1話 もしかして、転生?
意識が戻った。
息がちゃんとできるし身体も痛くない...
此処は何処だろう...病院にいるのかな?
あの事件で生き延びて、病院に搬送され、意識が戻るまでベッドで寝てた...にしては撃たれた所に痛みは感じない。麻酔が効いてるのかと思い込み、一番最初に撃たれた腹部を触ってみる。包帯で巻かれてるわけではない...私は完治するまでずっと寝てたのか?あれほどの撃たれたのだから無理でもないと自分に言い聞かせた。
(...ん?)
撃たれたのなら傷跡があるだろうと思ったが普通につるつるのお肌だった。肌の手入れは、貧乏なりに欠かさずやってたけどそれに増してつるつるのすべすべだ。
沢山寝たから肌が綺麗になった...だけじゃこの状況を説明しきれないな
ずっと自分のお腹を撫でてて少し異変に気付く。
私のお腹ぽっこり膨らんでない?
やっと買えた中古のドレス。サイズが一回り小さかったから一生懸命ダイエットに励んでたのにその努力が...
(はぁ...)
それにしても、目の前は真っ暗だ。
目を開いてるはずなのに何も見えない。
本当に開いてるか自分の手で確認するけど、やっぱり開いてる。
今は深夜なのかな?
目を開けても目を閉じても真っ暗なのは何も変わらないし、開き続けると乾燥するだけ。どうせ開いても閉じても何も変わらないならドライアイになるかならないか程度の違いだ
目をずっと閉じてよう。
(でもどうして、何も見えないんだろう?)
そして何も聞こえない
「あー」と声を出しても、喉から声が出る感覚はするがぼわーっと曇った感じが耳に残るだけ。
両手で何度もベッドを叩くけど何も聞こえなかった。
しばらくしたら治るのかな?
でももう見るのは怖い...聴くのが怖い...あの事件を思い出しそうで怖い。
思い返すだけで震えて泣き始めるけど自分の泣き声は聞こえず、頬まで零れ落ちる涙を感じ取って自分がちゃんと泣いてるのだと解る。
暫くするとお花の香りが近づいてきた。
誰かが来たんだ。あんなに強くベッドを叩いたし泣いたんだ。
誰かが聞こえて様子を見に来たんだろう。
見えないから顔は分からないし声も聞こえることはない。
唯一分かるのは近付いてきた人はお花のいい香りがするだけ。
ん?
お花の匂いのする人が私を簡単に持ち上げられるなんて...
確かにダイエットはしてたけど私はそんなに簡単に持ち上げられる程の重さじゃないよ?
(いや...待てよ)
つるつるなお肌にぽっこりしたお腹
そして簡単に持ち上げられる私
もしかして私...転生した?






