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初キャンプ

==========<ごんさん視点>===========


 ももちゃんが蔦の運搬を請け負ったのは、先頭になって道なき道を切り開いてくれる俺の負担を軽減するための様だ。


 鉈もなにもない中、俺もみぃ君の様に手を傷だらけにしながら、邪魔になる木の小枝や蔦を横に寄せて、みんなが進みやすい様に足元を確認しながら獣道とも言えない即席の道を作る。


 その後を、長めの木の枝を杖にしためりるどんが続く。こっちへ飛ばされる前から、体のあっちこっちに痛みがあるとコミュで言っていたが、それは体に痛みがあるから咄嗟にタイピングが遅れて会話がズレるかもしれないと言う現状の報告だけで、我慢強いめりるどんは弱音を吐いた事はない。でも、今、現実のめりるどんを見ると痛みで歩きづらそうだ。心配したみぃ君が杖になりそうな棒を拾って渡していた。

 みんなに心配を掛けてしまい申し訳ないという思いはあるのが見て取れたのだが、みぃ君がわざわざ脇道に入って棒を探してくれた心遣いが嬉しくてありがたく杖を使う事にしたのも同じ様に見てとれた。

 杖を持っていると片手が常に塞がってしまい、もう片方の手を自由に使える様にするためには、何も運ばないという選択肢しかない。


 道中にも、出発前に採って来たのと同じ果物が実っているのを見掛けたら、手が届く範囲で採取をしながらの移動となったので、果物を見つけた時は四人共率先して採りに行く様にした。

 手荷物を持っていないめりるどんはみんなより率先して果物採集に精を出していた。


 3番目は、蔦をわっかにして肩に掛け、同じく杖を持ったももちゃんが、列の最後は「わてが」と自分から申し出てくれたみぃ君だ。


 最初と最後に男性がいてくれることで、いろんな意味で安堵した女性二人の歩くスピードは決して速くない。

 それでも、その二人の歩くスピードに男性二人は合わせる様にして歩いた。


 昨日の日付が変わる時間帯にここへ飛ばされてきた4人は、本来なら就寝している時間をずっと歩いていることになる。日本との時差がどれくらいなのかはわからないが、ここでの時刻は、まだ昼過ぎになったばかりの様な太陽の位置だ。まだまだ歩く事になりそうだ。


 道なき道を歩くのは普通に歩くより辛いのに、寝不足で体がダルい。その上に、知らない場所という不安もある中の行軍。しかし、まだ誰も不満を口にしていない。


 本当はみんな「なんでこうなったっ!」という気持ちはあるだろう。俺だってそうだ。

 だが、一度不平不満を口に出してしまったら止まらなくなる自信がある。

 そして4人の中で最初に不満をもらすのは避けたいという心理も働いている様で、ありがたいかな今までは誰も愚痴を言ってない。


 また、女性陣の体力を考えて、こまめに休憩をとってくれているのも功を奏していると思いたい。


 その日は結局、川や沼には行き当たらなかった。

 採取した果物はいずれもパッチテストをクリアした。

 果物の中にはヤシの実の様に果汁の多いものもあり、今日の所は、その果実の汁を水替わりとすることにした。

 もちろん果肉もおいしく頂いた。


 夕方よりもかなり早い時間に、小さな洞窟に行きついた。

 奥行は狭いので、ちょっと奥に入れば獣なども住み着いていないことが確認できた。


「今夜はここで野営しよう」とみんなの顔を見回しながら言うと、「わかった」とももちゃんが打てば響く様に独断で同意する。

 みんな寝ずの夜行に、かなり体力が削がれていたので、寝れるというのに反対する気にはなれなかったみたいだ。


 ももちゃんは洞窟の中をぐるっと見回して、勝手に中に入った左側のくぼみになっている辺りに歩を進めた。

「ごんさん、ここで寝るとして、焚火か何か必要だよね?」

「うん。焚火というよりは虫対策で煙を絶やさない方がいいと思う。幸い煙を出すだけなら木でなくて草でもいいので、そこらへんの草や枝をみんなで拾って寝ずの番を決めよう」


 みんなで手早く枝や草を採集している間、疲れ切った体に鞭打って俺は動物を狩るための罠を蔦で作りに別行動させてもらった。


==========<めりるどん視点>===========


 焚火は枯れた枝としっかりした枝、蔦と道中で拾った朽ちかけ乾いた樹皮を使って焚いた。樹皮は、火を熾す事を念頭に「持って行こう」とごんさんが指示したので、途中から私が運んだ。それが無ければ火を熾すのはかなり難しかったかもしれない。


