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物々交換のススメ

==========<めりるどん視点>===========

 漁村と物々交換をしたことを踏まえて、鉈が欲しい4人は村人が欲しがりそうなものと、自分たちで作れそうなものについて再度話し合った。


 仕切屋のももちゃんが何時もの様に口火を切る。

「ごんさんに、罠を仕掛けてもらうのは続けてもらって、私たちも川に罠を毎日仕掛けることにしましょう。それとは別にこの辺りで収穫できるものと、私たちが作れるものとその材料の調達を考えてみようよ」


 ごんさんが控えめなトーンで、「それなら、探索組と製作組に分けて行動するのはどうかなぁ」と提案した。


 ナイフを交換出来た興奮からか、未だテンションが高いももちゃんが顔をニヤけさせてごんさんの案に乗っかる。

「いいねいいね。じゃあ、みんなで何が作れるかというアイデアと、何を実際に作ったことがあるかを白状しましょう!じゃあ、言い出しっぺの私からね。作れるんじゃないかなと思うのは、鍋が手に入れば塩ね。もちろん、漁村でも塩を作ったり、使ったりしてるかもしれないけど、これは私たち自身の食卓に彩りを添える為に必要なので、交換云々の前に自分たちのために作りたいなぁ。しかも、ここには、これだけ木がたくさんあるので、海水を炊くのに燃料は困らないし、少し多めに作って村へ持って行くのも一つの手かなと思う。後、私が作ったことがあるのは蔦の買い物籠。一種類だけで、それも一回しか作ったことないけど、大丈夫、ぼんやり作り方を覚えているので、まだ作れると思う」


「そっか、ももちゃんは買い物籠を作れるのね。私は油さえあれば灰もあることだし石鹸が作れるよ」

 実際に昔結構凝った石鹸とか作ってたんだよね。

「お肉焼く前に脂身を除けてラードにしたら私たちの食卓でも揚げ物も作れるよね。今は、素揚げしかできないけどね」とついつい苦笑いが出ちゃったけど、そろそろ揚げ物も食べたいんだよね。つづけて、「ただ、ラードは作ったことはないんだ。作り方は昔TVで紹介してたのをぼんやり覚えてるから、失敗上等でよければチャレンジしてみる価値はあると思うよ」と締めくくった。


「流石めりるどんだぁ。いいねいいね。これで、私たちの水浴びの時も石鹸で体洗えるし、一石二鳥じゃない?じゃあ、今度は男性陣の意見を聞きたいなぁ」


 話を振られて、ごんさんが自信なさそうに「俺は今まで通り罠で動物を獲って解体するから、その時とれた皮で何かできないかなとは思ってる。ただ皮で何かを作ったことがないから、まずは、できるだけ綺麗に解体して、未加工の皮を村に持って行ったらどうかと思う」と提案する。


「おおおおーーー!」と三人から歓声が上がった。

「目からウロコだね。無理やり加工しなくても素材として交換できそうなものもあるねぇ~」とごんさんに大賛成だ。そしてそのままみぃ君の方を向き、暗にみぃ君に発言を促してみた。


「わては、食育とかの講師をやったり、政治家のインタビューをしたり、家でもよく料理を作ったりしてたから、そういう事はできるんやけど、ここで何ができるかまだアイデアが湧かへんなぁ。ただ、今までコツコツ蔦と闘ってきたから、ももちゃんが蔦で籠を編むなら、いろんな蔦を採って来ようと思う。そやから、どちらかちゅうと探索組になるのかなぁ」


