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例え世界が終焉を迎えても、夏祭りには絶対に行く

掲載日:2022/12/31

「なろうラジオ大賞4」投稿作品です。

 夏休みに入っても私は学校へ通う。

 朝、決まった時間。


 母は勉強熱心だと褒めてくれるが違う。勉強なら家でもできる。

 私は不純な動機で突き動かされている。


 いつもの通学路とは違い、少し遠回りした河川敷を通っている。

 朝でも日差しはきついけど、河川敷のそよ風は心地よい。


 来た。背後から駆ける音が近づく。


 「篠原、お早う。今日も学校か?」


 「うん、お早う。朝練、頑張って」


 成瀬と挨拶を交わすだけに生きている。


 風のように彼は駆けて行った。

 顔が熱い。誰に見られる訳でもないのに俯いてしまう。

 そよ風がありがたい。


 前から駆ける音が近づく。そして目の前で止まった。

 成瀬が引き返してきた?


 「篠原、あのさ」


 成瀬は手を後ろ頭に回して、少し斜め下を見ていた。

 額から首筋から、汗が流れている。 

 

 「ん・・・何?」


 やばい、顔が熱い。いやこれは暑さのせいだから。


 「今度のさ、日曜日・・・、えと」


 「日曜日?」


 成瀬の言葉を待っている。心臓の音がうるさい。


 「その、暇なら、夏祭り・・・、一緒に行かね? 俺と!」


 !!!


 「・・・うん、行く」


 心臓が呼吸が思考がどうにかなりそうな中で、言葉を絞り出した。

 伝わっただろうか、聞こえただろうか。


 「わかった。ありがと。直接言いたかったから。部活終わったらまた連絡する」


 また風のように彼は駆けて行った。熱を残して。

 

 図書室で本を広げているが、1ページも進んでいない。

 頭の中は朝のシーンが繰り返し再生されている。


 一緒に行かね? うん、行く。

 一緒に行かね? うん、行く。


 結局、昼前には家に帰ることにした。


 リビングの母は、ニュースを見ながら愚痴っている。

 他国の戦争とか、増税がどうとか、値上げラッシュで家計が大変とか、

 『世界が終焉に向かっている』というのが、近頃の母の口癖だ。


 「お母さん、やっぱ浴衣いる」


 「は? 昨日要らないって言ったばっかじゃん・・・

  あ! わかった。すぐ買いに行こう!でもちょっと待って。パパに連絡するから!」


 なんでお父さんに?


 『パパ、急いで帰ってきて。車要るから。あ?抜けてこい!てか車だけ帰ってこい!』


 テレビが、どこかに飛翔体が落ちたと伝えている。

 電話を終えた母がこちらを向いた。


 「飛翔体?世界が終焉に向かっていようが関係ない!娘の晴れ舞台だ」


 「う、うん」


 母に何故かバレていて、少々大げさになってるみたいだけれども、

 成瀬が誘ってくれた夏祭りに、私は人生最大の勇気を出す!


お読み頂きありがとうございました。評価、ご感想を頂けましたら幸いです。


図書室での友達との会話シーン、家での親子のシーン、父親の娘、妻に対する行動なども考えていたのですが、入りませんでした。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ニュースでどんなに不安になる報道がされていても、 それでも自分の生活は続けなければなりませんからね…。 主人公の勇気が報われることを祈ります。
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