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環境づくり その4

==========<ももちゃん視点>===========


 朝食後、ももちゃんはモリンタの家まで行き、なんとか言葉を教えて欲しいということを伝え、貨幣があるということを偶然知ることができた。


 言葉を教えて欲しいというのは、ほとんどジェスチャーで相手に伝え、ももちゃんたちの隣の家のおばさんを紹介してもらった。

 まぁ、その時のジェスチャーは他の3人には見せたくない。だって、絶対笑われるもん!

 で、その時、モリンタはおばさんに小さな入れ物に入った何かを渡し、おばさんは貨幣らしきものを彼に渡した。

 

 すかさずその時、貨幣の名前を聞いたところ「ジン」という答えが返ってきた。

「ジン」が貨幣と言う意味なのか、そもそも貨幣の単位の名前かは分からないが、おそらく「お金」と言いたい時に使えば良いと推察出来た。


 おばさんの家から帰る時、忙しそうにしているモリンタを無理矢理自分たちの家の裏手に連れて行き、排水溝を指し、水を捨てるジェスチャーをしたところ、OKという返事をもらった。ちゃんと意味伝わってるのかなぁ?まぁ、いいけど。

 モリンタは4人がシャワールームを作ろうとしているとは夢にも思わないだろうが、排水溝を使っても文句は言われないだろうことはわかった。

 これで安心してシャワールームを作れるなと、ももちゃんは胸を撫でおろした。


 トイレの方も予定地にモリンタを連れて行き、小屋の絵を描いて、足元を指さした。

 モリンタのOKが出たので、みぃ君はトイレの穴掘りを始め、ごんさんが、トイレの穴を覆う足場を作るために簡単に木の板を作った。水分を抜いた乾燥した木ではないので、早晩曲がるだろうが、元々が“移動式”トイレなので多少曲がりが強くなってきたら、別にトイレを作ればよいということだ。私はめりるどんと2人でごみ捨て場とトイレ周りに植える植木を近くのジャングルに採りに行った。


 男二人の作業よりも、女二人の作業の方が先に終わったので、女性だけで小屋へ向かって先に出発した。

 途中食糧を採集しながらの移動なので、小屋に到着する前にごんさんに追い付かれた。


「魚の方をお願い。俺は、動物の罠の方を見てくる」と、先に罠を確認しに行ったごんさんを見送って、めりるどんに川の罠をお願いし、私は小屋の屋根作りのためのヤシの葉を探しに行った。


 小屋づくりも2度目となるとだいぶん慣れてきて、1日で柱を立て、横板を数本渡す事ができた。

 今回はノコギリや鉈があることが幸いして、かなり頑丈そうな柱を用意できた。

 後は追々壁とする竹を組んだ物や、屋根にするヤシの葉集めて乗せたりという作業が残っている。この小屋は作業するための基地的な役割しかなく、中で寝たりしないので、扉をつけなくて良いので、比較的楽に作れる。しかも、基礎など作らず、地表に被せたかたちで建てているので、なおさら簡単に建てれる。屋根の上に小石を並べておけば、台風とかでない限り吹っ飛んだりしないだろうしね。


 そろそろ夕方という段になってごんさんが、「竹を割いて壁材を用意してから帰るから、先に戻って夕食を作っててくれ」と女性二人を先に小屋から帰宅させた。


「ねぇ、ももちゃん。そろそろ靴を作りたいんだけど、今日どっちかが夕食作ってる間に、もう一人が靴を作らない?」

「うん、わかった。ただ革のカットとかは男性にしてもらった方がいい気がするから、みぃ君にまだ体力が残ってたら、カットは手伝ってもらおう!」

「りょ~」このりょ~というのは、コミュでめりるどんが流行らせた了解っていう意味の言葉だ。そして偶然にもこの世界での「OK」の意味でもある。4人の中では最近この言葉がよく使われる。


