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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第7章
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第83話 巨人族

 オレはライラから頼まれて、ライラを背後から抱きしめていた。

 腕の中にいるライラは、大人しくオレに体を預けている。


 ライラはオレに抱きつくのも好きだが、オレに抱きつかれるのも好きだ。


「はぁ~……落ち着く」


 ライラは満ち足りた声で、そう云う。


「ライラ、本当にこれ好きだよな……」


 オレは少し呆れた様子で云う。

 かくいう俺も、ライラを抱きしめるのは好きだ。

 ライラの抱き心地は最高だ。

 眼下にはライラの頭と、たわわに実った胸が見える。


 ライラの胸を見て、ふとオレは思った。


(触っても……いいよね?)


 オレはそっと腕を動かしていき、ライラの胸へと手を近づけていく。

 幸いなことに、ライラはまだ気づいていないようだ。

 どうかこのまま、気づかないでくれ――!



 そのとき、列車全体にブレーキがかかった。



 前方から甲高いブレーキ音が聞こえてきて、オレとライラはベッドから床に投げ出されそうになる。


「きゃあっ!」

「うわっ!」


 オレはライラを離さないように、咄嗟に強くライラを抱きしめる。

 そのとき、オレはライラの胸を鷲掴みにてしまった。


 しかし残念なことに、感触を確かめている余裕は無かった。

 ブレーキが掛かって減速していく列車の中で、体勢を崩さないようにするので精いっぱいだった。


 やがて列車が停まると、オレはそっとライラを放した。


「あー、ビックリしたぁ……」


 ライラは服のシワを伸ばしながら云う。


「それにしても、何が起こったのかしら?」

「列車は停まっているみたいだけど……?」


 窓の外の風景は、全く動いていない。

 列車は完全に停まっている。


 ドンドンッ。

 今度はドアがノックされた。


「はいはい、どなたですか?」


 列車が謎の急停車かと思ったら、今度は急な来客か。

 忙しいな。


 オレがドアを開けると、パピィが立っていた。


「パピィ!?」

「すごいよ! すごいのよ!!」


 パピィはどういうわけか、かなり興奮している。


「ど、どうしたの?」

「パピィ、いったい何がすごいんだ?」


 オレたちは何がパピィをここまで興奮させているのか分からず、首をかしげる。

 するとパピィは、オレたちの手を取った。


「見ればわかるから! とにかく来て!」

「あっ、ちょ――!」


 パピィはオレたちの返事を待たず、オレたちを個室から連れ出した。

 すっかり選択権を奪われたオレたちは、パピィに連れられて個室から出され、さらには列車からも半ば強制的に下ろされてしまった。




「あれよ、あれ!」


 列車から下ろされたオレとライラは、パピィに促されて列車の前方を見る。


「「……!?」」


 オレたちは、絶句した。


 列車の前を、何人もの巨人族が歩いていた。

 巨人とはいえ、人族のような姿をしているものではない。巨大な岩がいくつもまとまって、人の形をしていた。それがまるで軍隊のように隊列を作り、レールを横断していく。

 オレは孤児院時代に読んだ本に出てきた、ゴーレムを思い出す。

 目の前を歩いていく巨人たちは、まさにゴーレムだ。


「巨人族は普段は温厚なんだけど、怒らせると集団で襲い掛かってくるから、巨人族を怒らせて生きて帰ってきた人は、ほとんどいないんだって! だから絶対に怒らせないようにしてね!」

「う、うん……巨人族なんて、初めて見た」

「さすがにあれに、喧嘩を売る勇気は無いなぁ……」


 騎士や列車強盗と戦って勝って来たオレでさえ、正直勝てる自信が無い。数メートル……いや、下手したら数十メートルもある巨人族相手に喧嘩を売るなんて、自殺行為にしか思えない。


