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みぃ君の野望

「わては、高利貸しやってみたい」とみぃ君が一度俯いた後、決心したかの様に、目を爛々とさせて顔を正面に向け、3人の目を順番にしっかりと見た。


「わても、現実社会ならこんな事考えへんでぇ。でも、ここは異世界やから、日本では出来ん事やってみたいねん」とみぃ君が説明してくれるが、この考えは残りの3人には受け入れ難かった様で、とうとうももちゃんがしばしの沈黙の後、「うん。各自、自由に生きるのも大切よね。ただ、高利貸しともなると人の恨みを買う可能性もあるから・・・。みぃ君はみんなと別れてでも高利貸ししたいの?」とみぃ君の目を見て聞いた。

「そやな。別れてもやってみたいなぁ。こっちでしかでけへんことやし」とみぃ君が即答する。


 ももちゃんは一瞬言葉に詰まった様だったが、それでも声を振り絞った。「もし本気で高利貸ししたいなら、みぃ君以外に影響が出ない様に一旦は私たちから離れて別の町でやって欲しいかな。でも、みぃ君は一人になっても本当にその高利貸しをやってみたいの?」と再度問いただした。


「うん、異世界ってというか、ここが異世界って前提で言うけど、日本で出来ない事をやりたいなって。自分の国を造るのは絶対やってみたいし、国を造るなら軍隊は絶対いるし、そうなると武器を揃えないと軍隊はでけへん。それに高利貸しみたいな悪い事、日本ではでけへんけど、こっちでは体験可能やん。だから是非やってみたいねん」

「でも、そうなると、高利貸しをやる事で恨みを買ったりして、みんなに何等かの被害が及ぶのは避けたいんだよね。でも、みぃ君が一人になってもやりたいってことなら、それを止める事はでないなぁ。う~ん、悩ましい」とももちゃんが額に眉を寄せている。


「こっちの世界に来てから、もう数年経ってもうて、体の方も年を取って来てるから、昨日まで出来てた事が急にできんことなって、一旦出来ん事なっても、またいつの間にか元に戻ってたり、自分で自分の体をコントロールできんことなってもうて、そんな事考えると、今がギリギリ国を造る事がでる瀬戸際じゃなんかと思うてみたりな。」


「本当は、日本に戻りたいけど、どうやれば戻れるか分からないし、私も、っていうか、みんなで今まで頑張っては来てるけど、もし、これからもここに残るのなら、本当にやりたい事があるならやれば良いとは思う」とももちゃんが言う。


「分かった。そなら、わて、独立するわ。みんなとワイワイやるのは楽しいねんけど、年齢的にも国を興すなら、そろそろ着手せぇへんと難しい思うねん。んでもって、高利貸しはももちゃんが言う様に人の恨みを買いやすいから、わてはここから出るわぁ」とみぃ君が答えるとめりるどんも心配そうな顔でみぃ君の表情をしっかと見つめる。本気なのかと。

 ごんさんが「俺は、こういう面倒臭いのは避けたいから、俺もここから出るわぁ」と突然宣言した。

 「「えっ?」」と女性陣がビックリしてごんさんを見た。


 ももちゃんはしばらく無言で考えた後、「ごんさん、好きな様に暮らすのは大事だと思うから、私にはごんさんを止める事はできないんだけど、この世界に女性だけで暮らすっていうのは、正直私は怖いのね。めりるどんはどう?」

「うん、私も怖い」


「ということで、ごんさんが一人暮らしで何をするつもりなのか分からないけど、私たち3人に悪い影響が出ない事なら、手が空いてる時にちょくちょくここに顔を出して欲しいんだよね」とももちゃん。


「うん。分かった」

「で、ごんさんは独りになったら何をするの?」とももちゃん。

「私も興味がある。知りたい」とめりるどん。


「森で狩りをしたい。ザンダル村では罠を仕掛けての猟だったけど、罠じゃなくって武器で狩りをするのも精神鍛錬に有効だから俺的には森で暮らしたい。後、ポンフィが懐いてくれてるから、アイツを使って色んな事業みたいなこともやってみたいしな」

「ポンフィって、例の水車を勝手に回してた?」とめりるどんが聞くと、ごんさんが頷いた。


 ももちゃんも、めりるどんも沈痛な面持ちで下を向いていたが、ももちゃんが思い切った様に「分かった、ごんさん。ただ、ここにもちょくちょく様子を見に来て欲しいし、二人ともお金が必要なら言って欲しい。その時々でどこまで助けられるか分からないけど、寝て食べる所だけは確保しておくから」とももちゃんが言うと、「みぃ君の部屋も、ごんさんの部屋も、この宿にはちゃんと残しておくってことだよね」とめりるどんが確認して、それに男性陣2人は無言で頷いた。


 女性陣2人は心細そうな表情でお互いを見て、一度頷いてそれぞれの部屋へ入って行った。

 その様子は男性陣も見ていて、それぞれの歩む道が分かれても、できるだけ女性陣をサポートしようと思った。

 果たして、女二人だけでも大丈夫なのか、それはみんなが独立してみなければ分からない。

 少々無責任かなと思う気持ちもあるが、自分のやりたい事もやってみたいのは事実だ。

 そしてこの世界では男の方が女より自由に動けるし、女性を抱えているだけで足手まといに感じる事も偶にではあるがあったりはする。

 日本での知識や経験があるだけに、日本ではできない大きな事ができるかもしれない。

 それぞれの思惑を胸に、りんご亭の夜は更けていった。

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