第七歩
ロハス家の家系はこの世界ではありふれた構成と言っても可笑しくはない。
長男、アルフレッド・ロハス。風属性の魔法を得意としており、次代のロハス家当主と言われ様々な場所でいい噂を聞く。表裏が無くとても出来た人間であるが、表の方では女っ気がないためもしかしたらそっちの気があるのでは、と言われている。が、彼は既に一般の家系から出た女性、アビゲイル・ウィッシュハートと既に婚約をしており、自分に対して文句を言える人間が居なくなったところで公開しようと思っている。お見合いは全部断っている。
次男、デイビット・A・ロハス。火属性の魔法を得意とする男だ。兄のアルフとは違い言葉使いも礼儀もお世辞にも良いとは言えないが魔法の腕はアルフに劣らないと言われ魔法の腕は評価されている。兄の影でずっと兄に比べられてきたからか兄に対するコンプレックスは大きい。こんな性格になってしまったのもそのせいか、とも言われてはいる。一応家の付き合いに顔を出す際は一応礼儀を弁えた行動をしてはいる。
そして、三男。レオナルド・J・ロハス。ロハス家の中で唯一魔法が使えない、落ちこぼれにして無能。付き合いにも一切顔を出される事はなく、縁切りをされる。
「……まぁ、僕の兄弟に関してはこんな感じ」
「何というか、良い所の家出身だからっていう問題が……」
それらの事情を噛み砕いた物をレオンはフィルへと説明していた。
帰るのに少し遅れたレオンは既にシャワーを浴び終わって髪の毛と羽を乾かしていたフィルへ食事と換金した分の内、フィルの取り分を渡すと遅れた理由としてデイヴと会って少し揉めた事を話した。そしてフィルが少しレオンの兄弟関係について気になっていたのでレオンが関係に関してを軽く話した。
シャワーを浴びてすぐだからか若干頬が赤くなっているフィルは血の赤に顔を染めていた時よりもどうにも色っぽく見えてしまい、風呂上り特有の少女の仄かに甘い匂いにレオンは少し理性を殴られるのを感じながらそれを忘れるため食事であるサンドイッチに口をつけた。
昨日吐瀉物処理のために入った時よりもフィルという異性を何処か強く感じてしまいレオンは若干平静じゃない。それを悟られないようにするためにも戦いとは関係ない彼の身の上話は役立ってくれた。
「しかもデイヴ兄さんは色狂いだからね。昨日とは違う女の子と腕組んで歩いているとか結構見たよ。しかも全員美人か凄く可愛いか」
自分に見せつけるようにキスしていた時もあった。だがレオンはそうやって寄ってくる女は大体が家や財産目的だと分かっていたので別に悔しくもなんともなかった。それがデイヴの琴線に触れていたか触れていなかったかを聞かれれば確実に前者であろう。
上を見続けたせいで人を見下したくて仕方がない。彼はそういう人間だ。だからそういう人間を相手にするだけ無駄なのだと彼は物心付いたときには学んでいた。有難迷惑な兄だ。
「だからフィルも気を付けてね。あの人、普通に気に入った女性は寝取るとかやってくるから」
フィルはレオンの言葉を聞いて首を小さく傾げた。
「……なんで私?」
どうしてその忠告を自分にするのだろうか。そんな疑問があったのでフィルは首を傾げながらサンドイッチを食べる。
「だってフィル可愛いし」
自分でもそう言っていたし。とレオンは本心を口にしてサンドイッチを食べた。
そして一緒に買ってきた水を一口含んだところでフィルの顔が先ほどよりも赤いのを見てしまった。どうやら照れているのか驚いたような顔で口を開閉させている。
そういえば彼女が自分が可愛い云々と言っていたのは酔っている時だっけか、と当時の状況を思い出してからちょっと揶揄うために笑う。
「あれ? 照れてる?」
「そ、そんな事言われたの初めてだし……」