「どてらの綿の方が、火が点きやすいんじゃない?」

 ももちゃんが無邪気に言うが、みぃ君が驚いて「いやいや、その綿に合成繊維が混ざってないかどうかわらかないからね。こっちの樹皮の方が安全かな」と慌てて否定していた。普段、あんまり深く考えないももちゃんは、コミックだとテヘという音喩が付きそうな顔をした。


 二人のやりとりを横で聞いていたけど、道中途中まで何も運んでいたなかった事の代わりに「おおお!さすが、みぃ君。そうだね。じゃあ、火おこしは前にTVでやり方を見たことがあるので、私が挑戦してみるね」と火おこしを買って出た。

「うん、お願い」と言いながら、みぃ君はみんなで拾ってきた枝や草を焚火しやすい様に組んでいく。

 煙が出やすい様に水分を含んでいる草を一番上に乗せる。


 そうこうしている内に、罠をしかけたごんさんがキャンプに戻って来た。

 即席で作った火おこし器のガイド棒を顔を真っ赤にしながら上下に動かしていて限界が来た。元々肩が痛かったんだけど可成り頑張ったんだけどね。みぃ君と交代してくれた。


 普通に枝を手で錐もみにするよりは遥かに簡単に火を起こせるのだが、それでもかなりの時間ガイド棒を動かさなければならない。その間姿勢を変えることもなく作業を続けなければならないので、これは結構大変な作業だ。

 その内、種火らしきものが見えた。これくらいは私がと素早く朽ちた樹皮に種火を乗せて、息を吹きかけ火は勢いよく燃え始めた。

 それを組んだ焚火のところへ持っていき、火を組んだ枝の下に置く。

 何とか私も何かの作業を担当する事が出来た!

 

「これで野営する準備はできたね」とももちゃん。

「煙は切らさない方がいいので、2時間おきに起きて、火が消えてないかの確認と水分を含む草の補充をしないといけないね」

「というと、ごんさん、順番で夜起きることにする?」

「うん。それが理想的だね」

「わて、腕時計あるで。目覚まし機能使うか?」と、腕時計を前に差し出したみぃ君の手を見て「おう!助かる。使わせてもらおう」とごんさんが皆に号令して、みぃ君から目覚ましのセットの仕方を教えてもらった。


「順番なんだけど・・・・明日も歩くことを考えると、女性陣によく休んでもらわないと移動そのものが難しくなるので、一番楽な時間は、女性陣にお願いしてもいいかな?」とみぃ君の顔を見ながらごんさんが提案する。


「せやな。できれば明日には水を見つけたいし、集落も見つけられれば万々歳やね。もしかしたら結構歩くことになるかもしれんしね」とみぃ君も疲れているにも関わらず、快く承諾してくれる。


 なんにしてもこの女性陣二人は男性陣より少しだけ年が上なので、年齢的な面で考えても、しっかり休んでもらわないと明日の移動がおぼつかなくなるというのが男性陣2人の頭にはあったと後日みぃ君が教えてくれた。まぁ、年が上なんてことは不用意に口に出す愚は犯さないだけの知恵が男2人にはあった事は幸いである。

 

 結局女性陣二人は最初と最後の番にしてもらい、一番寝入る時間帯に起きることがない様に組んでくれた。

 男性陣はみぃ君の時計の機能を使って、時間になったら順番に起きて、焚火のチェックをすることになった。ごんさんによるとチェックした後は洞窟の入口付近で薄っすらと仮眠を取る様にするらしい。


「しかし、寝ずの番をしなくて大丈夫なのかい?」

「本来は寝ずの番が理想なんだが、寝なければ明日以降の体力保持が難しくなるし、この状態がいつまで続くか分からない以上、睡眠は必須だと思う。それに異常があれば直ぐ起きる様訓練を受けているから」

「そうかぁ・・・・。でもわてはその訓練受けてへんから、やっぱり寝ずの番をする事になると思う」と、男性二人で話しているのを、女性陣二人も黙って聞いていた。

 サバイバル訓練の経験があるごんさんがそう言うならと、それに反対する者はいなかった。


 煙もあるので野生動物はこの洞窟には入って来ないだろうが、相手が人間なら襲われるという可能性も無いわけではないので、物音に敏感なごんさんが誰の寝ずの番であっても、その夜ずっと洞窟の入り口付近で寝てくれることになった。これで万が一、誰かがうっかり番の途中で寝入ってしまっても、何とかなりそうだ。


 煙たく寝苦しい思いをしていたが、疲労には抗えず、みんなすぐに寝付いた様だ。

 明日こそは水を見つけないとと思いながら夜は更けていった。

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