表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

初恋 無茶な変化

 ―――あれはまさしく一目惚れだった。


 転校生としてやってきた彼女は、瞬く間に学校中で話題になった。

 百人に聞けば百人が美人だと答えるような整った顔立ち、腰のあたりまでまっすぐに伸びた黒髪。それらとは対照的に、多くの男性が庇護欲を掻き立てられるだろう小柄な体型。

 おまけに親は世界長者番付に載るような資産家だ、なんて噂も出てきて転校してきて一週間もしないうちに校内で彼女のことを知らない人は居なくなった。

 

 そんな彼女だから、告白をする人は数知れず。しかし残念なことに、告白した人の数だけの玉砕した人がいた。

 どれだけイケメンでも、どれだけスポーツが上手くても、どれだけ勉強ができても、彼女のお眼鏡には適わないらしい。


 幸運にも、俺は隣の席だったから毎日話しかけた。

「――さんは、何か委員会入るの?」

 委員会なんて入るつもりなかったけど、彼女が入るといったから同じ委員会に入った。

「――さん、吹奏楽部とか興味ない?」

 少しでも接点を増やしたかったから、部活の勧誘もした。


 俺は彼女に好かれたくて、自分自身を作り変えた。

 元々暗い性格ではなかったけど、明るいほうが一緒にいて楽しいかと思って、それまで以上に明るく振る舞った。

 運動なんかしない細身の体型だったから、少しでも男らしくなりたくて、毎日筋トレを始めた。

 彼女は勉強ができたから、追いつきたくて毎日勉強した。

「――君は、眼鏡よりコンタクトのほうが似合いそうだね」

 彼女に言われたから、親に頼んでコンタクトレンズを買ってもらった。


「――、お前最近別人みたいだよな」

 毎日無理して頑張ったこともあって、友達にそんなことを言われる位には自分を変えることができた。

 その甲斐あってか一、二か月経ったころには、

「二人って、付き合ってるの?」

なんて質問を、知らない人からされることも珍しくなかった。


 ここまでは俺の予定通りだった。

 俺はイケメンじゃないし、運動もできないし、勉強だって人並程度だ。

 そんな俺でも、ちょっと無理をすれば別人のようになれるし、時間をかければ学校中の憧れである彼女と仲良くなることだってできる。

 この調子なら、彼女と付き合ってハッピーエンドになることだって可能だと思っていた。

 実際、その見立てが大きく外れていたわけではない。

 

 たった一つだけ、知らないことがあっただけ。


 人の心があんなにも脆いもので、ある日突然壊れてしまうものだってことを。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