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大きな町へはいつ行くの?

 この1年でザンダル村に住めるようになり、借りた家の悪臭対策もうまく働いており、その他にも、トイレ、シャワー室、倉庫、床下収納、ベッドや机や椅子を揃えることができた。


 生活の方も、毎日の様に作業小屋へ行き広げて大きくなった畑からの収穫物や、塩、石鹸、ラード等を作りの継続と、ごんさんの罠も健在で、食べるのには困らなくなった。

 川魚の罠は、ごんさんの陸地の罠の餌とするために使っており、最近では食卓に上がる魚はルンバたちから海の魚を購入している。

 ごんさんの罠は、前程たくさん捕獲できなくなった。前は毎日、多い時は2~3匹獲れていたのが、今ではたまに1匹も獲れない日が混ざる様になった。

 ごんさん曰く、周りの動物も罠の存在に慣れてきたのではないかとのこと。

 鳥専用の罠、網はもともとそんなに多くの鳥を捕獲できていないが、それでもたまに捕獲できる時があるので、継続して使っている。


 畑では、じゃがいももどきやバナナの木、さとうきびもどきの他にも、青菜なども育てている。軽いスコールがあり、気温が高いせいか、収穫も多い。ごんさんが、こちらへ来た時に持っていたリンゴの芯から取り出した種は、もう少し気温の低い町に住んだ時に育てようと大事に村の家で保管している。


 4人の食事だけを考えれば毎日十分な収穫があるが、4人の生活を支え、小金を貯めることができているのは、実は村の酒場に卸している酒のお陰だ。

 作っても作っても需要に全然追いついていない。

 借りている村の家に併設されている倉庫は、酒樽でいっぱいだが、作れば作っただけすぐにはけるので、ももちゃんのお酒づくりに休みはほとんどない。


 もちろん、お酒を造るためのシロップづくりを担当しているめりるどんの仕事もほとんど休みがない。

 じゃあ、男性陣には休みがあるのかというと、そうではない。

 畑の周りは常にジャングルが押し寄せてくる危険があるので、みぃ君とごんさんが毎日畑作業をしつつ、ジャングルから伸びてくる枝や、増える雑草の始末をしている。


 ごんさんは、それに加えて罠も担当しており、みぃ君は手が空けば、ジャングルからいろんなものを採集してきてくれる。主に、めりるどんが作業している煮炊きや、村での食事の支度などで使う薪や、酒造りの材料となるフルーツ、籠つくりなどの材料だ。


 4人の作業分担がほぼほぼ決まった形になり、毎日恙なく過ごしている。

 そんなある日の夕食時、ももちゃんがいつもの様に突然議題をぶち上げてくる。

 「ねぇねぇ、そろそろ大きな町へ行って、文字を覚えてくる時期になってる気がする。継ぎのないシーツを買ったり、石鹸を売って現金を増やしたり、街での不動産の値段を調べたり、砂糖シロップを砂糖にするために、多少高くても少量の砂糖を買ってくるとか、大きな町へ行かないと手に入らない物も多いしね。」


 ももちゃんの言うことももっともだと3人は思った。

 この村にずっと住むのも良いが、文明の利器が乏しいこの村では、毎日ずっと働いて、疲れて寝るという生活だけで、他に何もできない。

 村の人たちとも仲良くなり、かなり住みやすいとも言えるが、日本の文明と現地の文明の進歩の差を体感しているだけに、本来はもっと住みやすい場所に住み、自分たちが働くのではなく、人を使って事業ができるのではないかという案がもちゃんから出された。


 ごんさんなどは、体を動かす事は苦ではないのだが、それでも自分たちで動くよりも、会社を立ち上げ、人を雇用して管理する生活になれば、自分たちが本当にしたいことをできる時間も取れるので、ももちゃんの案は魅力的に映った。


 みぃ君はもともとラノベに親しんでいたので、ももちゃんのこの発想には一も二もなく同意だ。


 めりるどんも、4人でいろいろ作ったり、案を出したりするのは楽しいが、肩や肘が痛い時も休めない今の生活には厳しさを感じていたので、大筋でももちゃんの意見に賛成だ。


 「そこでね、みんなの意見を聞きたいんだ。」とももちゃんが身を乗り出す。

 「ザンダル村から一番近い中くらいの町グリュッグへ行くか、多少遠くても王都へ行くか。グリュッグなら、ザンダル村から船でまるまる1日かかる。王都なら、グリュッグから船で4日と陸路を馬車で3日間移動が必要になるよね。」とみんなの顔を一人一人見ながらももちゃんが話を続ける。これは、このザンダル村の知人たちから聞き取りした情報だ。


