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幼馴染みと大陸横断鉄道  作者: ルト
第4章
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第40話 銃

 オレは廊下(ろうか)で1人、トイレが()くのを待っていた。

 少しして、トイレの中から水を流す音が聞こえてくる。

 そしてトイレのドアが開いた。


「ごめんね。待たせちゃって」


 中から手をハンカチで()きながら、1人の獣人(じゆうじん)が出てくる。

 ライラだった。


「全然。さ、戻ろうか」

「うん」


 オレはライラの手を取り、一緒に個室へと戻る。


 犯罪者的な奴隷獲得を行う奴隷商人(どれいしようにん)が乗っていると知ってから、オレはライラがどこに行くにも一緒だった。以前は同行(どうこう)しなかったトイレでさえ、外でオレが待っているようになった。

 もちろん、本当ならトイレにまでついていくようなことはしたくない。

 しかし、例の奴隷商人が捕まるまでは、ライラの近くに常にいないといけなかった。


 なんとか次の停車駅に着くまでに、例の奴隷商人が捕まって駅に引渡し、安心して動けるようになってほしいものだ。


「……よし、廊下には誰もいないな」


 オレは廊下の両端(りようはし)を確認してから、そっと個室のドアを()める。

 そしてドアをロックした。


「ここに戻ると、なんだか安心するわね」

「個室だし、鍵も掛けられるからな」

「それに、ビートくんがいてくれるから、安心よ」


 ライラの言葉に、オレは苦笑(にがわら)いをする。

 あんまりフラグを立てないでほしいけどな。


「そんなこと云って、オレでも対処できないような奴が現れたら、どうする?」

「大丈夫よ。何があっても、ビートくんが助けに来てくれるから。孤児院(こじいん)にいたときも、ビートくんは助けに来てくれたじゃない」


 ライラから()われて、オレは孤児院に強盗が押し入ってきたときのことを思い出す。

 結果的に強盗を撃退(げきたい)してライラを助けたことになったが、今から思えば偶然(ぐうぜん)のようなものだ。もしも今度戦うことになったら、次はどうなるのか分からない。

 しかし、ライラはそんなオレに対して、絶対的(ぜつたいてき)な信頼を寄せている。


 それにオレ自身、ライラと婚姻(こんいん)のネックレスを交わした時に誓った。

 何があっても、ライラを必ず守り抜くと。


「だから、大丈夫よ」


 ライラは迷いの全くない笑顔で、そう云った。




 オレは、商人車(トレードカー)から出てきた。

 乗り組んで商売をしている行商人(ぎようしようにん)から、必要なものを入手してきたのだ。

 どこにも立ち寄らず、まっすぐに2等車の個室へと戻って来る。

 鍵を使ってドア開け、中に入るとすぐにドアを閉めて鍵を掛ける。

 個室の中では、ライラが本を読みながら待っていた。


「ビートくん、それは?」

「……武器だ」


 オレはそっと、(つつ)んでいる布をとっていく。

 中から(あらわ)れたのは、1丁の水平二連式(サイド・バイ・サイド)ソードオフ・ショットガンだった。


「えっ、銃!?」


 予想外の物体が出てきて、ライラは思わず目を見張(みは)る。


「オレはこんなこと起きてほしくないけど……相手はただの奴隷商人じゃなくて、犯罪者のような奴隷商人だ。ライラを商品にするために、どんな手を使ってくるか分からない。そうなったら、孤児院のときのようにはいかないかもしれないからな」


 オレはソードオフの銃身(じゆうしん)()り、ショットシェルが入っていないことを確認すると、そのまま銃身を元の位置に戻す。カチン、という心地良(ここちよ)い金属音がして、銃身が固定(ロツク)される。