 家に戻ると、穴掘りで疲れ切ったみぃ君が横になって涼んでいた。

 今日も台所の水がめは水で満タンだ。みぃ君が運んでくれた様だ。

 それとは別に竹もどきで作ったバケツ2つにも、水が並々と溜められていた。


「みぃ君!水をありがとう~。めっちゃ助かる~」

 ハンモックで横になってたみぃ君が徐に起き上がって、「いえいえ~。女性は井戸の周りでは体を拭きづらいからねぇ。そのバケツ持って食糧庫で体を拭くとええで~。おつかれさん~」と、いつもの様に気を使ってくれる。水汲みは本当に大変なので、とても助かる。ごんさんのサバイバル術は、もうそれなしには四人が生き残ることはできないくらいすごい技術だが、みぃ君の様にコツコツ、もくもくと作業を進めてくれる人がいるからこそ、生活環境が整うことも事実で、このコミュの良いところは、思いやりの気持ちや、相手のしてくれたことをちゃんと評価できるところにあると私は思っている。


 靴作りもあるからとめりるどんに先に体を拭いてもらい、その間、家の横へ行きトイレと植樹の作業の確認をしにいった。


「おおおお!」思わず大きな声が漏れた。

「みぃ君!すごいよ!トイレほぼほぼ出来てるじゃん。植木もいい感じ!このくらいの穴ならば、追加で掘らなくてもいいんじゃないかな?後は、トイレを囲う壁と屋根作りだね!!!」と家の中に走って入るなり思わず異様にはずんだ声が出てしまった。


 息せききって入ってきた私を見て、みぃ君が「うん、ただ、ゴミ捨て場の方は、地崩れを起こさない様にする補強はなんちゃって補強でええと思うんやけど、トイレの場合は穴の上を歩くことになるので、もうちょい強化しぃひんといけないなと思うとんねん。しゃんとした補強はもっと男手が必要なのと、今日作業しながら思うたんやけど、ごみ捨て場の方も雨水を除けるための簡単な屋根があった方が、せっかく掘った穴が崩れんかなとも思たんや。明日はみんなでここに残って、シャワー室も含めて一気に作業したらどうかなぁ?人手が多い方が作業しやすいからなぁ」と提案してきた。


「いいねいいね。よし!今夜みんなで話してみよう~。みぃ君は、疲れているでしょうから、夕食までは横になって休んでてね~」とねぎらいの言葉を忘れない。本当にみぃ君にも感謝!ここ2日、たった一人で作業するって孤独だったと思うし、暑い最中の穴掘りは絶対体に堪えているはず。


 めりるどんの後にもう一つのバケツの水で体を拭いて夕食を作っている間、みぃ君は起きてきてごんさん様に井戸までバケツの水くみをしてくれ、その後はめりるどんが作る靴のお手伝いをしてくれる事になった。


「前にね、お友達の出産祝いで赤ちゃん用のフェルトの靴を作ったことあるんだけど、それの靴底が革バージョンでいいのかな?」とはめりるどん。実は彼女は裁縫が得意で、自分で作った様々な鞄を紹介するブログなどもアップしている程だ。

「え?めりるどん、靴作ったことあるの?」と台所で聞き耳を立ていたから、つい質問してしまった。

「いや、作ったって言っても赤ちゃんの靴だから歩くことを前提にしてない靴だし、型紙は売っていたものを使ったから、自分で型紙を引くのはちょっと厳しいかなぁ」と自信なさげなめりるどんだったが、「いやいや、一度でも作った事があるなら、やったことのある方法の方が安心感あるよ~」とのみぃ君の一言で、めりるどんが前に作ったベビーシューズを大人サイズで作ることになった。


「えっとね、これ、2つのパーツで作る靴でね」と家の外に出て土の上に型紙らしき絵を描き始めた。

「ももちゃん程絵は上手じゃないけど、こんな感じな型紙だったよ」


 めりるどんの絵を覗き込んだみぃ君もそして私も、この2つのピースで靴が作れるとはとうてい思えない形だったが、靴を作ったことのない私たちは、「ほほう」と感心することしかできなかった。

 一つは、取手のついた雪だるま型の棒アイスの様な形で、もう一つはキノコの様な形だった。


「ここね」と言って、めりるどんは、アイスの棒の部分を指さして、「こことこことを縫い合わせて、反対側も縫い合わせると踵の部分になるのよ」と雪だるまの底辺を指す。


 みぃ君は立体的な形が見えた様に「おおお!なるほど!」とうなづいている。だが、私には踵以外の部分がどうやれば靴になるのか分からなかった。


「こっちのね、きのこ型の方は、形にそって縫い目の穴を開けるの」とめりるどんが、きのこの山の部分を指さし、棒で二つの線を描いた。

「でね、こっちの踵のある方に合わせて、足の甲の部分になる様に縫い合わせるの」と説明してくれるが、みぃ君も私も何のことやら理解できなかった。

 

