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チートのない中年たちのサバイバル日記 旧題)中年たちのサバイバル騒動  作者: 〇新聞縮小隊
第2章 少しだけ広がった世界
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粉挽事業プランニング

 村に戻ってきた4人は日々の仕事をしながらも、1週間しか準備期間がないということで、様々な準備を進めることにした。


 ごんさんは、今まで以上に肉を得る為に、いつものエリア以外にも2つエリア増やして罠を仕掛けた。また、水路用の竹は節を削ると重ねる事ができるし、軽いので舟で運ぶこともできる。ましてやグリュッグの町の付近にはジャングルも森もないので、ここで用意できるならと、直径の違う3種類の竹を伐採し、節を削ったりもしていた。


 めりるどんは、石鹸が高額で売れるので、石鹸を中心に作っている。

 ただ、今回作り始めた石鹸は1週間後の移動には間に合わないので、次回用だ。

 みぃ君は、石鹸のために海藻を集めて乾燥させ、不在の間、手入れしやすい様に畑を整えたり、お酒作り用の材料も大量に村へ運んだ。

 ももちゃんは相変わらずお酒づくりと言葉の勉強に励んでいた。


 そして、ごんさんが大量に確保した肉は、残りの3人で塩漬けにしたり、燻製にしたりした。

 これでごんさん達がいない間も、女性陣は肉を口に出来る。


 そして夜は、粉挽事業の詳細をみんなで決めていく。

 普段は蝋燭が高いので、陽が暮れると早々に寝ていたが、この一週間は蝋燭をケチらずに長々と話し合いと続けた。


 町から戻った最初の晩は、グリュッグで家を買って、グリュッグに引っ越すかどうかをもう一度話し合った。もし、グリュッグに引っ越すのなら、ドブレ一人にいろいろ頼まなくても、4人でいろんな事が出来るので、いろんな意味で新事業がスムーズに進みやすい。


 ただ、グリュッグの家は、4人が思っていたものより多少高く、町の近くに森もジャングルもないのであれば、食費が今よりずいぶんと掛かってしまう。

 結局、満場一致で、このままザンダル村に住み、時々誰かが商売のための、水車小屋のメンテの為にグリュッグの町へ行くことに決まった。


 水車作成と水車小屋の建築等については、ごんさんの独壇場だ。

 「水車小屋だけど、臼は2タイプ、それぞれ2台を考えている。一つは上下に石があって、上の石を回して挽くタイプで、もう一つは石が鉢型になっていて、杵の様な棒が上下して突くタイプだ。」


 「粉挽の代金や、ドブレ君の給与だけど、粉を挽ける量と時間によって決まるよね。」とは商業高校出身のももちゃんだ。通訳ではあるのだが、商業高校出身というちょっと変わった経歴を持っている。


 「そうだねぇ。それもあるけど、値段があまり高いとお客は来ないでしょうしね。」とめりるどんも同意し、「だって、穀物屋で買えば半日100円で臼を借りられるんだしねぇ。」と続けた。


 「いや、あれは手間賃が入っていない料金だから、労働力を供給する粉挽のサービスはもちろん臼のレンタル代よりは高くていいはずだと思うぞ。」

 「そやけど、あんまり高いとその分小麦の値段も上がるわけで、高い小麦は誰も買わんのとちゃうか?」

 ごんさんとみぃ君も値段設定は大事だと思っているからこそ、意見を戦わせる。


 「ってかさぁ、それよりも、私が危惧しているのは、私たち4人の誰もグリュッグには住まないのなら、お金のやり取りとか全部ドブレ君がすることになるよね?いくらルンバの親戚でも、どれだけの取引があったかはドブレ君にしか分からない状態になるわけだし、それってドブレ君にとっては誘惑じゃない?」とももちゃん心配そうに言う。


