さて、どうしよう
==========<めりるどん視点>===========
早速、太陽観測の目印と自分の立ち位置を決めてみた。
ごんさんがそこで良いと言うので、そこで待機する事になった。
本当はじっとしているより探索の方がしたいんだけどなぁ・・・・。
靴に関しては、最初木の皮と蔦でサンダルをという意見もあったが、雑多な植物が生え、整地されていない獣道を歩く事を考え、またこの暑い最中上着を手に持って歩く不自由さも考慮し、木の葉っぱとどてらと蔦で足を覆うタイプの靴を作ることにした。
バナナの様な木があり、その大きくてしなやかな葉を使うことにした。
蔦を切る役のみぃ君が全員分のバナナもどきの葉を集めることになった。
このバナナの様な木については、正式な名前が分かるまではバナナと呼ぶことにした。
時期が悪いのか、それとも元々実を付けない木なのかわからないが、どの木にも実はついていない。
私が太陽観察をしている広場から、ごんさんは右手に、ももちゃんは左手に移動し、食べれるものはないか探索をはじめる。
みぃ君は、先にできるだけ大きなバナナの葉を数枚採集し、その後蔦を切ることにした様だ。
私は太陽観測だけでは暇なので、比較的尖った形の石を探し、どてらの解体をはじめる事にした。
体感だが時間にして1時間半くらい経っただろうか。
みぃ君が大量の蔦とバナナの葉を抱えて広場へ戻って来た。
そしてしばらくしてももちゃんが少量の白い実とキノコの様なものを抱えて戻って来た。
「食べられるかどうか分からないけど、私にはこれくらいしか採ってこれなかった。ごめん」といいつつ大きなバナナの葉の上に置く。
「キノコは毒があるかもなので、こっちの葉に置くね。混ぜない方が安心だもね」
本当は、木の上に登れれば高いところにある果実も獲れたのだが、生まれて初めて木に登ろうと2・3度チャレンジした結果、見事失敗したため、比較的低い位置になっている実しか収穫できなかったのだ。キノコはだめだろうと思いつつも何もないよりはとキノコ類を採ってきたとの事。
ももちゃんが収穫物を置くと直ぐにごんさんも戻って来た。
「さすがに武器や罠がないので動物を捕らえるのは難しいなぁ」と言いながら、複数の種類の木の実のを同じバナナの葉の上に置いた。
そして、「付近に川はなかったよ」と忘れずに報告する。
それを聞いて「あっちにも川らしきものはなかったねぇ」とあわててももちゃんも報告した。
食べ物を獲って来て何が難しいかというと、それが食べれるものなのかどうかどうやって判断するかということだ。ももちゃんはしばらく悩んでいたがパッと何か閃いた様で、「ごんさん、どれが食べれるものだと思う?」とごんさんに丸投げした。
サバイバルの経験があると言うのはこの状態において、一番安心できる特技だものね。
「そうだね、地球と同じなのかは分からないけれど、きのこは知らずに手を出すのは怖いなぁ。ここでも同じとは限らないけど、それでもリスクを冒すのはできるだけ避けたいんだ」とすまなそうな顔をした。
「いいよいいよ。ダメもとで拾ってきてるので、気にしないで」
「わかった。残りの果物も地球とは違うので、味も含めてどれが食べられるのか分からない。手分けして、各自の耳の後ろなどに小さく切り分けたものを塗って、数時間経って異常がなければ少量食べる。それで何ともなければ普通に食べるっていう方法が一番いいかなぁ」
「わかった」とももちゃんが納得したみたいだけれど、「パッチテストなら二の腕とかの方がよくない」とついつい口を挟んでしまった。
「うん。皮膚の弱いところならどこでもOKだよ。貼り付けてもいいし、塗ってもいい。大体1時間は様子見だな」
「じゃあ、果物も全部で5種類だから誰がどれを担当するか決めよう」とももちゃんがいつもの様に仕切り、みんな一種類づつ自分の担当する果物を決め、残った一つはごんさんが引き受けてくれた。
太陽の動きもめりるどんから報告があり、「そうか、なら地球と同じ条件ならここは北半球ということになる。であるなら、赤道に向かって歩いた方が果物も獲りやすいし、気温も北へ行くよりは過ごしやすい可能性がある。食べ物が採取できる環境の方が、集落がある可能性も高いので、あっち側へ向かって行こうと思う」と、ごんさんが一つの方向を指さす。
みぃ君は土の上に置いておいたバナナの葉を数枚掴み、「まずは靴つくりからやね」とごんさんの方を見た。ごんさんに教わらないと靴の作り方が分からないのだ。
みぃ君が採って来た大量の蔦を見て驚いたももちゃんが「おおお!みぃ君、蔦を大量に獲ってくれたんだね。蔦ってなかなか切れないから大変だったでしょう」とみぃ君を労った。その言葉に誘導される様に残りの二人もみぃ君の手もとを見ると、小さな擦り傷だらけになっていた。
「みぃ君の手、消毒できるといいんだけどね。手を洗う水すらなくて申し訳ない」と自分は太陽観察とどてらの解体しかしていない後ろめたさに駆られた。
「これくらい大丈夫やで」
ごんさんによると木の葉っぱで作る靴は摩耗が激しいかもしれないが、木の皮で作るより、足に優しく、バナナの木もあっちこっちに生えてるので、新しい葉と交換しながら歩くとかなり優秀な靴になりそうだとのこと。
太陽観察をしながらもみんなの足を包み込める大きめに切り分けたどてらを自分の前に並べた。ごんさんが葉にどういう切り目を入れればいいかをみんなに指導し、各自で靴を作り始めた。
靴作りには、どてらの解体に使った尖った石が大いに役立った。
葉に数か所切り目を入れ、その上にどてらの切れ端を置き、足をその上に乗せる。
入れた切れ目にそって葉を足に巻き付ける様に折り曲げ、足首の所で細い蔦を巻き付け、葉を留める。
素人では難しいからと、表がつるつるしたバナナの葉がばらけない様に、ごんさんがみんなの蔦を特殊な結び方で結び、歩いても葉がバラけない様にしてくれた。蔦で括り付けた葉の上部は、下向きに折り曲げ、留めた蔦に巻き込む様に押し込んでくれた。
ようやく中世の革靴の様な単純に足を覆っただけの靴ができた。
歩きやすいかと聞かれると、決してそんなことはないが、足を痛める事なく歩けるので素直にこの靴をありがたいと思った。
最初は、つるつるした葉の表面が災いして滑りやすいが、2・3歩あるくだけで葉の表面に傷ができるので、すぐに滑りづらくなるのも利点といえば利点だ。
「じゃあ、行きますか!!」とももちゃんの号令と共に、果物はみぃ君が着ていたカーディガンに包み背負い、蔦はももちゃんが輪にして右肩にひっかけて準備が整った。
「気温に気を付けながら進むので、暑すぎると感じたら遠慮なく言ってくれ」といいながらごんさんが先頭に立った。