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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第1章
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第6話 強盗

 その日は、朝から嫌な予感(よかん)がしてならなかった。

 いつものように起き、いつものように朝食を食べる。


「ビートくん、おはよう」

「あ、おはよう」


 オレはいつものように、ライラに挨拶(あいさつ)を返す。

 しかし、嫌な予感は(ぬぐ)えない。


「どうしたの? 顔色(かおいろ)がよくないわよ?」

「え、そう……?」

「大丈夫?」


 オレはライラに心配を()けまいと、オレンジジュースを一気飲みする。


「……ぷはっ! ほら、大丈夫だって!」

「それならいいけど……」


 ライラはそう云って、隣に座って朝食を食べ始めた。



 オレの嫌な予感は、お昼前になって的中(てきちゆう)した。


「いやああ! 誰かっ、助け――」


 バキッ、ボコッ、ドガッ!


 お手伝いのオバさんの悲鳴(ひめい)と、その直後(ちよくご)に聞こえた鈍器(どんき)の音。

 それは全員に緊急事態(エマージエンシー)を告げるのに、十分すぎるものだった。


「なっ、何!? 今の音!?」

「何が起きたんだ?」

「怖いよー!」


 子どもたちが、一斉(いつせい)に騒ぎ出す。


「みなさん落ち着いて! 静かに!」


 ハズク先生が静止(せいし)しようとするが、それよりも先に教室(きようしつ)のドアが開けられた。


「よう、邪魔(じやま)するぜぇ!」


 邪魔するなら帰って!

 そうオレは云いたくなったが、云い出せなくなった。

 教室に入ってきたのは、ナイフや銃器(じゆうき)武装(ぶそう)した男たちだった。

 人族と獣人族が、半々(はんはん)の割合で構成(こうせい)されている。


「あなたたち! 強盗ね!」


 ハズク先生が子どもたちを守るように、立ちはだかる。


「その通り。俺達は強盗だ」

「孤児院に入るなんて、何の用!?」

「そりゃあもちろん決まっているだろ。人質だよ」


 男はそう云うと、ハズク先生とオレたちに武器を向けてきた。

 子どもたちが、一斉に(おび)えた声を出す。


「ガキどもを人質にして、売上金をいただくぜぇ!」

「こんだけガキがいるんだから、けっこうなもんだろぉ?」


 強盗はそう云って、ハズク先生に(せま)る。


「……売り上げはありません」


 ハズク先生は、キッパリと云った。


「グレーザー孤児院は、多くの人からの寄付(きふ)と、私の私財によって運営されています。売上など、全くありません。むしろ赤字なんです」

「その手にはのらねぇぞ!」


 1人の強盗が、机にナイフを突き立てる。


「本当です。疑うのでしたら、貸借対照表(B S)損益計算書(P L)を持ってくるよう、手配します」

「うるせぇ!」


 すると、強盗はハズク先生の喉元(のどもと)を掴み、持ち上げた。


「うぐうぅぅ……」


 ハズク先生は、苦しそうに声を上げる。


「先生!」

「おいガキども、このババアを助けたいなら、俺様たちに(したが)え!」


 そのとき、オレの横から1人の少女が飛び出した。

 ライラだった。


 おい、何を考えているんだよ!

 オレは(さけ)びそうになって、(あわ)てて口を(ふさ)ぐ。

 この場で叫んだら、強盗を刺激するかもしれない。

 余計(よけい)な事をするのは、()めておこう。

 ハズク先生にもしものことがあったら、オレたちの孤児院が無くなるかもしれない。


「ハズク先生を返して! 返してよ!!」


 ライラは(ひる)むことなく、強盗を(にら)みつけて云う。


「ほう、ババアの教え子か。あんた、本当に(した)われているんだな」


 厭味(いやみ)ったらしく、強盗が云う。

 にくたらしい。

 強烈(きようれつ)な一撃を食らわせて後悔させてやりたい!


「ライラちゃん、ダメです! 逃げなさい!」

「嫌! 先生を(はな)してくれるまで、逃げない!」

「ライラちゃん!」


 2人のやり取りを見ていた強盗が、ライラとハズク先生を交互(こうご)に見つめる。

 そして、口を開いた。


「……わかった。お前の先生は、解放(はな)してやろう」

「あ、兄貴!」


 他の強盗が驚いた表情を見せるが、獣人族の強盗は、少しも表情を変えず、ハズク先生を放した。


 オレは訳が分からず、混乱する。

 なぜライラの言葉には従ったんだ?


 ……まさか!


「ハズク先生!」

「ら……ライラちゃん」


 ライラが、ハズク先生に駆け寄ろうとする。

 オレはとっさに叫んだ。


「ライラ、逃げろ!」


 しかし、オレが叫んだときには、もう遅かった。

 ライラが(ちゆう)に舞った。

 いや、強盗によって(つか)まり、持ち上げられた。


「キャア!」


 ライラが必死に抵抗(ていこう)するが、宙を切るだけだった。


「ガハハ! さっきも云っただろう? 誰がタダでといった?」

「ああ……なんてこと……!」


 ハズク先生の表情に、絶望(ぜつぼう)の色が浮かぶ。

 血の気が引いて顔が真っ青になり、今にも気絶(きぜつ)しそうだ。


「子どもの人質が手に入ったぜ! おい、お前ら!」


 獣人族の強盗が、他の強盗に視線を向ける。


「このガキは銀狼族(ぎんろうぞく)だ!」


 その言葉を聞くと、強盗たちの目の色が変わった。


「なんだって!? 兄貴、本当っすか!?」

「見ろ、この白銀(はくぎん)の髪。そして耳と尻尾。間違いないぞ」

「だから、あのババアを手放(てばな)したんですね!」

「さすが兄貴!」

奴隷(どれい)として売れば、莫大(ばくだい)な金が入りますね!」


 強盗たちの言葉を聞いたハズク先生の表情が、ますます絶望に()まって行く。

 ライラもやっと、自分がどうなるのか分かったらしく、顔色を青くしていく。


「い……嫌。放して……」


 涙を浮かべながら懇願(こんがん)するライラ。


 どうすればいいんだ?

 オレはその場で悩み始めた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

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