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食べるための努力

==========<めりるどん視点>===========


 夜が明けた。

 ごんさんはまず罠を確かめに行った。


 残りの三人は、周辺にある果物を採取し、みぃ君はそれに加えてみんなの靴を作るためのバナナの葉の採取も行った。

 バナナの葉は靴だけではなく、地面に座る時に尻の下に敷いて、虫などとの不用意な接触を避けるために使われたり、皿として使ったりといろんな事に使えるので、少し多めに採集した。


 昨日はなかった果物も採取できたので、ごんさんが戻る前に3人でパッチテストを始める。


 3人が昨晩泊まった洞窟の前に座り、靴として使うバナナの葉を細工している中、ごんさんが中型の動物を抱えてもどってきた。

「「「おおおおおお!」」」とみんなの歓声が上がる。


「罠に餌になるものがなかったので成功率は低いかもしれないけれど、動物の通り道にもしかしたらと思っていくつか仕掛けておいたんだ。幸運にも1匹引っ掛かってた」とニッと笑い、みぃ君が採集してくれていた蔦を使って解体を始める。

 みんなはバナナの葉の細工を途中で放り出し、まだ燻っていた焚火にくべるべく、乾いた枝を拾いに散らばった。


 ごんさんは解体の血で汚れた手を土でこすってできるだけ血を落とす。

 本来なら水で洗いたい所だが、まだ水は見つけてないのでしょうがない。

 なので砂である程度血を落とし、朝露を含んだ草を手でつかんで残りの血を拭う。

 

 肉は焼いてからパッチテストをすることになった。焼いた肉を少し冷まして、耳の後ろに押し付けた。地球であれば魚、爬虫類、鳥などには毒がある場合があるが、哺乳類には毒がないのでパッチテストはしなくて済む。

 しかし、ここは地球とは違う星の様なので、哺乳類の肉でもしっかりパッチテストをする。


 肉は、全部焼いた。昼も夜もこの肉を食事にしたいが、生のままだと夏の気温の中、肉が傷む可能性がある。

 新たにみぃ君が取ってきたバナナの皮に包んで、私たち女性陣に運んでもらうことにする。

 

 塩も何もないが肉を焼く匂いだけでみんなのお腹が鳴った。

 口の中が唾液でいっぱいになる。でも、パッチテストが終わらないと食べられない。

 もどかしいが命には代えられない。

 もし、これが自分一人だったらイチかバチか食べてしまうかもしれないが、4人一緒だからこそ、4人全員我慢して結果を待つ事が出来た。


 結論として、この肉に毒はなかった。

 冷めた肉を軽く火で炙って配った。

 みんな無言で食べている。肉がお腹に入るだけで、不思議と力が湧いて来る。

 難を言えば、手づかみで肉を食べて手が汚れるのに水で洗うことができない事くらいか。

 朝一番であれば、草についていた朝露などで、多少なりとも洗えたのだが、パッチテストをしている間に、朝露は蒸発してなくなっていた。


 夜の内にバナナの葉を細工して夜露を貯めようとしたのだが、朝になったらバナナの葉がバラけて平になっていたため、結局水はたまらなかった。しかし、フルーツはふんだんにあったので、水分補給の方は問題なくできた。


 食べた後の骨は武器になるからと、大きめな骨を一本ずつ携帯する。

 みぃ君が石で研磨しようとしたが、この骨が意外と固い。

 無理やり研磨しても骨の真ん中がぼきっと折れてしまったので、別の太い骨を拾い加工せずに携帯することになった。


 みんなの食事が終わり、移動の準備が出来た時、「よっし!移動を開始しよう!」と例のごとくももちゃんが号令を出し、昨日と同じ順番で移動が始まった。



 二時間くらい歩いただろうか。水の臭いがし始めた。

 実際には匂いではなく、空気中に含まれる湿気や、マイナスイオンを感じ取っていただけかもしれないが、何故か近くに水があることを全員が感じていた。


 更に前に進むと今度は水が流れる音が聞こえてきた。

 みんなで顔を見合わせ、歩くスピードが速くなる。

 最後はほとんど走るように移動して、とうとうみんなの前には流れの早い小川が横たわった。


 ごんさんは素早く両手を広げ、みんなが不用意に川に近づかない様に牽制した。

 その上で、見える範囲に脅威となる動物がいないかどうかしばらく注視し、安全を確認してから漸く通せんぼしていた両腕を下した。


「脅威となる動物はいないようだ」と言われてはじめてみんなにごんさんの意図が伝わった。

「こういう時、やっぱりサバイバルの経験がある人とない人の違いが表れるなぁ。すごいなぁ。ごんさんがいてくれて、本当に良かった」とみんなが思っただろう事がつい声に出てしまい、恥ずかしさを誤魔化すためにごんさんに笑いかけた。


