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41 契約条件の変更?

 トーイの計らいにより、次の日からの私は食事は作るけれど、毎日ではなく、少しずつリアムと食事を一緒にとることを心掛けるようにした。


 話を聞いていたと言ってはいけないので「やっぱりリアムと食べたいです」と伝えたら、彼は嬉しそうな顔で頷いてくれて、それ以上、詳しくは聞いてこなかった。


 そして、その数日後、夕食を終えたあと、私が席を立とうとすると引き止められた。


「アイリス、ちょっといいかな?」

「何でしょうか?」


 長くなりそうなので、座り直してから聞くと、リアムは微笑んでから言う。


「アイリス、君の誕生日パーティーを開きたいと思うんだけど」

「私のですか?」

「うん。必要なことでもあるしね」

「ありがとうございます。私自身はパーティーは必要ないと思っていますが、社交界的にはそうもいかないですよね」

「そうなんだ。君は公爵夫人だから、何もしないわけにはいかないんだ。不仲だと思われても困るしさ」

「それは理解できます。付き合いというものがありますもの」


 私が頷くと、ホッとした様な顔をしてリアムが微笑んだ。


「そう言ってもらえると助かるよ」

「ただ、私の誕生日をさすがに両親は覚えていると思いますので、招待しないと何を言い出すかわかりませんし、他の方がいらっしゃる時とは、別の機会に呼んでもらうことは可能でしょうか」

「パーティーを身内とそうでないものとで、2回やるという事かな?」

「はい。私の家族のことで、これ以上、リアムに迷惑かけたくなくて……。2回する事も迷惑かもしれませんが、お客様に何かしでかしても困るんです」 


 両親やココルにお願いしても、どうせ聞いてもらえない。


 それなら、悪戯する相手が私だけにしたほうが良い。


「身内だけのものに関しては、ホームパーティーのようなものでかまいませんから」

「それは構わないけど、それよりもいいのかな。アイリスは家族に会いたくないだろ?」

 

 リアムが心配げな顔で私を見るので、首を縦に振ってから答える。


「会いたいわけではないです。ただ、呼ばなければ家族は何を言い出すかわかりませんから」


 今のところ、リアムのおかげで両親ともココルとも、そして、ロバートとも接触しないで済んでいる。


 ココル達が近くまで来ていたことには驚いたけれど、リアムが追い返してくれたので、両親には会わずに済んだ。


 だけどそれは、リアムが私を守ってくれたからで、自分の力で家族との縁を断ち切れたわけではない。


「アイリスにとっては、ココル嬢達は家族だったんだろ?」

「はい。でも、それは昔のことです。私の今の家族は、この屋敷の皆さんですから」


 笑顔で答えると、リアムが意地悪な顔をして聞いてくる


「僕は、どんな立ち位置?」

「えっ!? リアムはその……!」

「その?」

「お飾りとはいえ、私はリアムの妻ですから。リアムが思っていなくても、私は家族だと思ってます」

「そうか」


 リアムは免疫がなかったら鼻血でも出してしまいそうな素敵なスマイルを見せてくれたあと、言葉を続ける。


「アイリス、本当にそう思ってくれているのなら、お願いがあるんだけど」

「お願いですか?」

「うん……」

「どんなことでしょう?」


 リアムが言いにくそうにしているので促してみると、彼は私から視線をそらしたままで言う。


「契約条件を変更したいって言ったら迷惑かな?」

「えっ!?」

「あ、えーと、やっぱり今の話は忘れてくれ。あの、契約条件の変更といっても、君の衣食住を保証するとかいう内容は変わらないから、安心して欲しい」

「どんなことを変更したいんですか?」


 気になるので聞いてみると、リアムは観念したように口を開く。


「その、変更したいのは、僕の心境の変化だけだし、君に押し付けるわけにはいかないから」

「……もしかして、好きな人が出来た、とか、ですか?」

「……!」


 恐る恐る聞いてみると、リアムが慌てた様な表情をしたあと、珍しく顔を赤くした。


 嘘でしょ……。

 ということは、私はもう、いらなくなるの?

 

「アイリス、さっきも言ったけど、気にしなくていいから」

「気にします! でも、今すぐは聞きたくありません……」


 リアムの口から、他に好きな人が出来たと言われたら、今ならショックで泣いてしまいそうだもの。


 心の準備をしないと……。  


「わかった。君が聞きたくなったら声をかけてほしい。もし、その話を聞いて、君が迷惑なら、今の契約条件のままでいい。だけど、迷惑じゃなければ契約の条件を変更してもいいだろうか」

「……わかりました」


 私が嫌だと言えば、今の契約条件のままでいいのだから、私にとって、不利になることはないわよね?


 心は傷つくかもしれないけれど、それはしょうがないわ。


 そう思って、悲しい気持ちを振り払い、まずは、お客様を呼んで開くほうのパーティの内容を決める事にしたのだった。

 



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