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塩ができたどーー!

==========<みぃくん視点>===========

 籠を編みながらめりるどんが横で同じくせっせと蔦を編みこんどるももちゃんにいたずらっぽくわろた。

「ねぇ、モリンタって森田って響きと似てない?」

「そうだねぇ。ここではこっそり森田君って呼んじゃうかぁ」とノリノリのももちゃん。

「でも、顔は西洋人なのに、森田ってどこの人よって感じだよね~」なんてたわいもない会話で二人は盛り上がっとる。


 その横では前の日にごんさんとわいが収穫してきた細い竹の様なもんを縦に割りながら、二人の話を聞くともなしに手を動かしとった。


「う~~~ん」とうなり声をあげてもうたら、めりるどんがどうしたのか聞いて来てん。この細い竹を切るとうっすら甘い匂いが漂うのがちょっと気になる。


 「おおお!それって、サトウキビじゃないのかな?色は違うけど、なんか沖縄土産でもらったサトウキビを思いだすよ。ただ、そんなにスパスパ切れるところを見ると違うのかな?サトウキビはめっちゃ固くて切り辛いからねぇ」と、サトウキビらしきものを簡単に切っとるわいの手元を見ながらももちゃんが「う~~~ん」とうなってん。


 結局このサトウキビもどきのパッチテストをしてから、舐めて確かめることってなってん。


 パッチテストが終われへんことには次にどんな作業が必要になるのか分かれへんので、しゃあないその直前までやっとった海水での塩作りに戻る事にした。


 最初、鍋ぎょうさんに汲んだ水は、海から小屋までの移動中に気ぃ付けとったにもかかわらず零れたりして少し量が減っとった。


 そのまま鍋を火にかけようとしたところ、中を覗き込んだめりるどんが警鐘を鳴らした。

「海から汲んできたままだと、何が入っているかわからないから濾過した方が安全じゃない?」


「そういえば、にがい塩にしないために濾過するっていうの聞いたことあるね」とももちゃんが、本人もどこから仕入れてきたのかすら覚えてへんなんちゃって知識を披露し、結局安全面と味の面を考慮して濾過は3回することになったわ。


 煮詰める前の海水を3回も濾過すると、水の量も多いので手間だちゅうことになり、安全面を考えて火にかける前に一回のこぎりをつこて作ったおばけ竹の桶2つをつこて濾過し、海水がある程度、煮詰まったら2度目・3度目の濾過をすることになってん。


 2回目の濾過が終わって海水を煮詰めとる間に、サトウキビもどきのカットを担当しとったのはわてやが、沸騰してきた海水をきれいに洗った木の棒でかき混ぜることも担当した。

 すると、だんだんと結晶化した塩ができてくる。まだまだ水分をぎょうさん含んだ塩やけど、塩は塩や。


 最後の水分を飛ばす段になってからは、焦げるかもしれへんと火加減に気ぃ付けて鍋につきっきりになってん。

 造りはじめから4時間で、4人が知っとる塩の形になってくる。


 わてが塩を作っとる間、ごんさんはピンクの竹をつこて飲料水のサンドフィルターと浄化した水を受ける竹タンクを作っとる。器用なやっちゃ。

 かてて加えてのこぎりがあるので、楽々と作れる様で、その作業に淀みはあれへん。


 ずっと火の側で作業してたから、汗だくだくや。ほんでひょいと鍋の中を覗き込んでみた。

「はぁ、ようやっと塩ができたぁ~」

 ここではスイッチを押したり捻ったりするだけで火が点いたりせぇへん。火加減を見ながら乾いた木をくべなくなあかんし、長時間火を炊くちゅうことはけっこうなエライんや。

 ジャングルの暑さの中、ずっと火の側っちゅうのもごっそり体力を持っていかれ、火ぃの番がしんどい仕事になっとる。


 出来上がった塩を前にはしゃぐ女二人。

「ごくろうさま~。塩だー!塩だーー!」


「せやかてあれだけの海水がこれっぽちの塩にしかならんのかぁ・・・」と出来た塩の量を見て、手ぇに持っとった棒をポトリを落としもってがっくりと肩を落としてもうたわ。

 めりるどんが「いやいや、意外と塩って取れるんだなぁってびっくりしてたのよ。重労働な作業をしなければならなかったみぃ君からしたら不本意かもしれないけど。私のイメージではもっと少量かと思ってた」と言うと、「私も~」とももちゃん。


 なんとなく納得がいかないが、なんしか今夜から塩味のする料理が食べ れるからええかと気分を切り替え、パッチテストの結果を確認した。

「パッチテストはOKみたいやさけ、舐めてみるかぁ~」と、浄水器と水タンクを作り終ったごんさんも入れ4人でサトウキビもどきを舐めてみた。


「うんうん、甘い!」と4人とも甘いっちゅう意見で一致し、これは砂糖も作らんとなとはよ作りたい気持ちになったけど、今日はさすがに塩づくりで難儀やったさけ、砂糖は明日にでもっちゅう話になったわ。ある意味ほっとした。