 引き金を引くと、パチン、という音がする。

 ちゃんとした商品であることを確かめると、ソードオフを(かたわ)らに置いた。もちろん銃口(じゆうこう)は、ライラに向かないようにドアの方に向けておく。


「これで、奴隷商人に対抗できるかもしれない」

「で、でもビートくん、それって……」

「あぁ、おカネのことなら心配しなくても大丈夫。オレのポケットマネーで買えたから」

「いや、そうじゃないの!」


 ライラはソードオフから目を(はな)すことなく、続ける。


「……わたしにも、(あつか)えるかしら?」

「……え?」


 オレは自分の耳を(うたが)った。

 ライラが銃に興味(きようみ)(しめ)したことなど、今まで一緒に生きてきて、たったの1度も無かった。


「わたしも、ビートくんに守ってもらうばかりじゃダメだと思うの。だから、いざという時に戦えるようにしておきたい!」

「でも、銃は基本的に危険だから――」

「そんなことは分かっているよ! でも、ビートくんばっかり危険な目に()わせたくない!」


 ライラの言葉に、オレはしばし押し黙った。

 これはいくら説得(せつとく)しても、絶対に自分の考えを()げる気が無いな。


「……わかった。じゃあ、使い方を教えるよ」

「本当!? でも、ビートくんって、銃を使ったことあるの?」

「実は、鉄道貨物組合(トランスギルド)で希望者参加型の訓練を受けたときに、使ったことがある」


 しかし、それ以来1度も使ったことが無い。

 銃に()れるなんて、3年ぶりだ。


 オレは取扱説明書を読んで確認しつつ、ライラにソードオフの使い方を教えていった。




 3等車のデッキで、1人の男が手帳(てちよう)に何かを書き込んでいた。


「白銀のダイヤあり……高額になる見込(みこ)み十分……急ぎ確保するよう努める……」


 男は(ひと)り言をブツブツ呟きつつ、手帳に書き込んでいく。


「……よし、これでいいだろう」


 男はペンをしまうと、手帳のページを引きちぎった。

 そして引きちぎったページをビンに入れ、コルクで(せん)をする。

 コルクで栓がされたビンを手にしたまま、男は窓の外へと目をやった。


 遠くに、一瞬(いつしゆん)だけ光るものがチラッと見える。


 それを確認した男は、そっと頷いた。


定刻(ていこく)通りだな」


 そう(つぶや)くと、男は窓を開け、ビンを列車(れつしや)の外へと投げ捨てた。

 ビンは放物線(ほうぶつせん)を描きながら、草原へと消えて行った。




 アークティク・ターン号が、草原の中を走り抜けていく。

 その様子を、何人かの男たちが見ていた。


 男たちは人でも獣人でもなく、まるでトカゲが直立二足歩行をして服を着たような姿をしていた。


 突然、アークティク・ターン号から光る何かが飛んできた。

 トカゲ男の1人が走り出し、それを野球の外野選手のようにキャッチする。

 飛んできたのは、コルクの栓で封をされたビンだった。


「兄貴、手ニ入レマシタゼ」

「予定通リダナ。ヨシ、開ケテミロ」


 片目を黒いアイパッチで隠したトカゲ男が指示する。

 ビンを開けると、中から出てきたのは1枚の紙切れだった。


「兄貴、コレヲ……」

「ドレドレ……」


 差し出された紙きれを、兄貴と呼ばれたトカゲ男が受け取る。

 紙切れを広げて、そこに書いてあることに目を通す。


「……野郎ドモ、待機(タイキ)ダ! 合図(アイズ)ガアッタラ、行動ヲ開始スル!」


 トカゲ男たちは、いきり立った。




「んむ!?」

「ビートくん、どうかしたの?」


 オレが突然、変な声を出したせいか、ライラが()いてきた。


「いや……なんでもない」


 オレはそう答えながらも、横に置いていたソードオフにショットシェルを詰める。

 嫌な予感が少しずつ強くなっていく。

 何か、良くないことが起こりそうだ。


 オレのソードオフを持つ手に、力が入って行く。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

感想、誤字脱字、ご指摘等お待ちしております!

次回更新は5月27日21時更新予定です!


5月25日時点で、700PVを突破しました!!

読んでいただいた皆様、ありがとうございます!!

今後もよろしくお願いいたします!!


ビートとライラを、どうぞ見守って下さい!

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