「おおおお!みぃ君、それとってもありがたい。色の違う細目の蔦があったら、できるだけ持って帰って欲しいです」とももちゃん。


 一方、ラードや塩を作るのは鍋がいるのでいったん脇に置いておいて、とりあえずは皮を綺麗に剥ぎ取り、買い物籠を作ろうということになった。


 まずはもともと切ってあった赤い蔦で、買い物籠を1つ作ることにした。

「ももちゃん、私にも作り方を教えて」と言うと、ももちゃんはにっこり笑って承諾してくれたので、二人並んで作る事にした。


 その間みぃ君とごんさんはナイフを持っていろんな蔦やその他の植物を採りに川の対岸へ向かった。


 蔦を編むには、蔦を水に10分以上浸け柔らかくして編むらしい。鍋がない現状では、川に浸けるしかないが、流されないように、比較的大きな石で囲って、蔦そのものも一部大きな石で上から押さえる事にした。


 柔らかくなった蔦を太いもの、中くらいのも、細い物に分け、それぞれ取っ手になる部分、籠の骨組みになる部分、編みこむ部分として選別してから編みこむ。

 2時間くらい掛けて、取っ手が一つの丸っこい素朴な感じの買い物籠をそれぞれ一つづつ仕上げた。

 籠を横から見たら上下逆さまの扇の形だ。


「おおお!これかわいいね。私が欲しいくらいだよ。取手と籠の接続部分?そこにひし形の模様があるのがおしゃれだよね」と自然に口から感想が出るくらいには可愛いデザインだった。


「このひし形の模様は、おしゃれでもあるんだけど、籠と取手の接続を強化するための物でもあるんだぁ。これ、村の人、よろこんでくれるかなぁ?」と心配するももちゃんに、本当にかわいいから大丈夫と太鼓判を押してみた。


 そうこうする内に、みぃ君とごんさんが黄色と黒の蔦と、フルーツ、細い竹の様なものを持って帰って来た。


「おおお!こんなにいろんな色の蔦があったんだ。綺麗な模様の買い物籠が編めるね」とももちゃん。


 私たち二人の前に置いてある2つの赤い買い物籠を見て、みぃ君が破顔した。

「お!これ意外とええやん。丸っこくってかわいいね。なんかカントリーって感じや」


「でしょ?私もかわいいから大丈夫って言ったんだけどね、ももちゃんが、これ、ちゃんと交換してもらえるか不安だって言うのよ」


「じゃあ、とりあえず後2つくらいこの新しい蔦で作って、明日皮や動物と一緒に持って行こう。今日の3匹と多分明日2匹は獲れると思うから5匹になるしね」とごんさんの罠が必ず成功し、獲物も複数ゲットできると信じて疑わないみぃ君。


 それほどごんさんの罠は魚を餌にしてからは毎日成功しており、毎日お肉が食べれることを私たちは疑っていない。

 これは日頃の感謝も込めて、ごんさんの目を見て、ちゃんとお礼を言わないとね。

「それにしてもごんさんすごいねぇ。本当に、ありがたいよ。毎日2匹は捕まえるなんて、こっちの狩人でも至難の業じゃないの?」


 真正面から感謝されて、少し照れたごんさんは顔だけじゃなく、少し伸びて来た頭髪部まで薄っすら赤くなった。 結構初心?

「多分、ここら辺の動物は罠を知らないんだと思う。今まで誰にも罠を仕掛けられたことがないから、警戒心がないんだと思うよ」


「どっちにしてもごんさんが動物を捕まえてくれるから、物々交換に困らないのでありがたいよ」とももちゃんがみんなを代表してごんさんに感謝した。



 翌日、動物は3匹取れたので、1匹は自分たちの食糧とすることにした。

 もし、籠でも物々交換してもらえるなら、鍋も手に入る可能性があるので、塩や石鹸が作れる。

 石鹸づくりに備えて、解体する時に脂を横に除けてバナナの葉に包んで小屋の中に格納した。


 4人が村に着くと、また大人数が迎え出てくれた。

 今回も対応してくれるのは、例の老人だ。


 4人が運んできたものが前回より多いので、ニコニコ顔でついて来いというジェスチャーをする。

 老人の案内に従って移動する間、買い物籠を見た村の女性たちがキャピキャピと高い興奮した声で話しながら4人を囲む様についてくる。


 この前と同じ家の前に来た。

 今回は2度目の訪問ということもあり、もっと関係を深めたいので、自己紹介をすることにした。


 ももちゃんが指一本ではなく(地球でも指一本で人を指すのを嫌う国があるので)、5本の指を揃えた手を自分の胸に向けて「もも」と自己紹介をする。ゆっくり2回「もも」と繰り返す。