 「誘惑って、金をネコババしやすいってことを指しているのかな?」

 「うんうん、ごんさん。私が、遠隔事業が難しいと思うのはそこなんだよね~。」


 4人はしばし頭を抱えた。ドブレ君がどれだけ良い人であっても、もしかしたら大金を好きに動かせる立場になれば、魔がさすなんてことも普通に起きる可能性はある。

 すぐに解決策を思いつく事ができず、とりあえずそれについては別の日に考え様ということになった。



 翌日の夜の会議では、まっさきにめりるどんが口火を切った。

 「昨日のお金のやり取りの件だけど、一日かけて考えて、私なりにいい案が浮かんだので、ジャジャジャ~~ン!ここで発表しますね。」

 めりるどんの明るい雰囲気を見て、3人はめりるどんの案に期待した。


 「お客をね、穀物屋や大きなレストランに限るの。で、月極めで上限の使用時間を決めて定額を貰うの。これならドブレ君はお金に触ることないし、時間の管理だけすればいいから誘惑はないはず!」

 「おおおおおおーーーーー!」三人の歓声が上がる。

 めりるどんは期待にしっかり応えてくれた。

 「もちろん、空いてる時間は一般客もOKだけど、大口顧客に優先権を与えて、使える日と時間をあらかじめ割り当てれば、複数の大口顧客がバッティングすることもないしね。」


 「すごいね、めりるどん。よく思いついたね。いいよ、これ。いいねいいね~。」ももちゃんも急に顔が明るくなった。

 「っちゅうことは、大口顧客を開拓せにゃならんなぁ。」とポツリとみぃ君が言ったが、そこは君に任せるよと3人がみぃ君に仕事を投げる。

 「ぐはっ。吐血!」とか言いながらも、みぃ君は「まぁ、この中で商談するとなるとわてになるんかなぁ~。」と半ばあきらめ気味に承諾してしまった。


 こんなところにもみぃ君の人の良さが出ているなぁ、と三人は心の中でみぃ君に感謝した。

 ただ、3人が営業をみぃ君にお願いしたのは、実はみぃ君のとある特技による物で、決して無責任に任せたわけではないのだが、みぃ君はそれに気づいていなかった。


 「粉挽後の小麦は、値段は上がるが、穀物屋にしても大口顧客はパン屋や食堂などが主だろうから、多少値段が上がっても食堂の方も粉挽に人手を割くよりは、小麦粉になった物を買う方が魅力的だと思うので、その辺をアピールしたらいいと思うぞ。」と、ごんさんも商売に関して具体的なビジョンを持って始めた事が伺える発言が出た。


 「そう言えばね、中世の風車小屋とか粉挽してたんだけど、そういうのは大体その土地の領主が持っていて、使用料は挽いた穀物の何パーセントかをもらう形で営業していたって書いた物、読んだことあるよ~。」と、スペインの黄金時代、いわゆる15~17世紀と、その時代に生きたPrincesa de Eboliという片目の貴婦人や、同じくハイランドの15世紀に興味のあるももちゃんが以前読み込んだ小説に書いてあったらしい。


 「だけど、粉で貰っても、それを加工したりするのは今の私たちには難しいし、それよりも王都で家や店を買う資金が欲しいので、今回は現金取引の方が良くない?」とめりるどんが心配そうにももちゃんを見た。

 「あっ、そうだね。その通りだぁ。やっぱ現金だね~。」とももちゃんはあっさりと自分の意見を引っ込めた。

 

 「そやな。じゃあ穀物屋からあたってみるかぁ。」とみぃ君が〆てくれた。

 そこから、会議は水車小屋作成の話に議題が変わった。


 必要な建材、資材を洗い出しリストにし、村から持って行く工具とグリュッグで購入する工具、持って行く現金などについてもリストを作った。


 値段設定に関しては、ももちゃんが4種類くらいの案を作り、表にした。

 その表には、各臼の1台1時間あたりに精白したり、製粉できる量を推察し、一定の量を一纏めにし、4つのカテゴリーに分ける。そこから計算して、1台1時間あたりの使用料を計算している。


