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これからどうする?

 4人が王都へ出て来て4年半が過ぎた。

 今年のビアガーデンシーズンもついこの前終わった。

 出張公演もアイドルの売り出しも上手くいき、りんご亭の宿屋としての経営も順調、グリュッグやザンダル村での生産活動も滞りなく運営できている。そして芸能プロダクションと芸能学校の経営も順調だ。

 今では、マネージャーや芸人の数も増え、ももちゃんたちが無理やり自分たちで動かなくても、社員を動かす事でかなりの金額が4人の懐に入って来ており、事業もルーティンワーク化したものが殆どなので、天変地異が無い限り順調に見えた。

 いわゆる我が世の春を4人は満喫していた。


「ようやく今年のビアガーデンが終わったね。ふぅ~」とももちゃんがドカリと居間の椅子に座る。

「お疲れ~」と3人が労をねぎらってくれた。

「アイドルコンテストも定着になってきたねぇ」とめりるどんが感慨深げにつぶやいた。

 数はまだ少ないが、というかももちゃんたちが話し合って、あんまりアイドルを作らない方が良いだろうと、最近ではコンテスト出場者全員をデビューさせる事もなくなり、厳選してデビューさせている。


 4人の手を少し離れても芸能プロダクションの仕事は順調だ。

 りんご亭の舞台だけでなく、王都中のバーや食堂や、劇場での定期公演などもある。

 特に、アイドルたちは、大勢のファンに囲まれて、いつも警護の者たちが四苦八苦している。

 アイドルだけでなく、芸人たち全般の活動や、ブロマイドも、公演の入りも頗る良い。

 地方公演も増えた。

 また、今年、第3回目のアイドルコンテストも終了し、アイドル候補生も増えた。


 りんご亭の経営も順調だし、ザンダル村やグリュッグでの事業も現場の管理体制も整って、今や、ごんさんやみぃ君が毎月様子を見に行く必要がないのだ。


 4人は収入もそこそこになり、王都の都会的な生活も謳歌できており、さぁ、これからどうするか~といった感じである。


 夕食の後の打ち合わせも事業の事よりも、だんだんと雑談が多くなってきている。

「そう言えば、この国って兵役ってないよな」とごんさん。

「そうだよね、普通なら納税と一緒に兵役の義務とかありそうなもんなのにね」とめりるどんも以前から不思議に思っていたらしく、ごんさんの疑問にすぐ答えた。


「この国って軍隊がないらしいよ」とももちゃんが眉を顰めながら言った。

「え?兵役だけじゃなくって軍隊そのものがないの?ないってどういうこと?他国からの侵入はどうするの?」

「そこは、めりるどん、日本と同じだよ。外交努力のみで戦争を避けるって本気で言ってるみたいよ」

「えええーーー!」


「それって例の、国民は平和ボケ、軍隊はなくてもいいという論調が主流、外国に媚びを売った弱腰外交、愛国者は「ナショナリシスト」「ファシスト」っていうレッテル貼りされる国はどこだっていう外国人が出しているクイズの様なもんだな」とごんさん。

「あ、それロシアの侵略に苦しんでる国の人が言ってたやつだよね。最初に聞いた時はてっきり日本の事かと思ったよ」とめりるどんが言うとももちゃんも「うんうん」と大きく頭を縦に振っている。


「『暴力は歴史上、もっとも多くの事に決着をつけてきた。』解決するとは言ってないんだけど、『これに反対するというのは最悪の希望的観測に過ぎない。この事実から目を背けようとする民族・種族は、その命と自由という高い代償を支払わされる。』って言ってた作家がいたけど、その通りだよね」とももちゃんが言った事に3人が大きく頷く。


「でも、赤服以外の軍人さん、見た事あるよ」とめりるどん。

「そや、わても見た事あるでぇ。家にも泊まった事あったしな。黒い制服の奴らやろ?」

「あ、それはこの国の軍じゃないみたい。帝国だっけ?この国の隣にある大きな国の軍がこの国に駐留してるらしいよ」

 ももちゃんから齎された今更ながらな情報に、残りの3人は心底驚いた様だ。

「うわぁ。日本に於ける米軍みたいなもの?」とめりるどんが顔を顰める。

「全く同じかどうかしらないけど、大体そんなものじゃないかなぁ」とももちゃん。


「しかし、この国に軍隊がないって、ほんまにどうやって国を守るつもりなんか・・・。兵役がないのはわて的にはありがたいけど、せやけど、国が占領されたら兵役がぁとか言うとる場合じゃないよな」

「そうだよね。ももちゃん、本当に軍隊はないの?」めりるどんが懐疑的な表情を浮かべた。

「王の親衛隊はいるらしいよ。でも、それってさぁ、国を護ると言うよりも、王家を守るって事だから、意味が違うよね」

「この国大丈夫か?」とごんさん。

「「「う~~ん」」」と3人も心配そうな表情だ。


「ただ、最近、帝国へ鉱物を売りまくってて大儲けしてる人結構いるし、今の所帝国との仲は安泰なんじゃないかなぁ?」

「いや、ももちゃん、それは甘いよ。今の話を聞く限り、この国ってアメンチャだっけ?そのアメンチャ帝国の属国みたいな感じじゃない?日本みたいに年次改革要望書みたいなのを定期的に渡されて、帝国の好きにされてる可能性だってあるし、いつ帝国が牙を剥いて来るかわからんよ~」

「んだねぇ」とももちゃんが大げさなくらい大きく頷いて同意をめりるどんに示した。


 この国の防衛が杜撰だという暗い話題を変えようと、ももちゃんが話題を変えた。

「ねぇ、私たちの会社もかなり収入が増えて来たじゃん。それでこれからどうする?みんなは何がしたい?」と3人の顔を見回した。


「わては、高利貸しやってみたい。高利貸しで金貯めて、自分の国を作りたいねん」とみぃ君が言うと3人はピキっと固まった。

「殲滅」に続いて、みぃ君の大胆発言なのだが、さすがに高利貸しはぁ・・と3人の表情が固まった。


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