 そして、私を指して「めりる」と2回繰り返す。みぃ君とごんさんでも同じことを行い、最後に老人の方に手を向けて老人が発言をするのを期待している表情を浮かべる。


 この世界で使う名前だが、本名ではなくお互いのアバターの名前をそのまま使う事について事前に4人は話し合っていた。ここ数年、コミュでほぼ毎日の様に顔(?)を合わせ、お互いをアバターの名前で呼んでいたのだ、本名より呼びやすいくらいだ。


 老人は自分の胸を指しながら「モリンタ」と自己紹介してくれた。

 これでお互いの名前が分かったので、少し距離が縮まった気がした。


 ももちゃんはもう一度にっこり笑って、モリンタの家から一度外に出て、今回交換して欲しいものを素早く土の上に描いていく。

 そして持ってきたものを少し離したところに描く。


 動物5匹と、動物の皮3枚、赤い買い物籠が2つ、赤と黒の買い物籠が1つ、赤と黄色の買い物籠が1つ。これで全部だ。

 土に色は付けられないので、2色の買い物籠は柄を描いた。

 

 鉈の絵を指し、赤一色の買い物籠1つの絵を指す。モリンタは指を2本出す。

 ももちゃんは頷き、買い物籠2つと鉈の交換が成立した。

 鉈の交換に買い物籠を指したのは、動物5匹と同価値であることが前回の交渉でわかっているので、籠という新しい品にどのくらいの価値がつくか調べるためだ。

 動物だと5匹分いるのに、籠だと2つで交換ということは、籠をとても高く評価してくれているということだ。

大成功!という様に、ももちゃんとお互いを見てニヤリとした。


 次に鉈の横に描いた鍋を指し、次に動物の絵3つを棒で指す。

 ジェスチャーとともに「ニャック?」と言うと、モリンタがゆっくり頷く。


 そこで、前からごんさんにいわれていたノコギリの絵を描き、動物の皮の絵を3つ描く。

 モリンタが頭を横に振ったので、皮3つと赤と黄色の蔦で編んだ籠を動物の皮と共に指す。

 モリンタは再び顔を横に振る。

 今度は動物2匹も指すが、モリンタは頷かない。


 ノコギリの製作自体がナイフや鉈より手間がかかり、技術が必要であろうことは想像がつく。他の物より相当価値が高いということか・・・。


 4人は村人の前で、相談を始めた。今回は、ノコギリは次回にと諦めて食器とか塩づくり等に必要な布などと交換をするか。どうしてもノコギリが欲しいみぃ君としては出来るだけ今回ゲットしたいみたいだが、直ぐには4人の意見が一致せず、話し合いは長引きそうな様相を呈して来た。


 そうすると村人の中から若い栗色の髪の女性が進み出て、赤と黄色の籠を私の手からもぎ取り、どこかへ走っていった。

「えっ!?」と驚きが口からまろび出てしまい、周りにいた村人たちもざわめく。


 すぐに栗色の髪の女性が戻って来たが、その手には使い込んだノコギリが握られていた。

 そしてめりるどんにそのノコギリを手渡した。


 モリンタは顔を顰めたが、栗色の髪の女性が強い意志をその瞳に浮かべ、力を込めて赤と黄色の買い物籠を握りしめた。

 この籠を余程気に入ったということが、そのにぎり拳の強さで分かった。

 モリンタと女性は二言三言言葉を交わしたが、結局彼は私たちの方を向いて頭を縦に振った。

 栗色の女性はみぃ君から皮3枚も受け取る。


 彼女は、のこぎりとの交換が成立しなければ、赤と黄色の籠の交換を今回は見合わせるかもしれないと思ったのだろう。

 しかも、もし、モリンタが籠を他の物と交換した場合は、その籠は交換品を提供した者が貰えるのだと簡単に想像がつく。ノコギリなら自分でも交換できるが、持ってないモノと交換となると、あの籠は別の誰かのモノになるのだ。

