プロローグ
ちょっと休憩してた時に書いたものです。
気まぐれ投稿なので次話は未定ですが、良ければどうぞ読んでいってください!
一人天井に向かって笑い狂う男。
取り乱し、笑い続ける彼に私を含む銀行に居た全ての視線が集まった。
そして彼はこう言い放つ
「みんな死んでしまえ」と
戦争ゲームでよく見るマシンガンみたいな物を持つその男。
銃規制のある日本でどうやって手に入れたのか。ただのレプリカだと、宥めようとした青年に発砲されるまでの愚問だった。
ここは銀行、でもお金を強奪する訳ではなく、みんな死ねと...
疑問が恐怖へと変わるにはそう時間が掛からなかった。
そしてその思考と同時に私、平野美咲は今此処が自分の終焉だと察した。
乱発し始める男、そして目の前で撃たれる人々
一度目の瞬きで親切にしてくれたおばさんが倒れ、
二度目の瞬きで母親を待ってた小さな兄妹も兄が先に倒れ、妹が泣き叫ぶ。
三度目の瞬きでその妹が床に倒れ落ちた。
倒れた人は皆真っ赤に染まって、その赤い液体が床を支配する。
「嫌だ...こんなの...見たくない...」
この光景が目に焼き付き、恐怖と言うには生やさしい感情が私の全てを支配した。
そのせいで固まった足が動くことがなく、ただ呆然と今の現状に立ち尽くす事しか出来なかった。
そして私の腹部にもその真っ赤な液体が漏れてきた。
身体が動けるようになったのは、漏れ出た場所から激痛を感じた時だった。
(...痛い、だけど此処にずっと居ちゃ駄目...こんな光景見たくない...)
腰が抜け、痛みに耐えながらもテーブルの下になんとか這い付き、身を縮みこんだ。
手で傷口を押さえ込んだけど赤い液体は一向に止まらず、指の間から流れ出る。着てた分厚いコートにまで沁み込むドロドロな液体。とても生々しく吐き気の出る香りが漂う。
(この量...これ全部...私の血なの?...怖い...痛い...見たくない...)
何も見たくなくて目を瞑った。すると音がはっきりと聞こえる様になった
子供の悲鳴に似た泣き声
命乞いをしようとする男性の声
それでも続く銃の発砲音
その混じりに男の笑い声も聞こえた
「嫌だ...こんなの...聞きたくないよ...」
悲鳴が聞こえる
泣き声が聞こえる
笑い声が聞こえる
そして近づいてくる乱発する銃の音
「もう嫌だ...誰か...助けて...」
(...助けて?)
咄嗟に出た自分の言葉を疑った
私を助けてくれる人は居たのか?
頼れる人は居たのか?
いや、居ない
誰も居なかった
私の人生はずっと一人だった
両親が生まれた時から居なく、児童養護施設で暮らしてた毎日。
やっとの思いで入学出来た高校もクラスに馴染めず、クラスメイトの話題にもついていけなかった。お金の余裕も無く、バイトで何とか稼いでたから放課後に楽しく食べ歩きする子たちが羨ましかった。
卒業して、やっと私の居場所を見つけたと思ったらこんな目に合うなんて...
「どう...し、て」
どうして私はこんな目に遭わなきゃいけないの?
どうしていつも私なの?
ずっと不幸が続いて幸せと思ったことは一つも無かった
もう嫌だ
何も見たくない
何も聞きたくない
何も思い出したくもない
でも恐怖は消えず、呼吸もしづらくなった
(息が...出来ない...寒いよ...)
そしてついにその男が私の目の前に立った。
テーブルの下で縮こまってた私の逃げ場を塞ぎ、銃を目の前に突き付ける。
(あぁ、もう終わりだ。)
発砲音に体中の痛み、笑い続ける男。
意識が遠のく事もなく、痛みが消えることもなく、笑い声と銃声が混じりあい、響き続ける。
ずっと、ずっと
あぁ、この地獄絵図が見えなかったら
恐怖と狂いの声を聞けなかったら
どれだけ楽だったんだろうか。
そしてやっと私の意識は途切れた。