 「グリュッグへ行くことこを考えるなら、三通りの案があるんだ。一つは、王都へは行かず、ずっとグリュッグに住むということ。もう一つは、王都が最終目的だけど、ザンダルを出て、お金が貯まるまでグリュッグに住むという案。最後は、ザンダルに住んだまま、たまにグリュッグへ行って石鹸とかの軽量な商品を持ち込んで売り、必要な物だけを買って、本当にお金が貯まったらザンダルから王都へ移り住む案の計3つ。みんなはどれがいい?」


 「ももちゃんは、どの案がいいと思っているの?」とめりるどんがまずももちゃんの意見を聞いてきた。

 「私はね、ザンダルに住んだまま、時々グリュッグへ行き、物を売って、十分にお金が貯まったら王都へ直行っていうのを考えてるの。」と一切の躊躇もなくももちゃんが答えた。

 「本当は、間を挟まず王都で住めるならいいのだけれど、今は現金が足りないので、生産拠点でもあるザンダルからあまり遠くの町へ移住しちゃうのは実際的ではないと思うんだ。」


 「どうして、ももちゃんはそれがいいと思うの?」

 「えっとね、ザンダル村の家賃はあってなきが如しなので、お金を貯めやすいということ。ただ、村の生活ではお酒のみが現金収入に繋がっているので、現金収入を増やすためには大きな町へ行く必要があるけど、大きな町の家賃はおそらくだけどザンダルよりずっと高いはず。船で1日の距離ならば、石鹸とかならかなりの量運んで売り込む事は可能なはず。」


 「つまり、ももちゃんは、ザンダルの方が早くお金が貯まるという意見やな?」とももちゃんとめりるどんの会話にみぃ君が参加した。

 「そう、グリュッグとの距離がそこまで遠くないから、できる案だとは思うんだ。」


 「いい案なんじゃないか?ザンダルでは畑まで作ってるし、罠も作りやすい。つまり食費にほとんど金がかからんが、都会ではそうもいかんだろう。」とごんさんもももちゃんの意見に賛成の様だ。


 「私はね、どの案がいいかはわからないけど、まずはグリュッグへ一度行ってみて、物価や生活水準など、周辺に森やジャングルがあるかどうかなんかを調べてみるのもいいんじゃないかなと思うよ。決めるのはそれからでもいいと思うよ~。」とめりるどんが纏めてくれた。


 ザンダル村とグリュッグの町までは定期便の船などない。

 時々くる行商人の船などに乗せてもらうか、今回ベッグ村へ行った時の様に、ルンバたちにお金を払って乗せてもらうなどの手段しかない。

 陸路を歩いて移動というのは、かなりの部分ジャングルの中を歩くことになるので、できれば避けたい。


 「ごんさん、ルンバに泊まり込みで3日続けて舟を出してもらうには、いくら必要で、どんな時期ならOKなのか、頼むなら何日前に頼まないといけないのかとか、聞いてきてくれる?」

 「わかった。」

 ももちゃんのお願いを聞いて、その夜ごんさんとみぃ君は村の酒場へ行った。


 結局、ルンバたちの回答は、いつでも言ってくれれば舟は出せるとのことだった。1艘であれば、2泊3日で銀貨1枚、食事はこっち持ち。少量の酒を付けること。泊まる場所は船があるので、別に用意はいらないとのこと。乗客は最大で4名まで乗せることはできる。荷物は大きくなければ良いが、重たい物なら要相談とのことだった。2日前に声を掛けてもらえれば、できるだけ調整してくれるとのこと。


 4人は良く話し合って、できるだけ早くグリュッグへ様子見に行こうということになった。

 

 「グリュッグで効率よく回れる様に、何をするか計画を立てよう!」といつもの様にももちゃんが仕切る。4人で話し合って以下の様に決まった。


 【調べる事】 

 借りる場合と買う場合、両方の不動産の値段

 不動産物件の案件数とできれば主な物件の状態

 文字を学ぶ方法(本屋と教師について、できれば料金も)

 グリュッグの一般的な生活様式(石鹸は普及しているかなど)

 何が売れるかの市場調査

 付近に栽培ができる場所や、森など食材を簡単に得られる場所の有無

 

 【売買】

 石鹸を売る

 シーツ4枚または8枚、あれば袋型のシーツを買う

 精製された砂糖(少量で良い)

 工具類(値段による)


 【持って行く物】

 お金

 石鹸

 往復の食糧

 ルンバへのお酒の差し入れ


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