警護になれて、俺、幸せ
今回は短めです。すみません。
黒鷲組のバインドルは、頭脳労働をするからと言って、肉体労働を軽減してもらっているバンヤンが大きらいだった。
しかし、ある日、みんなで集まっての夕食の時間、「今日はこれからの仕事について案があるんだけど、聞いてもらえますか?」バンヤンがリーダーのガルバンの方を見ながら言った。
「実入りのいい仕事でもあったのか?」
「いえ、実入りが良いかどうかというと普通なんですが、危険性が低い上に、ずっと続く仕事なので、安定できるんですよ」
「安定?」
「はい」
「いったいどんな仕事なんっすか?」シルビオが横から口を挟んだ。
「りんご亭の女性アイドルの警護です」とバンヤンが言うと同時に、バインドルがガタっと席を立った。
「バインドルさん、あなたの仕事は常にジャギンナさんをはじめ、チョコ・ミントの面々の傍に居て、他の男から守る事なんですよ」
「うおぉぉぉぉーー!」とバインドルが吠えた。
「それで、どれくらい貰えるんだ?」とガルバンは冷静にバンヤンを問いただす。
「金額は材木運びとそんなに変わりませんが、森までの移動がないことと、夜が主体の仕事なので、夏でも熱くないことがメリットですかね。まぁ、仕事の間は酒とか飲めませんがね。ただ、夕方はりんご亭の賄い飯が付くので、その分、材木の仕事よりいいかなってとこです。後、俺は、マネージャーという仕事を担当するので、警備はみなさん3人だけになります。」
「マネージャーとは?」
「はい。ガルバンさん。女性だけじゃなくて男性の方の時間の調整とか、新しい仕事を取ってくるとか、そういう仕事です。俺は、体力がないから、警護には向かないので、マネージャーの仕事を用意してもらいました」と、バンヤンが説明するとガルバンは大きく頷いた。
「ただ、りんご亭が一つとっても気にしている事があるんですよ。」
「何だ?」
「バインドルさんが、女性アイドルに言い寄ったりしないかどうかなんです。」
「え?そりゃ、言い寄るだろう?ジャギンナなんだぞ。」とバインドルが悪びれず心情を暴露した。
「でも、だとしたら、今回の仕事は貰えないです。」
「「「えっ?」」」
「俺たちの仕事は、女性アイドルが不愉快にならない様に、押しかけて来たり、誘いを掛けて来る男の排除なんですが、警備にあたる人がそれをやっちゃいけないでしょう」と言うと、「う~~ん。」とガルバンが唸った後に、「バインドル、お前、ジャギンナにまた言い寄るつもりか?」と確認した。
「えっ?」絶句したバインドルを見ながら、「おまっ!何でちゃんとそんなことしねぇって言わないんだ?そう言ってちゃんと守れば、常にジャギンナの傍に居られるし、毎晩りんご亭の飯が食えるんだぞっ!」とシルビオが身を乗り出した!
これを聞いてバインドルの頭の中は、常にジャギンナと一緒というところが何度もリフレインされている。
この仕事を請けないなんて事は考えられない!
「俺!ちゃんとする!ジャギンナを煩わせない。常に傍に居られるなら良い」と漸くバインドルも今回の仕事を請ける上での条件を飲んだ。
かくして、この世界初のマネージャーが誕生したのだ。




