黙らせる。


「ほんまにえーんか?」

「はい」

 ニコッと笑顔で答えると、リーシャは2人に頭を下げ、元来た道を、そのまま引き返した。




「やった!勝った!」

「カーリーン!!!ええ加減にせぇよ!!」

 敵認定したリーシャが去った事を手放しで喜ぶカリンに、イマルの特大の雷が落ちた。







 ***





「ぐすぐす」

 魔物を解体しているイマルの横で、座り込み、目を押さえながら泣くカリン。


「嘘泣き止めや」

「嘘泣きじゃないもん!どうしてそんなに冷たくするの?!」

「阿呆か。冷たくもなるわ。毎回毎回……だから友達おらへんねんで」

「いるわよ!馬鹿にしないで!」

 大きな声を出すカリンに、イマルは自分の耳を塞いだ。



「ま、まさかだけど、あの女の事好きなの?!」

 魔物の解体作業は、慣れなければ中々にグロテスクなので、カリンはイマルの方を見ずに、背中越しで尋ねた。


「何なんもお……別に好きや無い」

 解体作業を邪魔されているのが鬱陶しいのか、イマルは適当に返事をした。


「そ、そう」

 イマルの返事に安堵するカリン。

「てか、なら余計よ!これ以上優しくしたら、あの女!絶対イマルの事好きになっちゃうよ?!そうなったら、大変でしょ?!」



 (ーーもう既に告白されてんねんーー)



 と、心の中で返事をする。


「だから!これ以上調子乗らせない為にも!絶対離れた方がいいの!」

「あのなぁ、それこそカリンには関係あらへんやろ。俺の交友関係にいちいち口出しすんの止めてくれるか」

 解体作業が終わり、食べれる部分を荷物に入れると、半分をカリンに手渡し、そのまま、村に戻る為に足を進めた。



「てか、同じ村に住む数少ない同年代やねんから、少しは仲良うしたらどーや?」

「嫌よ、あんな余所者。皆だって、本当は余所者が来た事を嫌がってるに違いないわ」

「そんなん言うてるんカリンだけやろ」

「イマルは人の心が分かって無いの!カリンには分かるの!」

 断固として話を聞き入れないカリンに、イマルはもう何を言っても無駄だと、会話を止めた。







「じゃーありがとイマル!パパにもちゃんと言っとくね!」

 村まで戻って来、上機嫌になったカリンは、笑顔でイマルにお礼を告げた。

「また店にも顔出してよ!オマケするから!」

「はいはい。親父さんによろしくー」

 手を振り、イマルから離れるカリン。


「ーーはぁ。なんか疲れてもーたわ」

 カリンが去ったのを確認して、イマルは大きくため息を吐くと、取ってきた魔物の肉を見た。





 トントン。

 リーシャの家の前まで来ると、そのまま、玄関の扉をノックした。


「リーシャはーん?おりまへんのー?」

 声をかけるも、返答は無い。

 念の為、野菜を育てている庭も見てみたが、リーシャの姿は無かった。


「留守か…」


 迷惑をかけたお詫びにと、肉を渡そうと思って来てみたのだが、誰もいない。

「……余らしても仕方無いし、肉屋にでも持って行くか」

 イマルは、リーシャの家を後にし、肉屋のマルシェの元に向かった。







「あ、イマル!お帰りなさい」


「……ただいまって、何しとるの?」



 肉屋に着くと、そこには何故か、エプロンを着たリーシャの姿が有り、何故か、全身、血塗れだった。


「おや、イマルじゃないかい」

 奥からは、大きな包丁を持ったマルシェが出て来て、イマルを迎えた。

「おばちゃん、何なん?この状況?」

 ケロっとしている様子から見て、本人の血では無い事は分かるが、全身血塗れの意味は分からない。


「ああ。何かお手伝いする事は無いかって聞かれたから、肉の解体を頼んだんだけどね、これまた壊滅的に才能が無くて、この有り様だよ」

 マルシェはケタケタと豪快に笑った。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