にやにや。照れて視線を逸らすフィルを見つめていると無言で拳が飛んできた。勿論その程度なら避けた。
顔を赤くしながら悔しそうに拳を握るフィルは手に持っていたサンドイッチを一気に口に押し込んだ。照れ隠しだろうと思いながらもそろそろ揶揄うのを止める。じゃないと本気の拳が飛んできそうだ。
羽を広げて威嚇してくるフィルにどうどう、と両手を見せてなんとか怒りを鎮めてからレオンも口にサンドイッチを押し込んで水で流し込む。
「まぁ、僕の方もアルフ兄さんにデイヴ兄さんが何かしてこないように圧をかけるよう言ってみるよ。多分、このままデイヴ兄さんとフィルが会わないで済むなんてこと、ないだろうし」
コネは最大限使うべきだ、と。
こんな事で兄を頼るのは情けなくはあるが今はフィルの事が大事だ。彼女がデイヴに何かされているのに無力故に何もできない、なんて状況は真っ平ごめんだ。だから、自分のためではなくフィルのため、仲間のために自身にある少なくも強力なコネを使う。意地は張るときと張らないとき。しっかりと見極めないと後で大変なことになる。
「そういう訳で明日、アルフ兄さんと話してくるよ。フィルも最近前でずっと動いてたし明日は休んでてよ」
「うーん……でも暇だし」
「じゃあ一緒にアルフ兄さんの所に行く? 僕がいなくてもアルフ兄さんを頼れるようにさ」
それに、アルフの元にはアビーもいる。女同士で何か相談したいときもアルフの家を知っておけば一人アビーに相談しに向かうことは可能だろう。アビーの女子力の高さはレオンもよく知っている。
「……じゃあそうする。行く場所ないし」
「分かった。まぁアポは取ってないけど大丈夫かな」
レオンはちょっと不安な事を口にしてから女の子の部屋に用もないのに長居はするべきではないと思いそのまま部屋を出て行った。
さて、なんだか嫌な予感がしてきた、なんて思いながらレオンは部屋に帰るとそのままベッドに寝転がり目を閉じた。
結局その日はそのまま寝てしまい朝になってからシャワーを浴びる羽目になった。
****
「アルフ? アルフならちょっと用事で出かけてるわよ?」
二人で住むには少し大きいんじゃないかと思う一軒家。アルフがロハス家に内緒で購入した新築の一軒家の玄関から顔を覗かせるアビーは訪ねてきた非武装の義弟とその仲間の少女に対してそう言った。
その言葉を聞いてレオンは顔を抑えた。アルフはああ見えてもロハス家長男。やらなくてはならない事はそれこそ山のようにあるだろうしアビーと二人で暮らす金を稼ぐという事もあり多忙で家にいないというのはよく考えれば思い至った事だ。こんな事ならアポが取れた日にしておくべきだった、なんて思いながらフィルの呆れたような視線に小さく謝罪を返す。
「まぁ、折角来たんなら上がっていったら?」
「いいの?」
「えぇ。可愛い義弟が遊びに来たんだもの。私も暇だし上がっていきなさいな」
そんな声を聞いてレオンはフィルと顔を合わせ、せっかく来たんだし。そしてアルフに言いたかったことはアビーに伝言として伝えておこうと決めてアビーの手招きに従いアルフ、アビー宅に入った。
レオンがこの家が出来たとこっそりアルフに教えてもらったのは今から一年ちょっと前。まだまだ新築の家は主婦であるアビーがしっかりと掃除をしているのか隅々まで掃除が行き届いており、置いてある家具は実家から使わないものを貰ってきたのか見慣れた家具が幾つか置いてある。
庶民派であるアルフはあまり高級感漂う物を好まないため家の中は名家の長男とその嫁の物とは思えないくらいにはスッキリとしていた。フィルはそれが少し意外だったのか少し家の中を見回している。
「アルフみたいな人がこういう家に住んでるのは意外?」
「えっと……少し」
それがアビーにバレたフィルは少し申し訳なさそうに呟いた。
