村に残った二人 その1
めりるどんとももちゃんは通常より早い時間に朝食を摂って、みぃ君とごんさんを港まで見送りに行った。
港と言ってもただの砂浜なのだが・・・。
「それじゃあ、私はロミーのところへ行くわね。」とめりるどんが、今は漁で船が一艘もいない浜辺とは反対側の浜辺の方へ向かった。
「うん、じゃあ、昼食時に~。」とももちゃんは家へ向かった。
ももちゃんは、まずみんなのベッドから羊毛を取り出し籠に入れ、裏庭の日向になっているところへ並べた。
裏庭には、シャワーだけでは足りない時のためと、洗濯の為に、直径1メートルくらいの竹で作った桶が、5つ並べてある。
スコールが降った時に水が溜まるので、飲食には使わないが、シャワーの水が足りない時や、掃除、洗濯に使っているのだ。
そうすれば、井戸への水汲みの回数が断然減るのだ。
水汲みは重労働なので、水汲みの回数は少なければ少ない程良い。
本当はめりるどんもごんさんも、家の中やその周りはスッキリしてる方が良いので、普通なら裏庭の土の上にたくさん桶が並んでいるのは鬱陶しく感じるのだが、水汲みの回数を劇的に減らす事ができるので、気にしない様にする努力をしている様だった。
ももちゃんは多少とっちらかってても気にしない性分らしく、何とも思っていない様子だが、動線の上には置かない様にとそれだけを気にしている様だ。
みぃ君は4人の中でも水汲みの回数が断然多かったので、この桶を裏庭に置きはじめたのもみぃ君だった。
ももちゃんは、めりるどんが作ってくれた石鹸と洗濯板を使って4人分の洗濯物を洗い始める。
地面に屈みこんで作業するのは、洗濯物の量が多いと結構辛いので、ほぼ毎日洗濯はしている。
明日からはごんさんもみぃ君も当分いないので、みんなのシーツを数日に分けて洗おうと思っていた。
漸く洗濯が終わると、腰をトントンと叩いた後、軽いストレッチをして、倉庫の方へ回る。
空になって戻って来た酒樽を斜めにして、村の井戸までくるくる回しながら運ぶ。
今日は3つだ。
家から持って来ていたヘチマの様なタワシで、水を掛けて洗う。
つるべで水を汲む回数を最小にしたいために、1回汲んで、その水を3つの樽に分けて入れる。
少量の水でゴシゴシと擦って洗うが、一旦中の水を捨てて、今度は1回汲んだ水は、樽1つに全て使い、桶を洗う。
樽の中の水を空にするのも、結構な力がいるので、この作業はももちゃんにとっては重労働なのだ。
樽の清掃が終わると、またくるくると回しながら家の裏庭まで運び、日向のところで干す。
ついでに朝から干していた羊毛を上下ひっくり返して、すべての羊毛がふわふわになる様に一手間を加えた。
酒樽を乾燥している間に、今度は家の掃除だ。
家の中へ入って、以前、みぃ君が作ってくれた掃除道具を使って、掃除を始める。
「樽の清掃だけでも人を雇って欲しいなぁ~。」と誰もいない家の中でももちゃんのボヤキが零れた。
家の掃除は部屋が2部屋しかないので、割と簡単に済む。今は、玄関から居間までを掃除している。
後は、めりるどんが昼食を作りに戻って来てくれたら、昼食後に2人で作業小屋まで行く予定だ。
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浜辺の反対側へ行くと、ロミーが既に魚や貝を運び出し天日に干していた。
浜辺には屋根だけがついている簡易な物置を作っている。
本当は小屋にしたいのだが、まだそこまでする時間と人手がないのだ。
ごんさんとみぃ君が1か月くらいはグリュッグに滞在して、水車小屋を作るだろうから、浜辺の作業小屋は彼らが村に戻ってから作るのが作業的にも楽なのだ。だが、めりるどんは、日向で作業するロミー達に作業しやすい様に日陰の場所を提供したいという思いを強く持っている。
