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36 直接対決①

「色々とありましたけれど、アイリス様はとてもお優しい方だとお聞きしておりますので、今日の無礼はお許しくださいますよね?」


 席に座ったのはいいものの沈黙が続き、私も特に口を開かなかったからか、プリステッド公爵令嬢が話しかけてきたので対応する。


「許さないことも優しさかとは思いますが、今回については反省していらっしゃるなら許しますわ。もちろん、主人には連絡させていただきますけれど」

「……あの令嬢達に罰を与えるおつもりですか?」


 訝しげな顔をしたプリステッド公爵令嬢に微笑む。


「いいえ。あのお二人の処遇に関してはプリステッド公爵令嬢が考えてくださるのでしょう? 私が主人に話すことは別の話ですわ」

「では、何をお話されるおつもりなのです?」


 どこか不安げな表情のプリステッド公爵令嬢に向かって笑みを絶やさぬまま答える。


「今日起こったお話をさせていただくつもりですわ。時間を間違えたと言われたり、違う場所に案内されたり、こちらが嫌がらせだと受けとってもおかしくないことをされておられますからね?」

「嫌がらせだなんて!」


 プリステッド公爵令嬢が必死の形相で叫び、残っている二人の令嬢に助けを求める。


「お聞きになりましたか!? わたくしが嫌がらせをしたと、アイリス様が仰りましたわよね!?」

「え……、えっと……」


 尋ねられた令嬢達は明らかに返答に困っていた。


 プリステッド公爵令嬢を助けたとしても、都合が悪くなれば見捨てられてしまうのなら、どちらについたほうが得なのかは、考えなくてもわかることだと思われる。


「嫌がらせだと受け取ってもおかしくない、と言われただけで、嫌がらせとは言っておられないような……」


 令嬢の裏切りに、プリステッド公爵令嬢は顔を真っ赤にして叫ぶ。


「あなた! わたくしが間違ったことを言っていると仰るの!?」

「い、いえ、その、間違ったと言っているわけではっ!」


 令嬢が泣き出しそうになってしまったので、助けに入ることにする。


「プリステッド公爵令嬢、彼女の言うとおりですわ。私はプリステッド公爵令嬢に嫌がらせをされただなんて言葉にしてはおりません。嫌がらせだと受け取ってもおかしくない、とお伝えしただけですわ」


 そこで言葉を区切り、にっこり微笑んで尋ねる。


「それとも、やはり嫌がらせでしたの?」

「ち、違いますわ!」

「それなら、そこまで必死になる必要はありまして?」

「わ、わたくしの名誉が……っ!」

「プリステッド公爵令嬢は名誉を気にされておられるようですが、他の皆様は知らないことを、ここで口にしてしまってもよろしいのでしょうか? そちらの方が名誉を傷つける話だと思いますが」


 リアム達が調べてくれた限りでは、プリステッド公爵令嬢が警察に事情聴取をされたことは、多くの貴族には伝わっていない。

 知っているのは他の公爵家や王家、警察関係者くらいなので、ここにいる令嬢達もその親ももちろん、知っているわけがない。


 それが知られてしまうと、プリステッド公爵家の権力が落ちるはずなので、プリステッド公爵令嬢だって知られたくないはずだった。


「な、わたくしにはっ、別にやましい事などっ!」

「そうですか。では、お話させていただきますわね」

「アイリス様っ!」


 プリステッド公爵令嬢は顔を真っ赤にしたまま立ち上がると、私を睨みつける。


「あら、どうかされましたか? やましいことがないようでしたら、そこまでお怒りになる必要はないのでは?」

「失礼な言い方をあなたがしてくるからですわ!」


 好戦的な気持ちが沸き上がってくるのをなんとかこらえて、冷静に対応する。


「気に障るようなことを言ってしまったのでしたら謝りますわ。ただ、何が気に障ってしまったのか教えていただけませんでしょうか。二度と同じことをしたくはありませんので」

「それは、その、わたくしが、まるで、嫌がらせをしたみたいに!」

「実際は嫌がらせではなかったのでしょう?」

「それは……、そうですがっ」


 プリステッド公爵令嬢は必死に言い返す言葉を探しているようだった。

 

 他の令嬢二人の方に目をやると、二人共、泣き出しそうな顔をしているので声をかける。


「お二人共、気分が優れないようですわね。今日はお帰りになったらいかがでしょう?」

「で、ですが……」


 令嬢達が困った顔でプリステッド公爵令嬢のほうを見た。


 しょうがないわね。

 帰りやすいようにしてあげましょう。


「プリステッド公爵令嬢、ここにいるお二方はあなたのお友達なのでしょう? 気分が優れないと言ってらっしゃる友人を帰らせないだなんてことはありませんわよね?」

「も、もちろんですわっ」


 プリステッド公爵令嬢は頷くと、二人に今日は帰るように促した。


 そして、ガゼボの中には、私とプリステッド公爵令嬢だけが残った。


 さあ、ここからが本番だわ。

 予想外の展開だけれど、打たれ強さには自信はある。

 あとは、リアムやお義父様やお義母様の名誉を守るためにも、どれだけ冷静に対応できるかだわ。


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