が、アビーはいいのよ、と口にして二人をソファに座らせた。
「私も最初、アルフが高級品はあまり好きじゃないって聞いてビックリしたから」
二人を座らせている間に紅茶と茶菓子をササッと用意したアビーはそう言いながら二人の前に紅茶と茶菓子を置いた。インスタントでごめんね、と言ってくるアビーだったが急な来客にも丁寧に対応してくれるアビーに礼を言ってから紅茶を飲んだ。ザ・インスタントな味だった。
「さて、アルフに何の用だったの? 今日はアルフ遅くなるから伝えておくわよ? それとも帰ってくるまでここに居る?」
「いや、流石にそれは申し訳ないから……」
流石にそんな夜までこの家で厄介になるわけにはいかないのでレオンはアルフに話す予定だったデイヴに関してを口にする。
「あー……デイヴ君がねぇ……」
「アビーさんもその人に対して何か?」
「アルフと付き合い始めた頃に何処から嗅ぎ付けてきたのか知らないけど俺の妾になれとか言ってきてねぇ。ビンタして追っ払ったのよ」
そんな事もあったなぁとレオンは思い出しながらフィルはまだ見たことのないデイヴに対する評価を一気に下げる。まさか兄の彼女を口説きとも言えない口説きで、妾にしようとしてくるとは。
ちなみにその後、アルフはアビーと付き合っていると両親に露見したため振ったとその場で嘘を吐いた。そしてデイヴはアルフが直々に脅した。何をしたのかは不明だがそれ以降デイヴはアビーに関するアクションを何もしていないのを見るに相当キツい脅しをかけたのが分かる。だが実は隠れてアビーと結婚までしたとアルフ自身がバラすのも近いだろう。
「話は分かったわ。こっちからアルフに言っておく」
「ありがとう、アビー義姉さん」
「いいのよ、これくらい。それに、未来の義妹の危機でもあるんだし」
『未来の義妹?』
その言葉にレオンとフィルは同時に疑問の言葉を出した。
二人の声を聞いてあら? とアビーは不思議なものを聞いたと言わんばかりの声を出した。
「フィルちゃんってレオン君と付き合ってるんじゃないの?」
だから組んでるんじゃ、なんてアビーは口にした。
だが、レオンとアビーはまだそんな男女の関係ではなく単純に戦う仲間の関係。それどころかつい先日知り合った仲だ。そんな爆速で関係が変わっていくわけがない。
まだそういう煽りに耐性がない二人は顔を赤くしながらそれを否定した。
「ぼ、僕とフィルはそんな関係じゃないよ!」
「か、揶揄わないでください!」
「えぇ~? お似合いだと思うんだけどなぁ」
それに、フィルちゃんが義妹なら私も嬉しいし。と言いながらアビーがフィルに抱き着いた。
またもやいきなり抱き着いてきたアビーに驚いてフィルの羽が一気に広がる。それに当たったレオンがいたっ。と小さく声に出す。そして嬉しいのかぱたぱたと小さく羽ばたく。それに当たり続けるレオンが何度も小さくいたっ。と声に出す。
だがフィルの羽は予想以上にもふもふで多少痛くても当たるたびになんだか癒される。なんだかこの羽を枕にして寝てみたい、なんて思いながらもフィルの羽ばたく速度は収まらない。このまま飛んでしまいそうだ。
「レオン君可愛いし優しいし。かなり優良物件だと思うよぉ?」
「いや、可愛いって……せめてかっこいいって」
「レオンがかっこいいは無い。どっちかと言ったら女顔だし」
「そうそう」
「二人ともひどい」
彼の兄であるアルフもレオン位の歳の時はどちらかと言えば女顔だった。それから今に至るまでに優し気な好青年、という顔になっていった。そのためアルフかデイヴか。どっちに似ているかと言われたらアルフ似のレオンが女顔と言われるのは仕方のない事だった。ちゃんと化粧をして女装をしたら女にしか見えない位には女顔だ。