「とりあえずは、この形に革を切って針を通す穴を開けて欲しいんだけど、大きさを考えて製図しないとなので、靴を作る用の布を使って試行錯誤してみてもいい?」とめりるどんがすまなそうに提案する。

「このタイプの靴なら、本当は全部革で作る方が良いから、布は使わなくしても困らないと思う。製図を作るための布の靴もうまくいけば室内用の靴にできるから、無駄にはならないと思うけど、失敗したら雑巾にできるし・・・・って、失敗したらごめんね」

「とりあえず1足作ってみて、だめなら変えてみるってこともできるしね。気軽にやってみよう~」と号令だけは元気に締めくくる。だって元気良ければ大抵の事は上手く行くもんね。ニヤリ。


 みぃ君に布の上に足を置いてもらい、足にそって竈の灰を付けた棒でめりるどんが線を引く。そのまま布をみぃ君の足に沿って立て、靴の高さの見当をつけ、その高さに棒で線を引く。

 みぃ君に足をずらしてもらい、今度はつま先の方をきのこの山にして、きのこ型の絵を描いていく。


「たぶん、こんな感じだと思うけどダメだったから怖いから、この線から1.5センチくらいの余禄を残して、みぃ君布を切ってもらえる?」とめりるどんが、みぃ君にナイフを渡す。


 ナイフで布を切るのは存外難しいらしく、めりるどんがめいいっぱい力を入れて布を左右にひっぱり、みぃ君が布を切ろうとするが、布に張りを与えるのが二か所だけだとうまくいかないので、結局夕食作りをしていたももちゃんも布張りを手伝って固い物を定規の様に布の上に置き、それにそってナイフの先を走らす事でようやく布をカットできた。


「なんか波になってガタガタになったなぁ。布ってハサミじゃないと切りづらいものなんだなぁ」とちょっとしょんぼりしたみぃ君がつぶやく。

「これで十分だよ。みぃ君器用だから上手にできてる方だと思うよ~。どっちにしても私ではこんなに上手にナイフで布は切れないよ~」とめりるどんが、慰めるというより、本当に感心した様子でみぃ君を励ます。


 とりあえず夕陽がある内にということで、この布の靴を片方だけでもとめりるどんが縫い始めた。

 それを横でずっとみていたみぃ君が、「おおおお!これってこうなっていたのかぁ」となぜか弾んだ声をあげていた。あの型紙の意味がようやく腑に落ちたらしい。


 まつり縫いをせず、純粋に靴になるかどうかを見るためなので縫うのは早かった。

 フェルトや革ではないので、ペラペラの布だと縫っても自立してくれないので、履くまではどんな感じかはわかりづらかったが、みぃ君に履いてもらうと、デッキシューズで、意外とかっこいい靴になっていた。


「おおおおおおお!」みぃ君とももちゃんの大きな声が響いた。

「すごいよ、めりるどん!天才だよ!すごくいいね」

「大げさだよ、ももちゃん。これ、革で作ったらどんな風になるか分からないよ」と照れためりるどんに、「いやいや、これ布だからテロンテロンだけど、革で作ったらかっちりした靴になって更に良くなると思うよ~」ともう絶賛の声が止まらない。

「うんうん、これは想像以上やったなぁ」とみぃ君も感心することしきり。


「これね、どこに針穴を開けないといけないか印をつけた後、一旦解いて、革の上でトレースして、その後裏返しにして革にトレースすると、左右両方の靴ができるかなって」というめりるどんの意見に、二人とも「うんうん」と大賛成した。


 靴底になる皮に穴を開けるための道具は、生の鳥の骨を折ると先が尖るとごんさんに教えてもらって作った千枚通しもどきを使うことにして、ナイフで革を切ろうかと3人とも意気込んだが、そろそろ陽が陰り始めたので作業は明日にしようと言うことになった。解体する前の布の靴を、ごんさんにも見てもらおうという魂胆もあった。