 久しぶりの塩味のある焼き魚に、みんな大いに夕食を楽しんでん。あまりのうれしさに、最初は焼く予定ではなかったお肉も少し、塩を振って焼いて食べることになったわ。それくらい塩のある食卓に4人は狂喜した。


 誰ぞサトウキビから砂糖を作る方法しらへんか?ちゅうのが夕食での会話やったけど、実際に砂糖を作った者はいなかった。

 そんな中ももちゃんが、「昔ね、沖縄土産でサトウキビをもらったことはあるんだけどね、そのお土産の袋に砂糖の作り方が書いてあって、途中で砂糖を入れないと結晶化が難しいみたいなことが書いてあった気がする・・・」と、砂糖がなければ砂糖を作れないんかいっ!とみんな心の中で突っ込んだで。


 めりるどんが思案顔で、「ちょっと気になったのがね、塩と違って砂糖は火にかけえると焦げやすいと思うんだよね~」と言うと、「あっ!そうか、焦がしたらキャラメルになっちゃうね」とももちゃん。


「う~~~ん。どうしたらいいんだろうねぇ」とみんなでしばし考えとってんけど、こないな生活の知恵的な考察が深いめりるどんが、「じゃあ、湯煎はどうかな?直接鍋を火にかけるわけじゃないから、焦げにくいよね」とみんなが納得する意見を出してくれはった。流石や。


 湯煎と聞いてももちゃんは、頭の上に光っとる電球が浮かんだかの様にニヤリとした。

「湯煎なら、鍋がもう一ついるね。それも大きさの違う鍋でないとね」

 ももちゃんの指摘で、砂糖はもう一つ鍋を手に入れてからっちゅう事になってん。


 砂糖がなければ砂糖が作られなんだら、砂糖を手に入れられればベストやけど、多分ややこいやろちゅうことになり、無理に砂糖にまで精製せずとも、砂糖になる手前のシロップ状のもんでもええのやないかっちゅう意見が出てきて、その意見に落ち着いた。


 ごんさんが、「砂糖の前にラードも作るなら砂糖は後回しでもいいかもしれないね」と提案してくれはった。

 しかし、ラード作りでも布で濾すなどの作業が入るので、油でギトギトになった布がどれくらいその後の使用に耐えるのか分からず、先に砂糖を作ってからラードを作った方がええっちゅう話に落ち着いた。


 「ならば、シロップを入れられるような入れ物も物々交換しないとね」とめりるどんが言うたことが呼び水となって、今度の交換で何を手に入れるかっちゅう話へ移行した。


 結局、2つ目の鍋とシロップ用の入れもん、できることならフィルター替わりになる布をもっと手に入れる為に、もっと動物を獲って、買い物籠を作ろうちゅうことになってん。


 ほんで優先順位は少し落ちるが、出来る事ならみんなの靴を手に入れたいっちゅう話も出て来て、もし、あの村で靴がないようであれば、自分たちが獲ってくる動物の皮で作ってもらえへんかちゅうことも含めて交渉しようっちゅう話になってん。


 「むむむ。どうやって伝えるか、今からちょっと考えてみるよ」とももちゃんが、言葉が通じへんからこその工夫をいろいろ考えとる様子やった。


 前回の交換の時、デザインによっては多少無理な物々交換をしてもらえそうだと分かったさかいに、できるだけデザインや色合いが重ならへん買い物籠を作ろうっちゅう話になってん。ごんさんから蔦の皮の様な乾いた紐状のもんをリボンみたいにでけへんかっちゅう案も出てきた。


「よく幅広の藁みたいなもので麦わら帽子にぐるっとまきつけて蝶々結びしてあるのとか見た事あるから、蔦の皮を剥いでそういうの出来ないかなって」

「おおおお!ごんさん、それいい!めっちゃいい!」とめりるどん。「だってね、リボンにできるならコサージュにもできるってことじゃん。デザインの幅広がるね!」


「おおおお!リボンとコサージュ!目からウロコだぁぁ。いろんなデザインの物を持って行けば、いろんな人が交換してくれる可能性が跳ね上がるね。すご~~~い!」と、リボンとコサージュを作ることはももちゃんの中では既定の方針ってなってん様やった。


 さっそく翌日ごんさんとわてで蔦刈りとリボン用の蔦の皮はぎ作業が始まった。

 蔦も太さが少しちゃうが、焦げ茶色のものも見つかった。

 これで赤、黄色、黒、焦げ茶色の蔦が手に入り、編み模様もバリエーションが増えたと籠職人と化した女性陣二人が喜んだ。少しづつ買い物籠工房も充実していくのやった。

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