しかもレオンは夜更かししてまで魔法を使えるようにするために訓練してきたからか身長が低い。百五十にギリギリ届かないフィルと並んでもそこまで身長差が見られない位には低い。その点もレオンの印象を可愛いに留めてしまう理由の一つであるだろう。だが彼もまだ十四歳。まだ希望はある。フィルはそろそろ希望もなくなりそうだが。
「でも、こういう仲間の関係から付き合って結婚とかよく聞くし、もしかしたらあるかもしれないわよ?」
アビーの言葉にレオンは否定の言葉をすぐに口にすることはできなかった。
男女の仲間が戦っていく内に段々と惹かれていき最終的に付き合って結婚、ということは珍しいことではない。むしろよく聞くことだ。
だからレオンとフィルがやがてそういう関係になる、という事はアビーにとっては容易に想像がついた。
「レオン君もそろそろ十五歳だし一人立ちしたんだし、そういう事に興味無い、なんて事はないんでしょ?」
「そ、そりゃ、無いわけじゃないけど……」
だが、フィルとそういう関係云々は考えたことがなかった。いや、考えなかったわけではない。考えようとしたら決まって思考をそれから明後日の方向へと飛ばしていただけだ。彼女に対する下心が全くない、という訳ではないのだ。
今日だって戦わないからお洒落な格好をしているフィルを見て一瞬息を詰まらせた。だがそれを悟られないようにしてお決まりで定番でお約束な言葉をかけただけにした。
彼女は戦いになれば頼もしいメスゴリラ改め拳法家であるが、それ以外ではタダの鳥獣人の美少女にしか見えないのだ。
照れながら視線を逸らして頬を掻くレオン。そんなレオンを見てフィルは昨日の仕返しと言わんばかりににやにやと。昨日調子に乗ってフィルを煽るんじゃなかったと後悔しながら照れ隠しに紅茶を飲む。熱い。
「私はレオンのことどっちかと言ったら好きだよ? でもまだ好感度が足りない」
「だ、誰もフィルに惚れてるとか言ってないし……」
「そんな顔で言われても」
「ぐ、うぅ……」
いつの間にかアビーの膝の上に座って丁度いいサイズのぬいぐるみのように抱かれているフィルに言われて反論が口から出てこない。出来るのは照れ隠しだけだ。
フィルに惚れていない、というのは本当だ。下心が無いわけではないが惚れてはいない。だが、今の自分は惚れている人間が表に出すような物、そしてそれを指摘されて反論した際の反応だ。フィルもレオンは自分に惚れていないと分かっているからこんな煽りが出来る。
「ぼ、僕だってフィルみたいな子よりかはアビー義姉さんみたいな人の方が好みだし……」
と、言いながらフィルとアビーのとある部分に目をやる。
フィルの年相応とは曲がりなりにも言えない平坦な部分とアビーの母性や女性感を示してくる二つの山がある部分を。
それに気が付いたフィルがそっとレオンの胸倉を掴んだ。
「地面さんのシミなってみるか? うん?」
「ごめんなさい」
彼女に笑顔で凄まれるとどうしても反論が出来ないレオンであった。
だが今回はレオンのセクハラじみた言葉が十割悪いので普通に謝る。フィルもさほど気にしていないのかそれとも自覚があるが故に怒りも沸いてこないのかレオンの胸倉をすぐに離した。そしてもう一人セクハラ発言の対象になったアビーは仲がいいのね、と笑っている。
なんとか地面のシミ化は回避できたレオンは改めて紅茶を飲んで軽い恐怖からの喉の渇きを潤した。フィルに地面とのコンビネーションをくらったら即死して地面のシミ化するのは目に見えているからフィルにとってはおふざけの脅迫でもレオンにとっては命懸けだ。
「ふぅ……じゃあ、伝えたいことも伝えれたので僕たちはもう行くね」
「もう? もう少しゆっくりしていけばいいのに」