「革の色が一色だから誰の靴かぱっと見て分かる工夫があるといいなぁ~」と夕食を作りながらめりるどんがぽつりと言った。


「おおお!それいい!とってもいいアイデア!」流石、めりるどんだ。

 特に私の足のサイズは大きいから男性陣と靴を取り違えることがありそうだもんね。

 小さい頃は「バカの大足」とちゃめっけたっぶりの父親にからかわれて、足が大きい事がコンプレックスなのだ。

 コンプレックスがあるからと言って突然足が小さくなるわけもなく、結局は男性陣と見分けのつかない大きさの靴が必要なので、他の人の靴と間違わない様にしたいという発想から色で区別するという発想は大歓迎だ。色を変えれるもの・・・・。


「それなら・・・靴紐の色を変えることで区別がつくじゃん!」

「おおお!ももちゃん、それもええ案や!」とみぃ君。


「紐に色を付けるやり方が分からないから、靴紐は色のついた蔦なんてどう?それなら着色の手間も必要ないし。着色料を見つけなくても済むしね」

「いやいや、柔軟性を考えると植物の外皮の方がええんやないか?」


 段々と興が乗って来たのか、3人は夕食の準備そっちのけでワイワイとやりながら、靴についてのアイデア合戦を始めた。


 ちょうどその時、ごんさんが帰宅した。

「おっ?みんな集まってどうしたの?」

「見て見て!ごんさん。最初の靴ができたよ~」とうれしそうにめりるどんが靴を掲げる。「布の試作品だけど、本物は革で作るよ~」


「おおおお!なんか普通に靴になってるな。見せて見せて」とさっそく布の靴を手にとり、矯めつ眇めつ靴を見回す。


 みぃ君が徐に「これは装着した方が分かりやすいので、世界一のモデル様が履いたるわぁ~」とニヤけて靴を履いた。


「すごいなぁ。履くと良く分かるなぁ~。本物のデッキシューズだ!」とごんさんが褒めると、「いやいや、赤ちゃん用の靴の作り方だから、歩きづらいものだと思うよ~」とめりるどんが真っ赤になりながら言い添えた。


「ソールを一枚中敷きできたら、足に優しい靴になるだろうし、今は革一枚の底だけどソールを工夫して踵の部分も当たって痛くない高さに調節できれば、歩きやすい靴になると思うぞ」とごんさんからも案が出てきた。


 靴作りの目途が立ち、楽しく夕食を食べている時、いつもの様に今日の作業の結果報告や、明日の予定についての話を進めた。


 ごんさんが小屋の中に棚を作ったこと。煮炊きの作業がしやすい様に川の側にかまどを作ったことを報告してくれて、みぃ君もトイレの作業についての報告をしてくれた。


 明日はみんなでトイレとシャワールームの作業をすることにし、その日は寝ることにした。

が、ごんさんが「俺はちょっと・・・。塩を少しもらってもいいかな?」とみんなが寝る仕度をしている時に切り出した。

「ん?塩?料理するの?」ときょとんとしたももちゃんが聞き返す。


「いや、もう酒がないのが限界でぇ・・・・貨幣の代わりに塩を持って行ったら飲ませてくれるかなと・・・」と言いつつ村で唯一の酒場のある方を見る。

「う~~ん。塩は作るのが大変だから、明日まで待ってくれたら交換できるものを作れるけど、明日までは待てないかな?」


「めりるどん、何を作るの?」明日までにめりるどんが作れる交換できるものって何だろうと言う好奇心が止まらず、ごんさんの返事を待たずに被せちゃった。

「えっとね、シャワールームができるのなら、食糧庫が脱着場になるから、戸の代わりになる暖簾を作ろうかと思ってるんだよね。ほら、切ったら中が空洞の植物あったじゃん?色も3色あったし・・・。蔦に通して模様になる様に作るつもりだったから、それをもう一つ作って酒場へ持って行けばお酒と交換してもらえるんじゃないかなぁって」

「おおお!いいねいいね。めりるどん、私もそれ作るの手伝うよ~」


 結局ごんさんはこの日もお酒にありつけなかったが、明日は必ず暖簾を仕上げて持たせるので、みぃ君と一緒に酒場でいろんな情報を仕入れてきて欲しいとみんなから酒場へ行くことをお願いされた。


 この日のごんさんの夢にはいろんなお酒が登場した・・・らしい。

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