 安全が確認されてみんなが川べりに寄ったが、ふいに思っちゃったのだ。

「ねぇ、この水飲んで大丈夫なの?」とつぶやいた。


 こんな時、米軍の浄水タブレットがあれば、飲めないくらいまずい水にはなるが、健康的には問題ない水が瞬時にできる。

 しかし、今は何もない。


「流れが速いので、そんな変な水やないと思うけどなぁ・・・」とみぃ君がうらめしそうに川を睨む。

 コミュでは標準語でやり取りしていたのに、疲れが出て来たからか、とうとう普段の関西弁が口を突いて出る様になった事にみぃ君自身は気づいていないようだ。


「そうだ、砂と石でサンドフィルターみたいなの作って、それで飲み水を作るってのはどうかな?」と提案してみた。


 いい案だが、ただ、それをするには入れ物がいるとごんさんに言われた。

 みんなで回りを見回すと、竹のオバケの様な木があった。

 これは使えると思ったが、その竹を切る刃物がない。

 容器として使うので、バキバキに割るわけにもいかない。


 後は、みぃ君がくだものを入れているカーディガンを使うくらいか・・・。

「みぃ君のカーディガンを使わせてもらっていいかな?」とのごんさんの問いにみぃ君がきょとんとした顔を向けた。


「みぃ君が果物を包んでるカーディガンを砂濾過器にさせてもらって、せめて濾過した水を飲めば安全性も上がるかなと思ったんだ」


「もちろんええで!水はなによりも大切や」とみぃ君がすぐに同意してくれた。


 みぃ君が背中に巻き付ける様に背負っていたカーディガンを開くと、少なくなったフルーツの外に、ごんさんが初日に持っていた林檎の芯も入っていた。


「なんで林檎の芯?」と問いが口を突いて出た。

 今日はついうっかり考えた事が口に出てしまう日になってしまった。

 私も相当疲れていると言う事だろう。

「これ、どこぞに行きついたら種を植えてみようかと思うとんねん。地球やないとしたらここには林檎がない可能性が高いしね。ほしたら林檎を育てて売れば高く売れるんやないかなと思うて・・」とみぃ君が照れる。


 ラノベ大好きなももちゃんが「おおお!さすがみぃ君!目の付け所が違うね~」と大乗り気。


 二人が言うには、日本の物、特に食べ物は品種改良でおいしくなってるので、高く売れる可能性があるとのこと。

 本当かなぁ?とめりるどんとごんさんは思いつつも、生活の手段は多い方が安心なので、誰も文句は言わなった。


 早速砂や石を使って簡易な砂フィルターを作ってから、比較的砂が多めの川辺を少し掘ってバナナの葉を何層にも敷く。その周りを石で囲って砂フィルターをその石の上に広げる。

 すぐ横の川から食べ終わったヤシの実もどきの殻を使ってせっせと水を組む。

 この砂フィルター、水が濾過されて落ちてくるまで少し時間がかかる。

 みんなは飲むのでなければ大丈夫だろうと、川の水でそろぞれ顔を洗ったり、水浴びしたりとその時間を想い想いに使うことにした。


 ある程度濾過水が溜まった。本当なら沸騰させれば万全なのだが、道具がないのでそこまではできない。

 ここはもう思い切って飲むことにした。


 おいしかった!

 これぞ命の水だ!

 全員がそう思った。


 たらふく飲んだ後、ごんさんが「もし、タオルやハンカチなんてもってたらこの水を含ませておけば、後で絞れば飲めるぞ」と教えてくれたが、ここへ飛ばされた時は、全員が自宅でPCの前だったので、誰もハンカチすら持っていなかった。その方法は諦めざるを得なかった。


 みぃ君の砂まみれになったカーディガンは川の水でしっかり洗われ、しばらくの間岩の上で干したのち、またフルーツを入れてみぃ君の背中に収まった。


 カーディガンを干している間に朝焼いた肉でしっかり昼食も済ませ、水を思いっきり飲んで、体もある程度キレイにできたので、みなの足は軽くなった。

 しかし、1時間も歩くと、当てのない移動にだんだん足取りが重くなってくる。

 ただ、今は川沿いに下っているので、水の心配はない。心理的にはかなり楽になった。


 2時間も歩くと、最初は小川くらいの幅だったのが、日本でも大きめの川くらいになり、最後は対岸が見えない大きな川となり海に行きついた。

「おおおおおお!」みんなの口から歓喜の声が再び上がった。

「今日はツイてるね」めりるどんが嬉しそうにつぶやく。

 何故ならこおこが陸地の端っこだからだ。

「うんうん。今夜はお魚かな~」などとのんきな感想をこぼすももちゃんにみんなは少しあきれ顔だ。


 しかし、お魚のディナーも夢ではないかもしれない。

 なぜなら彼らがいる所から小さな漁村が見えたのだ。

 小さなカヌーみたいな船が複数浜辺に上げられており、家も15軒くらいある。

 やった!集落だぁ。

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