化粧品は必須?
「ももちゃん、オシロイバナって知ってる?」
「めりるどん、何それ?」
「これなんだけど、こっちでは何ていう名前なのかは知らないけど、日本にも似た植物があってね、これをこういう風に潰すと、ほら、ミクロの粉になるのよ」
「うんうん、それで?」
「それでね、名前から想像できると思うけど、これ白粉として使えるのよ」
「おおおおおおおおおおおお!!!!!」
「いくらシャンデリアでも、後ろの方の席の人は、化粧なしではみんなのっぺりした顔に見えるでしょ?だから、紅花?みたいなので口紅と、煤でアイラインや黛にして、でも、それをくっきりさせるためにもオシロイバナはどうかなって」
「うぉぉぉ。めりるどん、すごすぎ!色白は七難隠すって言うもんね。これはすごい!」
「でしょ?で、これって王都より北の村で結構生息しているらしんだけど、誰もまだ耕作してないんだよね。でね、でね、怒らないでね。勝手に栽培する様にその村の人に頼んだんだけど、どうかな?」
「めりるどん、怒る訳ないじゃん。すごいよ、これ。すごい。ありがとうーー!」とももちゃんは大はしゃぎ、早速練習場へめりるどんが用意してくれた化粧道具を持って、めりるどんと向かった。
男性ユニットの方は、公演の最後に出口に整列して、お客さんを見送るので、オシロイバナの様な真っ白な粉を顔に塗るのは論外だけど、煤で眉をキリリと描くのをやってみた。
眉がキリっとするだけで途端に男らしくなり、煙突掃除をする子供たちに、お小遣い程度の料金だが、煤を集めて来たら買うと言って集めさせて来た。
ガールズグループの皆は化粧について説明をし、実演してあげると化粧を大歓迎した。
真っ白になるとちょっと不気味になるから、小麦を少しすり潰した物を少量混ぜてみた。
日本のファンデーション程ではないが、少し肌色に近づき、不自然さは若干ではあるが解消され、シミ・そばかすや黒子なんかを隠してくれることと、白っぽい肌に煤でくっきりアイブロウとアイラインを入れる事で、目が強調され日本で言う美人に見える。
唇も真っ赤になり、同じ紅を惜しげもなく、瞼や鼻筋に沿って白粉の前に塗る事で、若干のっぺり加減も緩和されている。
「これでアイシャドウとかもあるといいんだけどね」というめりるどんの声に、「何かないかな?」と期待感いっぱいの目を向けるももちゃんであったが、すぐにアイデアはないのか、めりるどんは「ごめ~ん。また考えてみるよ」と返して来た。
小麦はアレルギーがあるといけないので、慎重に塗ってみたが、歌手のタチャも含め、女性タレントはみんな問題がなかった。
剣舞のタレントだけは、塗ってみたが、肌の露出が他のタレントより若干多いのと、激しく踊るので、汗等で化粧が斑になってしまうことから、化粧はなしの方向にさせてもらった。
ただ、紅だけはべっとりとつく物なので、塗る事にした。
しばらくすると街中でも若い女性が眉を煤で描いたり、紅を控えめにつけたりする様になった。
白粉はりんご亭でも売っているのだが、高いのでまだそんなに買って行く人はいないが、煤など自分の家でも用意できるもので化粧をしている様だ。
紅は更におしろいより高く、これは以前から雑貨屋で売られていたのだが、眉や目に化粧をして唇に何にもしないとアンバランスな印象になることから、おしろいは買わなくても紅は買うという現象が起こっている。
「あ~あ。折角化粧品が売れるなら、家に儲けの入る白粉が売れてくれればいいのに・・・」と愚痴るのはめりるどんだけど、化粧が巷で流行っているのはマンザラでもないようだった。
特に、女性タレントの影響は街中の女性に絶大で、りんご亭や他の食堂やバーに出入りしている訳でもないのに、新しい衣装を着せると、いつの間にか似た様な服を着て歩いている女性が増えているのである。
また、女性アイドルも男性アイドルも香水屋にバックアップさせ、アイドル毎に香水屋が調合した香水を付けさせて、事あるごとに宣伝させていた。
特に、女性アイドルグループは衣裳の色で、イメージカラーを決めているので、その色の花から作られた香水を3人に振り分け、それらの香水を、貴族をはじめ平民の女の人が買う度にりんご亭へマージンが入る様にしている。
アイドルの売り上げは、舞台だけではなく、ブロマイドはもちろんのこと、こういったタイアップ製品の売り上げなんかも関係してくるし、ももちゃんが用意した王都外れの訓練所に学校を設けて、アイドルや司会、衣装製作、作詞なんかのコースを設けて学費で儲けていたりもする。アイドルやアイドルの着ているものを見て、憧れている人たちが入学して来ている。
しかも、先生は、今現在、アイドルの衣装を縫ってくれている、例の未亡人に頼んだり、作詞もオルランドの手が空いている時にオルランドにも手伝ってもらっている。
どっちにしてもこうやってももちゃんやめりるどんがタレント学校の教師として教鞭をとる時間を捻出できたのも、アイドル専用のマネージャーを雇う事ができたからだ。
黒鷲組のバンヤンはかなり優秀だったのだ。
最近では、いろんな食堂を回って新たな仕事を取って来たり、ファンクラブの結成を提案して来たりと、ももちゃんにとって掘り出しものはアイドルよりもバンヤンの方だった。
誤字脱字報告をありがとうございます。感謝!