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何度も婚約破棄される不幸令嬢の真実

作者: 桜井正宗

 伯爵令嬢アリサ・ヴァン・エルフリートは、美しい容姿と気品ある振る舞いで知られ、多くの求婚者たちから注目されていた。しかし、なぜか彼女の身辺には不幸が絶えず、婚約者たちは次々に彼女を婚約破棄し、捨て去っていった。


 ある日、アリサは庭園でふとした違和感を感じ、疑念が芽生える。


 姉はいつも目を合せないし、部屋に引きこもっている。

 いったい何をしているのだろう――と。


 それに、姉のミーシュがそんな風になってから自身に不幸が降りかかるようになった。

 アリサは自分の不幸な運命に疑問を感じ、真実を探るべく行動に移す。

 身近な存在の中で唯一信頼できるメイドのリリィに相談した。すると、リリィは耳打ちしながら囁いた。



「お嬢様、実はミーシュ様が……」



 その言葉にアリサは驚きと怒りを覚えた。

 まさか姉のミーシュが裏でそんなことをしていたなんて……。


 姉の悪巧みを探るべく、秘密裏に動き始めた。

 長い調査の果て、ついに真実が明らかになる。姉のミーシュが、アリサの婚約者たちに虚偽の情報を流していたのだ。


 その内容は目も当てられないような悪質な内容ばかり。性格がブスだの、実は何人もの貴族と肉体関係をもっているだの……信じられないような情報が流布されていた。

 そして、何通もの手紙で送りつけられていたこともあった。


 激怒したアリサは、父親であるヴァンデルハート伯爵に真実を伝えることに。


「お父様、お姉様はわたくしに嫌がらせをしているんです。どうかお願いします。彼女に厳罰を」


 姉に対する処分を求めるアリサ。


「……やはりか」


 すると、父親自身もミーシュに疑念を抱いていたことが分かった。


「気づかれていたのですね」

「薄々だがな。仕方あるまい……処分を下す」


 正義感の強い伯爵は、苦渋ながらも決断を下した。

 姉は直ぐに呼びだされ、部屋から出てきた。


「なんでしょう、お父様」

「ミーシュ、お前は順風満帆な妹に嫉妬し、人生をめちゃくちゃにした。その罪はあまりに重すぎる。私の言っている意味が分かるな……?」


「……ッ!」


「その顔は図星なんだな」


 ミーシュは自分のしている悪事がバレたと悟ったようだった。

 けれども、最後まで悪あがきの言い訳を続けた。


「ち、違うんです! アリサを陥れようだなんて……そんな酷いことをする姉がいるわけないじゃないですか! ね、ねえ……アリサ!」


 涙目になってミーシュは、アリサに助けを求める。そんな都合の良い話はないとアリサはただただ怒りと悲しみに包まれていた。


「……これが証拠の手紙です」


 メイドのリリィに頼み、貴族たちから手紙を預かっていた。

 テーブルの上に次々に並べられるミーシュ直筆の手紙。伯爵はその手紙に目を通し、姉の文字であると理解した。



「ミーシュ、お前を追放する」

「そ、そんな! お父様! わたしは実の娘ですよ!?」

「お前のやったことは我が家の品位を貶めたも同然。そのような者を置いてはおけない」


 ほどなくして姉ミーシュは領土から追放され、家族の前から姿を消すことになった。



 しかし、幸福が訪れることなく終わることはなかった。


 ――ある日、アリサのもとに謎の小包が送られてきた。きっとお菓子か何かだろうと開封しようとすると、庭に一人の青年が姿を現した。彼の名はルーク・ダークホーン。

 辺境の騎士でありながら高名な貴族である。



「待ってくれ。それはミーシュの仕掛けた毒だ!」



 アリサは、驚きと共に小包を庭に放り投げた。

 その瞬間、その中身が融解して“猛毒”であることが判明する。


「こ、これは……お菓子ではなかったのですね」

「間に合って良かったよ」


 ルークの活躍により、アリサは難を逃れた。感謝とともにアリサの心には、ルークへの感情が芽生え始める。



「ありがとうございます。ルーク様……ですよね」


「ああ、少し前にお付き合いをしたよね。僕は辺境の出だから、あまり会えなくて……とにかく間に合って良かった。ミーシュの手紙がどうしても信じられなくてね。それに、滅多にない猛毒草の取引情報を耳にして、もしやと思ったんだ」



 ルークは、アリサの婚約者の一人だった。

 ミーシュの手紙がルークの両親の目に留まり、強制的に婚約破棄されてしまった。けれど、ルークだけは違った。

 アリサが手紙に書かれていたようなことをする人間でないと理解していた。

 それと同時に、猛毒草の取引も知った。

 購入者がミーシュだと知るや、ルークは急いで馬を走らせた。

 そうして今、なんとかミーシュの罠を食い止めることに成功したのだった。



「……信じて下さったのですね」

「ああ。君と婚約破棄するなんてありえないよ。両親に反対されようともね」

「嬉しい……!」

「こちらこそ、君に出会て良かった」


 ルークもまた、アリサの美しさと気品に引かれていた。

 これまでずっと忘れることなく、思いを募らせていたのだ。

 ついに互いに心を通わせることとなった。やがて、アリサとルークはお互いに深い愛情を抱き、婚約を交わすこととなった。


 二人は手を繋ぎ、未来への扉を開く。姉の陰謀を乗り越え、アリサとルークの愛は強固なものとなり、幸せな未来へと続いていった。

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