51 お飾りの妻は卒業します!
私の誕生日から、数日後、サマンサから手紙が送られてきた。
彼女からの手紙には、もう思い出したくないかも知れないけれど、という前置きのあとに、ロバートがどうなったかということが書かれていた。
あの日捕まったロバートは留置場に入れられ、今は刑が確定するのを待っているところらしい。
サマンサが聞いた噂では、一般的な事例よりも重い罰になるのではないかと言われているとのことだった。
公爵家に不法侵入自体も重い罪だけれど、リアムのことだから、命は奪わないまでも、私の前に二度と現れないようにさせるんでしょうね。
命を奪ったりはしないでしょうけれど、極寒の地か灼熱の地に送らせて労役といったところかしら。
なぜ、ロバートの情報がサマンサからの情報なのかというと、リアムも含め、屋敷の人が私が嫌なことを思い出してはいけないと、過保護になって、まったく教えてくれないから。
お父様達がどうなったかもわからない。
森の中に暮らしているみたいだけど、リアムの援助がなくなったから、食べる物もないだろうし、まさか、飢え死にとかしてないわよね?
「アイリス、ドレスを持ってきたってさ」
寝室のベッドに寝転んでサマンサからの手紙を読んでいると、リアムが中に入ってきて、身を起こした私の額にキスをした。
「ゆっくりしている時にごめん」
「かまいません。予定してましたし」
「何着も持ってきたって言ってたけど、とりあえず、全部着るよね?」
「とりあえず全部ってなんですか! 嫌ですよ。着るとしても、2着か3着です」
「せっかくだし、全部着て見せてよ」
「疲れるから嫌です!」
きっぱりと答えると、リアムは少し残念そうな顔をした。
今日はウエディングドレスの試着日だ。
以前、お義母さまにお願いされて着たこともあるのだけれど、今回はリアムに選んでもらって、大勢は呼ばないけれど、結婚式を挙げることにした。
「じゃあ、全部買って何日かで着ていったらどうかな?」
「お金がもったいないから駄目です!」
「じゃあ、今度、デートしてくれる?」
「じゃあの意味がわかりませんが、デートなら良いですよ」
頷くと、リアムは嬉しそうに笑って、私の手を取って歩き出した。
もしかしたら、リアムの心が変わって、いつかまた、お飾りの妻になる日が来るかもしれない。
そうなったとしても、私の生活は変わることはないだろうし、きっと、幸せなお飾りの妻になれるでしょう。
……でもやっぱり、リアムを好きになってしまった今となると、お飾りの妻はやっぱり寂しいわ。
だから、リアムが私を好きでいてくれるように、私も頑張らないとね。
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