「装備とか買えそうなら買っておきたいですし、ポーションもそろそろ持っておきたいので」
「ポーションねぇ。あ、そうだ」
アビーが立ち上がって居間から出て行った。二人でそれを見送ってから顔を合わせて小首を傾げると、二階からどったんばったんとアビーが何かしている音が聞こえてきた。
それから暫く。アビーは何やら瓶を四つほど抱えて戻ってきた。
「はい、餞別」
「え? これって……ポーション?」
アビーが持ってきたのは店売りのポーションだった。それも、今のレオンとフィルが常備していたら即破産するレベルで効果が良く高いポーション。
それをアビーは今、餞別と言って二人に二本ずつ渡してきたのだ。
効果が高いポーションはそれだけ傷の治りを早くしてくれたり痛み止めとしても作用してくれたりと安いポーションとは段違いの効果を持っているが、やはりその分高い。昨日の二人の稼ぎが丸々消えるレベルでこのポーションはお金をすっ飛ばしてくれるのだ。
「実は一昨日レオン君に会いに行ったのはこれを渡すためだったのよ。なのに忘れちゃっててね」
そういえば一昨日は駆除連合とは完全に無縁なアビーが駆除連合の酒場に居る事に殆ど疑問を持たなかった。今思えば結構可笑しい事だ。
だが、そう言われると何だか納得してしまう。のだが。
「さ、流石にこんな高級品貰えないよ……」
「それに、多分使うのも躊躇しちゃう……」
いくら身内からのプレゼントとはいえ流石にこれほどの高級品は受け取ることはできなかった。
一個だけでもレオンとフィル、二人が稼いだ稼ぎが全て吹っ飛んでも可笑しくないレベルの高級消耗品だ。それを笑顔で簡単に受け取るだなんて事は流石に出来なかった。
だがアビーは。
「いいのよ。誰もこれ使わないから」
「え? でもアルフ兄さんが……」
「アルフならこれよりもう何段階か上のポーションを使ってるわよ?」
その言葉を聞いて二人は卒倒しかけた。
これより上のポーションとなると剣に深く斬られた傷すらも一時間あれば殆ど治ってしまう程の効果を持つポーションだ。それ以上のポーションとなるともう一本だけで郊外の土地を一つ買えてしまうレベルの高級品となってしまう。
それには流石にアルフも手が出ないようではあるが、今レオンとフィルが持つポーションよりも上のポーションを常備しているというだけでもアルフは相当稼いでいるという証明になる。そして、その下のランクのポーションを四つも簡単に手渡せてしまうという事も。
「二人に受け取ってもらわないとこれ、捨てちゃう事になっちゃうのよ」
「す、捨てっ……? で、でもこれ病気の薬にもなるレベルだよ!?」
「それ以上の物が買えちゃうから使わないのよ。って、これ何だか成金で金持ちの嫌味にしか聞こえないわね」
笑いながら言うアビー。二人はそれにそんな事は、と否定の言葉を返してどうしようかと迷う。
こんな高級品を餞別と言われて簡単に貰える程二人の肝は据わっていない。だが、断っても彼女はきっと何をどうしようとこのポーションを二人に押し付けようとするだろう。
だから、断るだけ無駄だ。二人は困った顔を浮かべると、もうこれは受け取るしかないと割り切った。
「じゃあ、貰うよ」
「ありがとうございます。大切に使わせていただきます」
「えぇ、それでいいのよ」
そうして二人はかなり渋々、申し訳なさを感じながらポーションを受け取って笑顔で手を振るアビーに見送られてアルフ、アビー宅を出た。
「なんというか、とんでもないもの貰っちゃったね……」
「予想外中の予想外……」
二人は物理的にも意味合い的にも重くなったポーチを腰に吊るしながら道具屋へと向かう。
今日の予定は、後は適当な買い物だけだ。
レオンの貰ったポーションは一本を日本円に換算して一万円くらい。それを四本なので四万円。なお消耗品。