「あぁ、こんなにたくさんの巨人族を見れるなんて、最高!」


 パピィは鼻息を荒くして、尻尾をブンブンと振った。

 どうしてパピィがこんなデカいものに夢中なのか。

 変わっているなと、オレたちは思った。


 それからしばらくして、巨人族が全て立ち去ると、オレたちは列車へと戻った。

 それと入れ替わるようにして、車掌や乗組員がオレたち以外の車外へ出ていた人に声をかけ、列車へと戻るよう促していく。

 車外へ出ていた人全員が列車に戻ると、アークティク・ターン号は再び動き出した。




 夕暮れの時間になると、突然汽笛が数回鳴り響いた。

 個室の中に居ても聞こえてくるほど大きな汽笛に、オレたちは驚いて個室から飛び出した。


「ビートくん、何かあったみたい!」

「大きな汽笛は、あまり良くないことの前兆のようなものだ。……ライラ、なんだか嫌な予感がするぞ」


 オレは自然と、ソードオフを取り出していた。

 そして、オレの予感は当たった。


「お客様にお知らせします! 巨人族の群れからはぐれた巨人が列車に接近中です! 繰り返します! 巨人族の群れからはぐれた巨人が列車に接近中です!」


 ブルカニロ車掌が走って来てそう告げ、すぐに次の車両へと向かっていく。


「きょ、巨人族!?」

「ビートくん、窓の外!!」

「!!」


 ライラが指さした先を見て、オレは目を見張った。


 列車と併走するように、1体の巨人族が走っていた。

 列車はかなりの速度で走っているはずなのに、巨人族は疲れる様子すら見せず、まるで感情が無い機械のように走り続ける。

 巨人族が列車を見る目は紅く光っていて、まるで血走っているようにオレたちには見えた。


 オレは昔観た、映画のワンシーンを思い出す。

 確か巨人族のような、巨大なロボットが列車と併走しているシーンがあった。

 まるで、その時観た映画の中に入ってしまったみたいだ。


 さすがにこればかりは、オレにはどうすることもできそうにない!


「どどど、どーしようこれ!?」

「列車に危害とか……加えてこないよね?」


 慌てて声が震える横で、ライラが云った。

 ライラ、その発言はフラグだ!!


 オレがそう思った直後だった。

 巨人族が、列車に近づいてきた!!


「わあ、止めてくれ!!」


 オレはソードオフの銃口を、窓の外の巨人族に向け、ライラを左腕で抱きかかえる。

 たとえ列車を破壊されたとしても、ライラの事は自分の命に代えても守る!




「ダメ!!」


 そのとき、聞き覚えのある声がした。


「えっ?」


 オレが声の聞こえた方を見ると、パピィがデッキにある出入口の窓から身を乗り出して、巨人族に話しかけていた。

 パピィ、危ない!!

 オレとライラはヒヤヒヤしながら、パピィを見る。


 パピィは真剣なまなざしで、巨人を見つめた。


「帰りなさい! あなたの居場所はここじゃない!」

「グオオッ!」


 巨人族が、声にならない言葉を話す。

 いったい、あれは何語だろう?


「いい子だから、仲間の元に帰るのよ!!」


 パピィはそう云うと、笛のようなものを奏で始める。

 あの笛は、いったいなんだ?

 笛は聞いたことのない、不思議な音色を奏でる。


 不思議な音色の笛が奏でる音を聞いた巨人の表情が、変わった。

 紅く光っていた目は、紅い光から穏やかな色へと変化していく。

 同時に、表情も険しいものから、少しずつ穏やかな表情へと変化していった。


 やがて、巨人は穏やかな表情に戻ると、列車から遠ざかって行く。

 オレとライラは目の前で起きていることが信じられず、顔を見合わせる。


 巨人の姿が見えなくなると、パピィは窓から列車の中へと、身体を戻した。




「あれは何だったの?」


 ライラが訊くと、パピィは胸を張って答えた。


「はぐれ巨人よ。時々、こうして巨人族の群れからはぐれた巨人が現れるの」

「さっきの笛のようなものは?」

「巨人をなだめるための笛よ。とあるゴーストタウンで見つけたの」


 売ったら、とんでもなく高い値段が付きそうだ。


「もう大丈夫なはずよ。巨人族は西大陸の中部にしかいないから」

「ありがとう。パピィ」

「いいのよ。さっきは私にとっても、ちょっとヤバかったからね」


 パピィはそう云って二カッと笑う。


「私は、図書館車にいるから、巨人族の事で知りたいことがあったら、いつでも訪ねてきてね」


 パピィはそう云うと、図書館車の方向へと向かって廊下を進んで行った。

 オレたちは巨人族の脅威が無くなって安心すると、個室へと戻った。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘、評価等お待ちしております!

次回更新は、7月9日21時更新予定です!

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