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「!嫌……われる?!」
突き付けられた言葉に思いっきりショックを受ける。
「嫌われる!」
「……分かりました」
「ホンマに分かったんやろな?」
「とりあえず、好きと口に出さない様に気をつけていきます!」
口には出さないが、好きではいます!と宣言されているようで、納得はいかないが、何を言っても無駄な気がして、イマルは大きなため息を吐き、諦めた。
「もお……とりあえずそれでいってくれ」
「はい、分かりました」
言いたい事を言ってスッキリしたのか、リーシャはそのまま、何事も無かったかのように食事を進めた。
「本当に美味しいです。イマルはご飯を作るのも上手ですね」
何にも無かったような、自然な態度で、話しかける。
(……何か、俺ばっか動揺してるみたいで、ムカつくな)
告白を断ったからと、顔を合わせるのを避けてみたり、もやもや考え事したり。
当の本人は平然としているのに、こっちばかりが気にしているのが、馬鹿らしく感じた。
(もぉええわ。こっちも、何も無かったように振舞ったるねん)
そんなリーシャに、イマルも何も無かった様に振る舞うと心に決めた。
「随分遅くまで邪魔したな」
結局、朝から夕方まで、野菜農園に始まり、部屋の清掃、買い物の初デビュー、遅い遅いお昼ご飯まで一緒に過ごした。
「そんな、私は、一緒に過ごせてとても嬉しーーー」
言いかけて、ピタッと、会話が止まる。
一緒に過ごせて嬉しいは駄目?セーフ?幸せなら良い?一緒かな?お邪魔?お邪魔な訳無いし、お邪魔でした!なんて嘘でも言えないし、嬉しい!一緒に長い時間傍で過ごせて本当に幸せで、嬉しかった!でもこれは駄目?好きって言った事になるの???でも、好きって言わなければOKだよね?
「ーーー嬉しかったです」
頭の中でグルングルン思考を巡らせ、言っても良いと判断された。
(……何や、少しは気にしてんのかいな)
んー。と、考え事をしているリーシャからは、何も気にしていないようには見えなかった。
「……まぁ、しんどいし疲れたし、迷惑かけられたけどーーー別に、リーシャはんの事、嫌ってまへんから」
「え?」
「今は!や!」
イマルは、念押しする様に、強く強調した。
「はい!良かった……とても嬉しいです」
嫌われていない。
そう伝えられ、リーシャは安堵したように、笑顔を浮かべた。
「……ほな、またな」
「はい。楽しみにしています」
挨拶を交わし、イマルはその場を去った。
イマルの姿が見えなくなるまで見送ると、リーシャも、家の中に入った。
「ーーー何よあの女」
そんな2人の様子を、木の影からこっそり覗いていた人物が1人。
強い敵意を持った目で、リーシャの家を、睨み付けたーーー。