これから3・4日かけていろんな作業の量や流れを見て、もし、時間と体力に余裕が出て小屋を作る事ができれば、彼らがいなくてもももちゃんに手伝ってもらって作ってみたいとは思っている。
今は、まず、みぃ君の出汁の粉の素材を、いつまで干せば良いかを確認する事が第一だ。
昨日、みぃ君とロミーと三人で、どんなやり方で確認するかを決めた。
魚やエビ、貝は毎日少量づつ仕入れる事にした。
干す前の処理が終わった物は、材料別に蔦で編んだ笊に並べて、何日に干し始めたかを日本語で書いた布切れを括り付けた。
干す前に以前作った釣り天秤で重さを測り、木片に記録する。
干し始めて2週間過ぎた時から、毎日重さを測る予定だ。
最長でも3週間しか干さない事にし、それを1週間以上置いて、カビが生えるかどうか観測するまでが今回の作業になる。
まだ、昨日作業を再開したばかりなので、今朝計測するものは無い。
昨日作業した物は、時間のかかる煮干し以外は、昨日の午後、重さを測っているのだ。
昨日の煮干しは、明日の昼頃、漸く天日干しが始まるので、計測は明日の昼食前になるだろう。
ロミーがすべての笊を並べ終わった頃、残りの従業員たちが出勤して来た。
めりるどんがジャイブから買い取った貝や、ルンバから買い取った雑魚を、彼女たちが処理をする。
彼女たちの作業が終わる頃までは、めりるどんはずっと浜辺にいる必要はないので、家に戻って昼食を作り始めた。
家ではももちゃんが掃除をしているが、台所とつながっている居間の掃除は終わり、今は寝室に取り掛かっているらしく、台所で料理をしても埃は入りそうもないので、ももちゃんに一言声を掛けてちゃっちゃと作り始めた。
昼食を作り終わっためりるどんは、一旦ももちゃんに声を掛けて浜辺まで戻った。
今朝従業員たちが作業し終わった物から計測を初めて、笊に今日の日付を書いた布切れを括り付ける。
今月は試験ということもあり、仕入れている材料の量が少ないので、従業員たちの作業も午前中だけで終わっている。
ロミーだけが、天日干しの物の出し入れのために、午後まで残ることになっている。
昼食前に解散できた。まぁ、ロミーは昼食後にここへ戻ってもらってスコールまでの作業となる。
めりるどんとももちゃんは一緒に昼食を済ませた。
めりるどんが食器等を洗ってくれている内に、ももちゃんは桶や洗濯物や羊毛を倉庫や家の中に取り込んだ。
二人は食休みすら取らず、そのまま作業小屋へ向かってゆっくりと移動を始めた。
「ねぇねぇ。彼女たちの為にも浜辺に作業小屋を作ってあげたいんだけど、やっぱりごんさんやみぃ君が戻ってくるまでは難しいかなぁ?」とめりるどんが何気なさを装って、ももちゃんに話しかける。
めりるどんはももちゃんから「手伝うよ」の一言を引き出したいのだ。
普段のももちゃんなら直ぐに「手伝うよ」って言葉が飛び出してくるはずだが、今回は違った。
「う~ん、女手二人分だけじゃ、難しい気がするなぁ~。」とももちゃん。
やっぱり二人だけだと、難色を示したかぁ~とめりるどんは歩きながら思案する。
数歩あるいた所でももちゃんが、「だからね、彼女たち従業員も使って作っちゃうのはどう?」と言い出した。
「だって、問題は人手が足りない事なんだし、本来なら夕方まで働いてくれる彼女たちの仕事も今は半日なんだしね。自分たちが作業しやすい様にということで日陰を作るのが一番の目的なんだし、相談したら嫌とは言わないんじゃない?」
「おおおお!ももちゃん、冴えてる!いい!それいい!」とめりるどんは飛び上がらんばかりだ。
今回、水車小屋を作ったり運営したりする事で、何でもかんでも自分たちでしなくちゃいけない訳ではないことを体験できたももちゃんは、すんなりとこの結論に行き着いた。
また同じ体験をしためりるどんも、その案をすんなりと受け入れることが出来た。