 後は、ごんさんとみぃ君がグリュッグへ行き、パソとドブレと連絡を取り、工事を始めるだけになった。

 今度の移動はチャチャの強い要望で、チャチャの舟で行くことになった。


 ごんさんが作った竹の配管を乗せ、みぃ君とごんさんは船上の人となった。

 



 ごんさんたちはその日の夜、陽が暮れてからグリュッグの町に着いた。

 チャチャはやっぱり自分の舟で寝るそうで、ごんさんとみぃ君は前回も泊まった『タヌキのねぐら』に泊まることとなった。


 夕食と朝食はやはり、宿のものを運ぶことにした。ごんさんが運んだのだが、もちろんチャチャが心待ちにしたのは、ももちゃんが作ったお酒の方だったので、たっぷりとお酒も付けた。

 チャチャは、本当にうれしそうな顔をして酒の入った革袋を受け取った。


 みぃ君は同じ頃、ドブレの家まで行き、あさってから仕事を手伝って欲しい旨、集合は朝一番で自分たちが泊っている宿へと伝えたところ、明日からでも合流できると言われたため、明日の朝から一緒に働くことになった。

 また、パソの参加可能な日についての聞き取りを行った。3日後から2日間来てくれるそうだ。



 翌日は、チャチャに朝食を運び、村へ帰るチャチャを見送った後、宿でドブレと待ち合わせて建材屋、石材屋、鍛冶屋、雑貨屋の順に回った。

 ドブレはこの一週間で、グリュッグの町にある全ての建材屋、石材屋、鍛冶屋を回ってごんさんの望む物がどこで売られているのかの大体の目途を付けてくれていた。


 なんてできる奴!これが、二人がドブレに抱いた感想だ。

 乾燥した木が必要だと言えば、2軒の建材屋へ連れて行ってくれた。

 杵にする重い木も無事見つかった。

 唯一、苦労したのは、水に漬けて乾かしても縮まったままになる直径のある丸太だが、別の建材屋でようやく見つかった。


 水に漬けると縮む木は、石臼に歯車の歯を付けるのが難しい時に、その丸太をくり抜いて石臼に被せるための物だ。そうしたら歯車の歯も取り付けやすいし、取り付けた歯も抜けづらくなるからだ。


 時間と工具、職人がいればもっと簡単に作れるのだろうが、短期間に作る事を目標にしているので、こんな回りくどい手を取ったが、もし2軒目を作るとしたらもっと楽に作りたいものだとごんさんは心の中で独り言ちした。


 石材屋では、臼の大きさと形状を見た。挽くタイプ、突くタイプ、どちらも店で売っている一番大きなものを2台づつ買った。そしてごんさんが図面を引いた水車と臼を繋ぐ中心となる軸を支える軸受けの設計図を渡し、できるだけ早く作ってもらう様にお願いした。

 石材屋は、3日後には倉庫まで運んでくれると請け負ってくれた。


 ごんさんが拘ったのは突くタイプの石臼で、杵で突くだけなので、臼の中で穀物が上下等、臼の中で対流ができる様に設計されていなければならなず、中に入れた物を万遍なく精白できないといけないし、同時に重い杵が降りてくる衝撃に耐えられる強いものにしなければならないからだ。

 結局臼の強さに重きを置き、割れづらい物を選んだ。


 次に鍛冶屋では、石臼を乗せる動く土台の為に、レールを作ってもらう事と、工具を買う事が目的だ。工具だが、村から持ってきたのこぎりとノミは使うとして、人数が増えるのだから、のこぎりとノミはもう1本づつ買ってもいいだろうということになった。後、トンカチやバール、釘も欲しいので、それらも購入した。


 レールは、この世界の鍛冶屋は見たことも作ったこともないものだから、図を描いて説明し、真っすぐでないといけないことを何度も強調し、発注を終えた。

ごんさんたちは、鍛冶屋から雑貨屋へと向かい、糸や紙、チョークそして刷毛を購入した。


 3日後からパソが2日間手伝いに入ってくれる事を再度確認して、この日の作業は終了した。


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