 私達は知らないことだが、この村では模様の入った物が極端に少ない。

 女も子供も漁を手伝うのに忙しく、生活に必要な物はできるだけ手間を掛けずに短時間で作る。それがこの村の生活のあり方なのだ。


 こんなに色鮮やかで綺麗な模様が入った籠は、この村では誰も持っていない。

 彼女はどうしてもこの籠が欲しかった様だ。

 年齢的に既婚者だと思う。彼女の夫が仕事から戻った時、ノコギリが無い事に気付いたら、怒られたりしないのだろうか?少し心配になって来た。

 彼女がこの柄入りの籠を強く欲してくれたので、私達は晴れてノコギリを手に入れることができた。


 次にももちゃんは、ハギレ5枚のつもりで描いたほぼ四角としか言えない絵を棒で指し、そのまま自分の服を持ち上げ、指で指した。

 今度は金髪の女性がモリンタの回答を待たず、赤と黒の籠を掴みどこかへ消えたと思ったら、生成りのハギレ五枚を持って来た。


 五枚の内2枚は少々目が粗かったが、他の3枚はフィルター替わりにできるくらい目が細かい布だったので否は無い。

 ノコギリと布切れ5枚の価値がそんなに違わないというのが私達にとっては少々不思議だったが、ラノベ知識のあるみぃ君が、もしかしたら・・・布は買うものではなく、各家で織っているので数がこなせず贅沢品なのではないかと発言し、3人は納得した。


 今度はモリンタの顔は怒りや驚愕ではなく、やれやれといった諦めに近い顔で、頭を縦に振った。


 金髪の女性も嬉しそうに赤と黒の籠を握りしめる。

 が、もう柄のある籠は残っていない。

 他の女性たちの中の何人かが、金髪と栗色の髪の女性を取り囲み、抜け駆けしたことをやいのやいのと責め立てている様だ。


 最後に、釘の絵を指して、動物の皮3枚を指し、「ニャック?」とモリンタに聞いた。

 しかし、モリンタは頭を横に振った。

 釘がないのか、それとも釘は貴重すぎて交換できないのかは、言葉が通じないのでわからずじまいだが、一旦釘はあきらめて、今度は深皿の絵を描いて、再び動物の皮3枚を指した。


 モリンタは頭を縦に振り、前回ナイフや鉈を取ってきてくれた女性がどこかへ行き、深皿を4枚、つまり人数分持ってきてくれた。

 皮が3枚なので深皿1枚はおまけでくれたのかもしれない。


 ももちゃんはにっこり笑って「ありがとう」と言ったが、彼女はきょとんとした顔をしていた。

 しかし、すぐにももちゃんが何を言ったのか想像がついたらしく「マイマイ」と答えた。

「マイマイ」が「ありがとう」という言葉を教えてくれるために発せられた「ありがとう」なのか、「どういたしまして」なのか判断はつかないが、どちらかである可能性が高い。

 ももちゃんの頭の中の辞書に「マイマイ」が記録された瞬間だった。


 暇を請うジェスチャーだと分かる様に、今回もバイバイと手を振って帰路についた。


 4人は海と川の交わるところまで移動すると、交換したばかりの鍋の上まで海水を入れて、小屋へ向かった。


「これは籠の方が、交換比率がいいねぇ。ももちゃん、いろんな模様の籠を作ろう!」とやる気スイッチの入った目線を向けたら、ももちゃんもにっこりと笑って応えてくれた。


「女性のおしゃれ好きは、ここの星でもいっしょかぁ・・・」と幾分疲れた様にみぃ君が小声でつぶやいた。

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