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村娘生活10日目11










 村娘生活10日目ーーー。



 この日、リーシャはイマルと2人で、山菜採りに出掛ける約束をしていた。


「今日はありがとうございます」

 待ち合わせ場所の広場で、リーシャはイマルに頭を下げ、お礼を伝えた。

「えーで。俺もそろそろ山菜欲しかったところやし」

 戦えるイマルは、基本、お肉も山菜も必要な時に村から出て、自分で取りに行く。

 その際、食べ切れないお肉等を肉屋に卸したりして、お金を稼いでいた。


「少しは食べれる山菜とか覚えたんか?」

「いえ、まだ余り……。ゲンさん達に教わりながら、何とか頑張っています」


 ゲンさんとは、村での山菜採りのエキスパート。

 以前リーシャと一緒に山菜採りに行き、恋の駆け引きのワードを教えた相手でもある。

「ゲンさんまだまだ元気やからなぁ」

 山菜採りは、村の外には出るが、あまり遠くには行かず、近場で行う。が、魔物のへの遭遇を危惧し、安全の為、戦える人を1人は必ず連れて行く事になっている。


「ゲンさんは昔、魔物を狩っていたと聞きました」

「もお歳やからな。そろそろ落ち着いて貰わな」

 若い頃はバリバリに斧を振り、魔物を狩っていたらしいが、御歳60歳。

 一線は若い者に任せ、山菜採りの方に移動した。が、戦いの勘はまだ鈍っておらず、魔物が出た際には、率先して前衛に向かうらしい。

 幸運な事に、リーシャは山菜採りではまだ魔物に遭遇しておらず、平和にしているが、いつ、魔物が出るか分からないので、用心に越した事は無い。


「聖女はんのお陰で、大分魔物も落ち着いたさかいなー」


 聖女は、王宮に仕える騎士や魔法使いと共に、魔王を倒し、世界に平和をもたらした。

「それは良かったです」

「ま、それでも魔物はまだいるし、油断したらあきまへんで。絶対!1人で外に出たらあかんで!」

「はい。分かりました」

 リーシャは素直に頷いた。





「ちょっと!イマル!!」



 2人で並んで歩き、そろそろ、村を出る出口に差し掛かったところで、後ろから声が聞こえ、2人は振り返った。




「カリン」

 イマルは、振り返った先にいた人物と面識があるようで、彼女の名前を呼んだ。


 緑の髪にカチューシャを着けた、オレンジの瞳。リーシャ、イマルと同年代に見える17歳の若い女性。


 カリンは、ムスッとした表情のまま、ズケズケとこちらに歩み寄った。

「どこ行くのよ?!」

「どこって、山菜採りやんか」

「何でその女と2人っきりで行くのよ?!」

 ぎゃんぎゃんと大きな声でイマルを責める。


「何言うてんねん。カリンとやって普通に行くやろ」

「!私は……!いいの!幼馴染なんだから!」

「何の理屈やねん、それ」

 怒涛の口数を、イマルは呆れながら受け止めた。


 キッと、矛先を変え、リーシャを睨み付けるカリン。

「何なのあんた…?!」

「えっ…と、初めまして。リーシャ=ルド=マルリレーナと申します。以後、お見知り置きを」

 戸惑いながらも、丁寧に自己紹介する。


「ほら、カリンもちゃんと挨拶しぃ。村の子供でもちゃんとしてる事やで」

 イマルは、睨み付けたままのカリンの頭を軽く叩くと、挨拶を促した。



「……カリン!」

「カリン……よろしくお願いしますね」

 睨み付けながら、名前だけを告げる、不躾な態度を続けてられているが、リーシャは涼しい顔で、笑顔で、手を差し出した。



「カリン」

 中々手を出さないカリンを諌めるようイマルが声をかけると、渋々だが、リーシャと握手を交わした。



「それで、もー邪魔やから帰ってくれへんか?」

「はぁ?!何でそんな事言うの?!カリンの事追い返すの?!酷い!ろくでなし!」

 腕に引っ付いて離れないカリンに、イマルは鬱陶しそうにハッキリと告げるも、聞き入れる様子は無く、大きな声で非難の声を上げた。


「今日、パパにお肉を仕入れて来てってお願いされて、イマルと一緒に行くって言ってあるの!」

「はぁ?!肉?!ガッツリ魔物退治やんか!聞いてへんわ!」

「もおパパと約束しちゃってるの!」

「何でやねん!大体、魔物退治やのに何でカリン連れて行かなあかんねん!ハッキリ言うて足でまといや!!」

 ギャギャーと言い争うを始める2人。

 その隣で、1人、リーシャは違う事に衝撃を受けていた。


 (もしかして……前、私が魔物退治について行ったのは、迷惑だったのですね!!)


 確かに思い返せば、怪訝な表情を浮かべられていた気がする。



「兎に角!今日は行かへん!先約が優先や!」

「酷い!私が魔物に襲われてもいーの?!イマルが一緒に来てくれなかったら、カリン、1人でも行くから!」





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